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低下していく間接部門の生産性

間接部門の人員が増えることだけを問題視するのは的外れだ。本質的に重要なのは、間接部門の人員が企業の成果にどれだけ貢献しているかという点だ。

その貢献度が向上し続ける限り、間接部門の拡大には何の問題もない。では、具体的にその貢献度をどう評価するかが次の課題となる。

その客観的な基準として、現時点では「生産性」以外に適切な指標は見当たらない。生産性とは、「成果に対して費やした努力の割合」を示すものである。

これを数式で表すと、

生産性=算出高(アウトプット=成果) ÷ 投入高(インプット=努力)

という形になる。

企業の産出高は「付加価値」と定義される。付加価値こそが、企業が生み出した経営的価値そのものだ。間接人員の役割は、この付加価値を生み出す活動を支えるサービスを提供することである。この点に疑いの余地はない。したがって、サービスの対象となる活動が生み出した付加価値に対して、どれだけの労力が投入されたのかを測定すればよいという結論に至る。

これを数式で表すと、

間接人員の生産性=会社のあげた付加価値 ÷ 間接人員の賃金

という形になる。

この算式に基づけば、会社の付加価値増加に寄与しない間接人員の増加は、生産性の低下として明確に数値で示されることになる。

特定の部門の生産性を測定したい場合は、測定対象の部門の賃金を分母に設定すればよい。また、賃金ではなく人員数を分母に用いる方法も考えられる。ただし、人員数を用いる方法は、最終的な意味での正確な指標にはならない。

人員の生産性、つまり労働生産性と賃金生産性を比較することで、労働生産性の向上が賃金の上昇を上回っているのか、それとも追いついていないのかを判断することができる。この比較には、そうした観点からの重要な意義がある。

この算式を実際に適用してみると、これまで関わってきた多くの企業で、ここ数年の間に生産性が低下していることが確認できる。その原因は、大幅な賃金の上昇と間接部門人員の増加が相まって生じたものである。

間接人員の生産性を向上させることは、従来のマネジメント理論や合理化の手法では極めて困難だ。決定打とされる職務分析も、仕事の内容分析にとどまる限り効果は期待できない。特に、「企業目的を達成するために必要な仕事」という抽象的な視点を捨て去らない限り、その有効性は限定的なままだ。

仕事の内容を分析し、その仕事が企業目的を達成するために必要かどうかを議論しても、実際には「水かけ論」に終わることが多い。職務分析に頼らずとも、外から見た印象だけでも、無駄な人員を抱えている企業が多すぎることは明らかだ。

同業で同じ業態の二つの会社を比較すると、興味深い事例がある。従業員数200人の会社では、経理が11人、庶務が8人(交換手を含み、守衛はなし)の計19人が間接業務に従事していた。一方、従業員数300人の会社では、経理が1人、庶務が5人(交換手と守衛を含む)の計6人に過ぎない。その結果、200人の会社は倒産し、300人の会社は高い収益を上げている。この対比は、間接部門の効率が企業の存続と成功に与える影響を如実に示している。

工場200人、営業200人の計400人を統括する本社に200人もの人員がいる会社では、その内部がどうなっているのか想像に難くない。本社の規模が事業部門に対して過剰であることは明らかであり、非効率や冗長性が深刻なレベルに達している可能性が高い。こうした構造は、実質的な業務よりも内部調整や自己目的化した活動にリソースが割かれていることを示唆している。

その工場では、200人のうち庶務と経理に34人、資材と倉庫に30人が配置されているというから驚きだ。これが実話であるなら、極めて非効率な体制が敷かれていることは明白だ。こうした構造では、利益を生むべき現場の生産活動よりも、間接部門が過剰に膨れ上がり、リソースを圧迫していると考えられる。その結果、大幅な赤字に陥るのは避けられないだろう。

K学院の教授はメッキ技術の第一人者として知られている。同学院はメッキ工場を所有しており、外部の企業から受注を受けて実務を行っている。その上、銀行から手形割引の枠を与えられるほどの信用も持っている。学院としては異例の実業的な活動を展開していると言える。

N教授が先年アメリカで視察したメッキ工場では、従業員70人のうち間接人員は社長夫婦と娘、そして男性1名の計4名に過ぎなかったという。この効率的な体制は驚くべきものである。一方で、日本で同規模の工場を考えれば、間接人員は通常7〜8人程度は配置されているだろう。この差は、組織運営や業務効率へのアプローチの違いを象徴している。

それにもかかわらず、日本の工場では仕事の量がアメリカの半分程度しかこなせていない。結果として、間接人員の数はアメリカの4倍にもなる。このことを指摘して、メッキ工場の社長たちに奮起を促していたという話を聞いたことがある。効率化の必要性を痛感させられるエピソードだ。

T興業の本社には会長室と社長室が隣り合わせで配置されている。その手前に社長室専用の受付カウンターがあり、受付嬢が二名も常駐しているというのだから驚きだ。この会社が千客万来の企業であるわけではないにもかかわらず、こうした配置は過剰としか言いようがない。効率性よりも形式や体裁を重んじた典型的な例だろう。

T興業の業態を考えると、規模に比べて来客が極めて少ないのは異例といえる。それだけに、会社全体の受付に2名配置するのであれば理解できるが、会長・社長専属の受付に2名というのは到底納得がいかない。さらに、本社全体の受付は別に存在しているというのだから、非効率さが際立っている。このような配置は、リソースの無駄遣いの典型と言えるだろう。

S工業では厳格な予算統制を実施しており、その一環として金券を発行していた。しかし、その金券制度がかえって事務作業を増大させ、従業員から不満の声が上がっていたという。本来、効率化を目的とした制度が逆に負担を増やしている状況は、管理手法の見直しを迫られる典型的な例だ。

中でも驚くべきは、1カ月10万円程度の事務用品管理に対して、女子従業員を1名専属で配置していた点だ。経費削減を目的とした予算統制が、むしろ経費を増加させる結果を招いている。この従業員は各部門の事務費を記録し、監視する役割を担っていたというが、それ自体が非効率の典型例と言わざるを得ない。

そこで「予算がなくなっても要求があったらどうするのか」と尋ねると、直属課長に報告するのだという。こうした運用では、課長が些細な事務用品の管理にまで関与させられることになり、忙しくなるのは当然だ。結果として、現場の意思決定が滞り、全体の効率も低下するだろう。

これは、この会社のやり方だけの問題ではなく、むしろ現在のマネジメント論が抱える本質的な欠陥を示している。「計画・実施・統制」といった枠組みを掲げてはいても、そこには主体的で積極的な自己統制の思想が欠如している。このような管理手法では、現場の創造性や柔軟性が損なわれ、非効率や無駄が生じるのは避けられない。

この会社の予算統制を例にとると、必要に応じて請求伝票に金券を添えて事務用品を受け取る仕組みでは、実績を記録することはできても、自己統制は実現できない。予算を使い切ったとしても、必要な事務用品を使用しないわけにはいかないため、統制が形骸化してしまう。さらに、事後的な確認では真の意味での統制にはならず、問題が発生した際にはすでに手遅れとなっている可能性が高い。

前向きな計画に必要なのは、一覧性のある明確な表だ。各部門が自分たちの来月の事務用品について、品目と数量を一覧表に記入し、それを基に予算内で収めるための検討を事前に行う。このプロセスこそが、前向きで主体的な自己統制の在り方である。事前に計画と調整を行うことで、効率的かつ柔軟な運営が可能となり、無駄を最小限に抑えることができる。

この一覧表を事務用品の購買担当者に提出すれば、担当者は各部門からの情報を集約して注文書の内訳を作成すればよい。そして、納品業者には部門ごとに分けて梱包するよう指示し、納入させる。担当者は届いた梱包をそのまま各部門に配布すれば、それで業務は完了する。必要に応じて、別途少量のストックを持っておけば、予期せぬ不足にも対応可能だ。このシンプルな仕組みが、効率的かつ合理的な運用を実現する。

とにかく、日本の企業には無駄な人員と無駄な仕事が多すぎることは明らかだ。これを科学的な節減方法で解決しようとしても、実効性に乏しいことはすでに述べた通りだ。では、これらの無駄をどうすれば削減できるのか。その答えは、従来の管理手法を超えた、根本的な発想の転換と実践にある。各部門が自己統制の意識を持ち、前向きな計画と合理的なプロセスを主体的に設計・運用することが鍵となるだろう。

日本の企業には、無駄な人員と無駄な仕事が多すぎることが深刻な問題として横たわっている。科学的な節減方法を試みても、その多くが機械的な管理や表面的な効率化にとどまり、本質的な改善には結びつかないことは既に明らかだ。では、どうすればこれらの無駄を削減できるのか。その鍵は、単なる効率化ではなく、業務の本質を見極め、目的に直結する活動だけを残すという抜本的な再編にあるだろう。また、現場での主体的な意思決定と責任を強化し、全員が「なぜこの業務が必要なのか」を考え直す文化を作り上げることが不可欠だ。

間接部門の生産性向上は、企業成長の鍵を握る要素だ。生産性が低下している現代の企業において、間接部門の拡大が必ずしも悪影響を及ぼすわけではない。しかし、増員によって企業の成果への貢献が向上していない場合、その増員は効果を発揮していないと言わざるを得ない。では、間接部門が企業の価値創造にどのように貢献しているのかを、どのように評価すべきなのだろうか?

その指標として最も分かりやすいのは「生産性」だ。生産性は、成果に対する努力の割合を数値化したものであり、付加価値を企業の産出高として捉える場合、それを生み出す活動への貢献度を測ることで、生産性の指標が見えてくる。ここで重要なのは、間接人員の役割があくまで付加価値を生み出すためのサポートにあるという点だ。したがって、間接人員の貢献を評価するには、どれだけの労力が付加価値を高める活動に投入されたかを測定すべきだ。

生産性を測る具体的な方法

例えば、賃金や人員数を分母にして生産性を計算することができる。ここで、賃金生産性と労働生産性を比較することで、間接部門の人員や賃金が増加しても、それが企業の付加価値増加に見合っているかどうかを確認することが可能になる。多くの企業が賃金上昇や間接部門の増員により、生産性の低下に悩まされている背景には、この適切な評価と改善が行われていない現状がある。

間接部門におけるムダの見極め

現代の管理理論では、間接人員の合理化は難しいとされるが、職務内容の分析を通じてムダを見抜くことができる。間接業務には、他社と比較して明らかに余剰な人員や、非効率な業務が含まれている場合が多い。例えば、必要以上に多くの受付人員を抱える会社や、事務用品の管理に過剰なリソースを割くケースなど、業務内容を見直せば労力を削減できる可能性がある。

自己統制を強化する新たなマネジメント

予算管理においても、単に実績を積み上げるだけでなく、事前に次月の必要物品を一覧にまとめ、自己部門内で予算内に収めるよう計画する「自己統制」の強化が求められる。これは、ムダな予算消費を抑えるだけでなく、各部門が自律的に運営できるようにするためのステップだ。

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