「社長」という言葉には、どこかプライドをくすぐる響きがあります。
バブル時代、クラブなどでは、男性客には決まって「社長さん」と呼びかけたものです。いまでもそういう店はあるかもしれません。
一生、人に使われる人生はイヤだと、長年、温めてきた夢をかなえて独立。小さいな がらも一国一城の主となった。
手にした名刺の肩書は「○○○株式会社 代表取締役」。 それを見て、「ついに自分も社長になったか!」と、大きな満足感をかみしめた。身に 覚えがある、という人は少なくないでしよう。
しかし、脱サラすることや、社長と呼ばれることにあこがれていた、だけでは、まず会社を発展させることも、長続きさせることもできません。
念願の社長になったものの、といまでは実感されているでしょうが、社長という仕事 は、そんなに甘いものでも、生やさしいものでもありません。
大企業であっても、中小企業であっても、社長は企業の最高責任者です。
自己責任で意思決定し、経営についても全責任を負う立場です。 万一、経営に失敗し、倒産しても、大企業の社長はそこまで責任を求められませんが、 中小企業の社長は家族が住んでいる家を含めて、全財産を投げ出すことになるのです。
大きな組織の階段を昇り詰めていったサラリーマン社長は別ですが、自分のアイデア やポリシーをもとに会社を立ち上げた社長は、この先も、終わることがない奮闘努力の 日々が続いていきます。
その覚悟をあらためて、しっかりと固めてください。 努力の日々は苦しいことも多いものですが、それと同じくらい、かぎりない希望とや りがいに満ちています。
その覚悟を支え、あなたの社長としての気概を持続していくために必要なのは何か?その答えは「理念」です。
どうしても市場に出してみたいものと出会った。あるいは自分が考えついたビジネス モデルで勝負してみたい、それを通じて社会に貢献したい……というような理念があり、 いまもその理念を具現化していくことに燃えていれば、会社は希望にあふれ、成長力に も陰りは見られず、この先も長く存続していくでしょう。
私が尊敬する経営者は、スーパーマーケット・ダイエーを立ち上げた中内功さんとソ フトバンクの孫正義さんです。両者の共通点は、業界の革命児であることです。
中内さんの理念は「よい品をどんどん安く消費者に提供する」こと。1950年代に、 いまでは当たり前の、ほしい品物をお客自身がカゴに入れていき、レジでまとめて支払 うスーパーマーケット方式を導入。
買い物スタイルの革命を起こしました。 さらに大きな改革は価格革命です。それまでメlヵlや卸業者が決めていた商品の価 格を、小売りであるダイエーが決めるようにしたのです。
当然、メlヵlや卸業者と摩 擦が起こり、ときには天下のナショナル(現パナソニック)と対立することもありました。
一方の孫さんは1981年に起業。初めの一歩は社長と社員2人の小さな会社でした。このとき、孫さんが掲げた理念は「デジタル通信事業で日本の明日をつくる」という気 宇壮大なもの。
この理念のもとに、孫さんは日本のプロードバンド時代を切り拓いていき、いまや日 本一のIT企業集団を率い、2017年には日本一のお金持ちにもなっています。
企業理念とは、経営者の強く熱い思いです。強い思いがあれば、その後のどんな苦労 もつらいとは感じず、危機に瀕するようなときも絶対にあきらめることなく、しぶとく がんばり抜けるものです。
▼ 「あこがれ」からではなく、理念をもって経営する。
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