定性目標は具体化を!「夢と働きがいのある職場づくり」、「改善提案活動の徹底」、「コンサルティング営業の推進」、「新人事評価システムの構築」など、つかみどころのない雲のような目標が設定されることがある。いずれも、目標もどきのスローガンであり、決して目標と呼べるようなものではない。どうして、そのような事態が起きるのか。それは定性目標の特性のためだ。売上高や利益率のように、数値表現できる定量目標とは違い、定性目標は数値化できないものである。そのために、どうしても抽象的な表現になりやすい。それを防ぐために、ほとんどの企業の目標管理マニュアルには、「目標はできる限り数値化すること」と記してある。しかし、それはきわめて誤解を招きやすい表現だ。正しくは、定量目標は「必ず数値化すること」であり、定性目標は「進捗管理や評価に耐え得るように〝具体化〟すること」でなければならない。では、定性目標をどのように具体化するのか。以下の3つの方法が有効である。固有名詞を使ってイキイキと記述する定性目標の具体化の鉄則は、いきなりの数値目標は避けることである。まず、状態記述を試みる。何が、どのような状態になっていれば、目標達成なのかとい
う当事者の思いをできる限り具体的にイキイキと記述しようとするものだ。たとえば、明るい職場にしたいという当事者の思いを、「毎朝、みんなが笑顔で挨拶をしている」、「呼ばれたら、感じよく〝ハイ〟と返事をしている」、「お互いに認め合い、励まし合っている」というように、具体的な状態で表現する。こうすると、結果の測定も「〇」の4段階くらいで可能になる。その際に、固有名詞を用いれば、記述場面が限定され、その分だけ進捗管理や評価の精度も高くなる。これが状態記述の基本である。数値化可能な代用項目を探し出すの状態記述だけでは不安が残る。そのような場合には、「代用数値化」も試みる。定性目標の本質に近い数値化可能な〝代用項目〟を探し出し、それを目標の達成基準として使用する、という方法である。この方法を用いれば、ほとんどの定性目標の数値化が可能になるが、注意すべき点が2つある。1つは、目標と因果や相関が認められる代用項目を用いること。それを無視すると、「特許の質を高める」という目標を「特許〇件以上」で代用するという類いの過ちを犯してしまう。典型的な質と量との混同、もしくはすり替えである。2つは、代用数値が目標の本質からズレないように、複数の、かつ、多面的な代用項目を用意すること。たとえば、「接客サービスの向上」という目標の代用項目に、「売上高の伸び率」を採用する。よく見られるケースであるが、果たしてそれで十分なのだろうか。確かに、接客サービスが向上すれば売上も伸張するという経験則が存在し、それに照らせば成立する図式である。しかし、売上高の伸び率は、サービスの向上を証明する1つの要素に過ぎず、それをもって、すべてを代替しようとするのは乱暴な話である。「再来店客数の増加数」など、いくつかの代用項目の追加が必要だ。そうしなければ、本来の目標の意味合いを薄めたり、歪めてしまう。代用項目と状態記述とを組み合わすところが、実際に多面的な代用項目を探してみると、そう簡単に代用数値が見つからない。では、どうするか。そのときには、前述の状態記述との組み合わせ使用を試みる。まず、実現したい状態を、「全販売員が両手を添えて、お客様に商品を渡している」という具合に描き出し、それに「売上の伸び率」や「再来店客数の増加数」とをセットして、トータルで定性目標を具体化する。それが、経験的にはいちばん有効な方法である。クリエイティブ型の定性目標ゴールの姿が過去の経験から明確に描けるような目標、それは「アチーブメント型の定性目標」であり、状態記述や代用数値化による目標の具体化が可能である。しかし、「クリエイティブ型の定性目標」は、「何が、どれくらいアウトプットされるのか、やってみなければわからない」という類いの目標であり、その具体化は状態記述や代用数値化だけではおぼつかない。そこで出てくるのが「手順や手段の目標化」である。「手順や手段の目標化」は、最終的なアウトプットを目標とするのではなく、そこに至る活動手順と活動内容を目標にするものである。ゴールに向けて、「いつまでに、何と何とをやり遂げる」という具合に活動手順を設定し、その手順ごとに「具体的な実行内容(手段)」を考え出す。一種の納期目標であり、職場の戦略業務の目標化の大部分はこの方法に頼るのが妥当であろう。
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