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従業員に仕事を任せられる仕組みをつくる

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従業員に仕事を任せられる仕組みをつくる

組織図を完成させたジャックとマーレイは、役職ごとの仕事内容を決める作業にとりかかった。

まずは営業、製造、財務の担当者レベル、つまり組織の下層部からとりかかることにした。

こういう作業は、決して組織のトップから始めてはいけない。社長や副社長は戦略的な仕事を担当するが、従業員は戦術的な仕事を担当する。戦術的な仕事とは、「職人」の仕事でもある。

ジャックとマーレイが事業を成功させたいのなら、二人が戦略的な仕事に専念できるように、戦術的な仕事を引き受ける別の人物を雇わなければならない。

だから、まず担当者レベルから仕事内容を決めるべきなのである。それでは事業が拡大する場面で、この組織図がどれほど役に立つのかを見てみよう。ジャックとマーレイは事業を始めた。しかしこれまでとは違う。

彼らの関心は、日々の仕事をこなすことから、事業を成長させることにシフトした。それを反映して、彼らの働き方もずいぶんと変化した。

マーレイが営業を担当する従業員として働くときには、イノベーション→数値化→マニュアル化という事業発展プログラムの手順にしたがって、よりよい仕事の進め方を追求するようになった。

同様にして、ジャツクが製造現場の従業員として働くときには、生産ラインを効率化する方法を考えるようになった。

かつての彼らは、日の前の仕事を一生懸命にこなすだけだったのだが、

「顧客のためには何がいちばん役立つだろうか?

・会社の利益を最大化しつつ、顧客の要望に応えるためにはどうすればよいだろうか?

・担当者が仕事からより多くのことを学ぶにはどうすればよいだろうか?」と考えるようになった。

マーレイは営業担当者として、何色のどんなスタイルの服装が、顧客に最もよい印象を与えるのかを試行錯誤し、効果の高い声のかけ方を試しはじめた。

そして、イノベーションの効果を数値化し、最も効果的だったものをまとめ、営業マニュアルをつくつた。

営業マニュアルには、顧客が来店したときの声のかけ方、店を出るときの声のかけ方、問い合わせの電話やクレームヘの対処方法が記されている。

また、注文の受付、返品、新製品の予約、在庫の確認などのルールも決められた。

この営業マニュアルが完成してようやく、マーレイは販売員を募集する広告を出すことにした。必ずしも販売経験のある人間を集める必要はない。

販売の仕事に経験がなくても、マーレイが考えた営業の方法を学ぶ熱意をもっている人間なら問題はない。

日曜版の新聞には、こんな求人広告が掲載される。

「JMエンジエアリング社は成長が見込まれる有望な企業です。成長のための準備は整っています。未経験者歓迎。学ぶ意欲をもつ人材を求む」

採用面接では、マーレイがまず会社の戦略的目標を見せて、ジャックと彼がもつ夢を語る。

次に組織図と営業マニュアルを見せて、営業担当者の位置づけや、その仕事内容を説明する。適当な人物が見つかれば、その人間を雇い、営業マニュアルを手渡すことになる。

彼はマニュアルを読んで、声のかけ方や服装のルール、社内のシステムを学ぶのである。これは決定的な瞬間といってもよい。

なぜならマーレイは自分の仕事を置き換える仕組みをつくり、他の従業員に任せることに成功したのである。

マーレイは晴れて、営業担当者の役割から解放され、ようやく営業部長としての仕事にとりかかることになった。

このようにしてJMエンジエアリング社は新たなメンバーを加え、大きな一歩を踏み出したのである。

人生の目的から事業の戦略的目標が定められ、戦略的日標から組織図が導きだされる。組織図をつくるところから、着実に一歩ずつ前進することで、最終的に人生の目標が達成されるのである。

サラは大きく息を吐き、両手を天丼に向けて大きく背伸びをした。

そんなことは難しくて、できっこないという気持ちの表れだろうか?彼女は言った。

「『安易に考えるな』ってことよね?。あなたの言う通りなら、やるべきことが多すぎるわ」「もう一度、確認してもいいかしら?本当に理解したかどうか不安だから」「あなたは、オール・アバウト・パイの組織図をつくるようにって、言ってるのよね。しかも会社が完成した状態、つまり七年後の組織図なのよね?」「そうだよ」私は答えた。

「いったんその組織図をつくったら、当てはまる役職の枠に、私の名前を書き入れるのよね?」「そうだよ」私はまた依口えた。

「私は役職のひとつひとつに、細かい説明を付け加えて、まるでその仕事を担当する従業員であるかのように、役職ごとの役職契約書にサインしないといけない。でも、本当に私がサインまでする必要があるの?」「サインをしないといけないね」私は答えた。

「誰か代わりの従業員を見つけるまで、きみは従業員の役割を果たさないといけない」私の言葉で彼女の理解は急に進んだようだった。

「あなたがそう言うのは、私が実際に働いてみて、従業員とはどのように働くべきなのかを決めないかぎりは、マニュアルなんてつくれるわけがないつてことなのね」「そのときには、従業員に期待するような仕事の進め方を私自身が実践しなきゃならない。

もし私だけが従業員と違う方法で仕事をしているとすれば、私の自己満足のために経営しているのと同じことよね。本当は私以外の人を豊かにして、満足してもらうために、事業をするべきなのに」

おまけに、自己満足のための事業なら、誰も私の代わりに経営することができないわ。任せられるとしても、せいぜい私と同じような価値観をもった人に限られてしまう」息をつくように少し間を置いた後、サラは聞いた。

「これがあなたの言っていることかしら?」「その通りだよ―」私は答えた。

事業をもう一度やり直すのなら、経営からきみ自身を切り離すことが重要になるんだ」「前に話したことを覚えているかな?・きみの中には異なった人格が存在しているせいで、混乱を起こしてしまう。それは無意識のうちに存在している人格のせいなんだ。内面にある無意識の部分はなくさなきゃならないんだよ」

「グルジェフという思想家は、他の人格に指示を出す人格を『御者』と呼んだ。また、グルジェフは『御者は馬と馬車を制御している』とも言った(訳注¨御者は知性、馬は感情、馬車は肉体の比喩)。

事業のオーナーとして、事業を動かす御者として、まずは馬と馬車を制御しなければならない。事業に組織図とマニュアルが必要なのはそのためなんだよ」

「ここまでできれば、次は自分でつくつたゲームに忠実に従うことが、きみの仕事になる。リーダーであるきみが率先してルールを守らなければ、他の人が守つてくれるはずがないだろう?」

組織はこうやってつくっていくものなんだ。仕事の役割分担をきっちりと決めようとすれば、事業全体について考え抜くことが必要になるだろうし、事業が機能しはじめるためには、組織図という骨組みが必要になる

マニュアルと組織図が完成すれば、きみの仕事は、現場で汗を流すことから、従業員や周囲に語りかけることに変わりはじめる。事業が成功したときの姿を語って、きみの夢を共有するんだ。そして、語りかける中で、きみの信念の強さを伝えるのさ」

「ルールを守り、事業の将来を語り、考えごとに多くの時間を使うようになれば、事業は働く場所から、見守るべき対象へと変わっていくんだ」「わかったわ―」彼女は言った。

「じゃあ、マネジメントの考え方について話そうか」私は、サラに紅茶をつぎながら言った。「それから従業員とシステムの問題について考えよう。マネジメントと従業員とシステムは切り離せない問題だからね

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