経営コンサルタントの一倉定先生は、「社長の仕事は高収益型の事業構造をつくることだ」と言っておられました。古田土会計では社長の仕事は「高収益型の事業構造をつくり、社員と家族を幸せにすること」と定義しています。
高収益型とは、毎年高額の経常利益を出し続けられる会社のこと。
どうしたら経常利益を出し続けられるかというと、販売ではなく、商品・サービスで差別化します。
販売力で差別化しても 1年 ~ 3年ですぐ真似されます。高収益は長く続きません。
商品・サービスで差別化すると 5年 ~ 10年、 20年と高収益を維持できます。他者が真似しづらいからです。
では誰が商品・サービスを開発するかというと中小企業では社長です。社長の仕事は、高収益の商品・サービスを開発することです。それ以外の仕事は役員でも、幹部でもできます。
ただし、会社によい商品・サービスを現在もっていない場合は、社長は先頭に立って営業をして、売上と粗利益をアップすべきです。
社長が最高の営業マンだったから現在の売上高があるのですから。
社長が戦力としての商品・サービスの選択を誤れば、また会社の方向性の選択を誤れば、いかに社員が優秀でモチベーションが高くても会社は潰れます。
1つの事例として、シャープはホンハイに買収されました。中小企業の社長は「そんなに簡単に新事業や新商品・サービスが見つかれば苦労しないよ」と言います。
本当に誰にも負けない努力をしているのでしょうか。土曜も休日も 1年中、考えているのでしょうか。同業者でよい経営をしているところがあれば自ら足を運んで教えてもらい、自社に取り入れているのでしょうか。自社の弱みを嘆くのではなく、自社の強みを自覚し、それを商品化して、営業しているのでしょうか。
社長が会社の内部にばかり目を向け、コスト削減や内部組織作りで、給与規程や就業規則等に力を入れても会社の業績はよくなりません。
よく聞く話で「社員が頑張れば報われる会社にしたい」というのがあります。私はこれはおかしいと思っています。会社は社員が頑張っても頑張らなくても、利益の出る会社は利益が出ています。赤字の会社は赤字です。どこの会社の社員も頑張っていない社員はいません。
仕事があればみんな一生懸命働いてくれます。儲かっている会社と儲かっていない会社との違いは社長が正しい戦略をとっているかどうかです。
社長の戦略の誤りは、戦術ではカバーできないのです。
その戦略は、商品・サービスの方向性です。販売にあります。コストや内部体制ではありません。
古田土会計は、去年「頑張る中小企業 300選」に選ばれました。
今年、私は中小企業庁より依頼があり、「はばたく中小企業 300社」の審査委員になりました。委員長は一橋大学副学長の沼上幹先生です。審査委員のほぼ全員が大学教授で一般企業の審査委員は私だけでした。応募した会社のすべてが技術、製品またはサービス・商品の革新性・優位性やビジネスモデルの革新性・優位性が競われます。
すなわち、伸びている会社は、技術、製品、サービス・商品が優れているのです。戦略に革新性と優位性があるわけです。
中小企業の社長に「社長の仕事とは何か」をわかっていただきたいと思っています。
司馬遼太郎の『花神』で大村益次郎は、「戦術のみ知って、戦略を知らざる者は、ついに国家をあやまつ」と言っています。
中小企業の社長も戦略と戦術の違いを知り、戦術のみで仕事をしていては経営を誤り、会社を潰します。
社員のベクトルを合わせるのに役に立つ
また、理念を含めた経営計画書を作ることは何も社員のためだけではありません。創業者が高齢となった中小企業では、現在、事業承継が大きな問題となっています。
二代目社長にとっても、この理念が重要になるのです。一般に二代目は創業者ほどのカリスマ性やリーダーシップは持っていません。
そういうときにこそ、社員をひとつにして、会社が向かう方向を示し、さらにそれぞれの社員がやるべきことを明確にする経営計画書が一番なのです。
社員のベクトルを合わせることに苦心している経営者にはぜひこの意味を実感してほしいと思います。さらに付け加えれば、二代目社長が就任した直後はあまり劇的に方針を変えないことも大事なことのひとつです。
「自分が就任したのだから、新しいことをやらなければ」という観念にとらわれる必要はありません。
方針が変わると社員はついてこないものです。まずはスムーズな世代交代を考えましょう。やりたいことは会社が新体制で軌道に乗ってから、と心得てください。
ワークブックを活用する
「経営計画書を作ったことがなく何から始めていいかわからない」という声もよく聞きます。
古田土会計では、古田土会計の経営計画書の方針を真似してもらえるように、古田土会計の方針書を右側にして、お客様の方針を左側に書いていただければ、方針編が完成するように作成しています。
「古田土会計の経営計画書」目次(6ページ)を見ていただければ、個別方針の内容が一目瞭然です。
書くべき内容は「事業活動」「教育・評価」「雇用」「経理・総務」「組織・内部体制」の5つです。
重要な順番に並べていますので、まずは事業活動から着手しましょう。
「経営計画書の方針を作るコツはノリとハサミ」と言っています。
古田土会計の方針書の中からやっていることとやれそうなことをコピーし、その部分をハサミで切って糊付けし、自分の言葉に書き変えれば完成です。
- 販売力で差別化しても1年~3年ですぐ真似されます。高収益は長く続きません。
- 商品・サービスで差別化すると5年~10年、20年と高収益を維持できます。他者が真似しづらいからです。
- サービスを開発するかというと中小企業では社長です。社長の仕事は、高収益の商品・サービスを開発することです。
- 社長が会社の内部にばかり目を向けても収益は上がらない
- 儲かっている会社と儲かっていない会社との違いは社長が正しい戦略をとっているかどうか
- 「戦術のみ知って、戦略を知らざる者は、ついに国家をあやまつ」
- 業績は社長の戦略と全社員の戦術で決まります。
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