製品の「信頼性」や「品質」は、単に技術や仕様の問題にとどまらず、企業の社長の姿勢そのものにかかっていることを、この事例集は強く教えてくれます。どれだけ技術が優れていても、社長が自社製品の使用者の視点に立ち、実際に使ってみて初めて気づくような不便や欠点を見過ごしてしまえば、顧客の満足は得られません。むしろ、その気遣いと手間こそが、商品に「心」を込め、顧客の信頼を築くための要となるのです。
例えば、日本の製品設計の中には、使い勝手や耐久性に問題があることがあり、これは設計者や経営者が「使い手の視点」を欠いていることが原因として挙げられています。対して、ベンツや他の企業は、顧客の安全や満足を第一に考え、商品に真摯に向き合い、「信頼」という目に見えない価値を提供しています。ベンツの例では、社長が「事故の際、どう顧客を守るか」という哲学を持っていることで、顧客は製品に安心感を抱くのです。
また、品質と心を重要視する企業は、本田宗一郎が語る「120%の良品」の考えに集約されます。一万台に一台の不良品でも、該当するお客様にとっては「100%の不良」であり、だからこそ「120%の良品」を目指すという言葉に、真の品質への姿勢が表れています。京都の料亭「錦」のように、料理に心を込めてこそ本当の料理であるとし、顧客が心から満足できるサービスを提供している企業もその代表例です。
「信頼性は社長の姿勢そのものである」ということは、製品そのものだけでなく、企業のブランドとしても確立されていきます。その結果、顧客の期待や信頼が積み重なり、「この企業の商品だから」という理由で選ばれるようになるのです。
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