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客観情勢の変化をとらえる

Y製作は規模こそ小さいものの、自社製品を持つ独立企業だ。昨年から三年間を見据えた計画を策定するようになり、毎年計画を一年ずつ更新している。今年、新たな三カ年計画を立てるにあたり、昨年度の実績が計画と比較・検証された。

ところが、売上は目標を達成していたものの、利益は予想通りに上がらなかった。それだけでなく、意外な変化も明らかになった。昨年発売した新製品が計画の三倍以上売れていた一方で、従来の製品には大きなばらつきが見られた。計画の半分しか売れなかった製品が一つ、三割減が二つ、その他の製品は辛うじて計画通りだった。問題なのは、売上が大きく減少した製品が、主力製品である点だ。

さらに、賃金ベースの上昇率を10%と見込んでいたにもかかわらず、実際には15%上昇してしまった。計画していた付加価値はほぼ達成していたため、利益減少の主な原因は賃金の予想外の高騰にあったと考えられる。

昨年の計画策定時も決して安易な決め方をしたわけではなく、各条件を十分に検討していた。それでも、結果として計画と大きな乖離が生じた。

賃金ベースの上昇が予想以上だったとはいえ、社長が最も驚いたのは、主力製品の急速な斜陽化だった。一年前の予測では、緩やかに進むと見込まれていた斜陽化が、予想を大きく上回るスピードで進行していたのだ。

社長はこの状況を目の当たりにし、「これは一大事だ。進行中の新製品開発を急がなければならない」と即座に判断し、担当課長を呼び出して新製品開発の加速を指示した。突然の指令に理由を尋ねた課長も、社長からの説明を聞いて驚きつつ、「承知しました。すぐに対応します」と、その場で迅速な対応を約束した。

その後、社長はこう語った。「もし三カ年計画がなかったら、この急激な変化に気づけたかどうかわからない。おそらく漠然とした『感じ』程度で終わっていただろう。一年前の自分の考えが数字として残っていたおかげで、状況を明確に把握することができた。だからこそ、手遅れになる前に対策を講じることができた。経営計画を作っていて、本当に良かったと思う」。

変化の激しい時代において、予測が困難だからこそ、その時点での将来への見通しに基づいた計画が不可欠だ。計画があるからこそ、状況を正確に把握し、適切な対応を取るための貴重な情報を得ることができる。この事例は、計画の重要性を私たちに示している。

いずれにせよ、現時点で考えられるあらゆる事態を徹底的に分析し、それらを総合的に捉えて計画を立てることが、生き残るために欠かせない絶対条件だと言える。

Y製作の事例は、計画を持つことの重要性を示しています。三カ年計画を通じて、売上や利益だけでなく、製品ごとの動向や賃金上昇の予測精度を詳細に見直すことで、予測からの乖離が浮き彫りになり、経営に即座に反映させることが可能になったのです。特に、主力製品の売上減少や新製品の意外な好調により、市場の変化が明確になり、手遅れになる前に新製品開発を加速するという迅速な対策が取られました。

Y製作の社長も語ったように、計画がなければこうした変化に対して「感じ」程度の認識しか持てず、具体的な対策に踏み切ることが難しくなります。過去の計画と実績を比較することで、予測と実態のズレを具体的に把握できるため、経営にとって計画は「予測が難しいからこそ必要なもの」といえます。

この事例が示す通り、計画とは変化を管理し、客観的な視点から未来に対応するための重要な基盤です。事態が予測とは異なる方向に進んだ際には、計画が問題を早期に認識させ、迅速な対応の指針を提供してくれます。このような計画的な取り組みが、企業の成長と生存に直結するのです。

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