MBOSのオープンシステムに則って、沢井社長はより具体的な修羅場づくりに打って出た。「営業の努力で受注はかなり確保できている。しかし製造がうまく動いていない。私はかねがね200トンできたら確実に黒字になると思っている。そこでこの11月は製造の全力投球をしてもらう。残業、公休出勤もギリギリまでやってもらいたい。当社は頑張ったら月に何トン製造できるのか。今月はみなさんの掛け値なしのトコトンの力を試してみたい。つまり、当社の現状における瞬間最大風速をつかんでみたい」こう沢井社長は従業員に訴えて、協力を要請したのである。これは会社が一皮むけるためのチャレンジであり、従業員にとっては潜在能力を試される修羅場である。結局、社長も従業員も、協力会社の人たちも、へとへとに疲れ果てるまで働いて、230トンの製造量を記録した。会社と個人の潜在能力の存在は証明されたのである。しかし、それはみんなが無理に無理を重ねた結果であり、毎月こんなことをやっていたのでは潰れてしまう。もっと楽に働いて黒字になるような仕組みが必要だ。今度は「その仕組みづくり」を職場目標に設定し、新たな挑戦をしてみよう。そう従業員に呼び掛けて、次なる修羅場を沢井社長は用意する。このように、会社も個人も成長するためには潜在能力の開発が必須であり、それを可能にするのが修羅場体験である。しかし、修羅場は苦しく、一人で潜ろうとすれば濁流に飲み込まれ溺れてしまう。修羅場の乗り切りにはチームワークが必要なのである。
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