ワンマン経営者の根本的な問題点は、関心の矛先が企業内部や部下に向いてしまい、外部に目を向けないところにある。こうした経営者にとって、外部への関心は常に後回しとなりがちだ。
一般にワンマン経営者への警鐘として、「人材が育たず、部下のモチベーションを削いでしまう」という点が強調されがちだが、それは本質を捉えていない。
確かにそのような欠陥は存在するが、それが最大の問題ではない。社員の能力や活動が企業の発展にとって重要な要因であることは間違いないが、それが決定的な要素ではないからだ。
N社は従業員160人ほどの小規模企業だが、訪問して部長や課長と話をした際、彼らの多くが非常に優秀であることに驚かされた。しかし、その優秀さにもかかわらず、N社は長年低迷した業績が続き、3年前から赤字に転落し、苦境に立たされていた。
かつて勤めていたF社は倒産したが、当時の課長や若手には優秀な人材が多く、現在それぞれの場で活躍している。消息不明の者も多いが、私が知る限り、既に二人が社長となっている。どの人も立派に道を切り開いている。
その中でもM氏は、まだ20代にして数百人規模の会社を率いる社長となっている。それにもかかわらず、多くの社長は社員の質や働きぶりが社運を左右すると考えている。その考えは、社員の仕事ぶりを実際に目にして得た実感によって裏付けられているように思える。
社長の目には、社員の仕事ぶりが実にもどかしく映る。判断は浅く、見通しは甘く、あちこちに抜けがある。報告書一つ満足に仕上げられず、社内の横の連携の悪さに至っては論外だ……といった具合に見えてしまうのだ。
しかし、それらの欠点は、卓越した能力を持つ社長の視点からそう見えるだけであり、社員たちはそれぞれ懸命に自分の役割を果たそうと努力していることを考慮すべきだ。社員の姿勢や努力を正当に評価する視点を持つことが求められる。
社長が社員の行動で目についた点をいちいち取り上げて叱責するのは、社員に対して社長と同じ立場や能力を求めているのと同じだ。しかし、社員がそんなことをこなせるなら、すでに自分で経営者になっているだろう。だからこそ、社員の仕事の欠点ばかりを指摘し、叱責を繰り返すのは間違ったアプローチだ。
社長は、社員が一生懸命に取り組んでいる限り、寛大であるべきだ。「こんな調子では会社がもたない」と不安に感じるかもしれないが、その心配は不要だ。いくら優秀な人材や能力の高い社員が揃っていても、それだけで会社の業績が向上するわけではないことは、すでに述べた通りである。
会社の業績は、社長の考え方と行動によって左右される。したがって、「企業は人なり」という言葉の本質は、社長自身のあり方にかかっているのであって、社員を指しているわけではないと解釈するのが、社長として正しい姿勢と言える。
社長が部下の能力向上を目指して教育に力を入れる前に、まず「優れた経営」を自ら実践することを誓い、それを実行することが何より重要だ。社長自身が模範となる経営を行えば、自然と人材は集まり、そして育っていくものである。
優れた経営者は、常に「うちの社員はよく頑張ってくれています」と他者に語る。一方で、能力の低い経営者ほど、自社の社員の無能さを嘆き、他人にこぼすものだ。
企業の業績が上がらない原因を社員の無能さに求めるほど、的外れな考えはない。社長がどれだけガミガミと社員を教育したところで、成果が上がらないという現実は、数多くの実例が証明している。
逆に、「社員が無能だから、何もかも自分でやらなければならない」と思い込んでいるワンマン経営者も、優れた業績を上げることは決してできない。その姿勢では、組織全体の力を引き出すことは不可能だからだ。
企業を発展に導く鍵は、社長自身の姿勢が正しく、「優れた経営」を実践することにある。決して部下の考え方や行動に責任を転嫁すべきではない。「優れた経営」とは、優れた業績を達成することであり、加えて近年では、公害を起こさないことが新たに認識された重大な責任として求められている。
優れた業績を上げるための最も基本的な認識は、企業の成果は外部から得られるものであるという点にある。どれほど優れた商品であっても、それが売れて初めて企業の成果となる。売れなければ、それは商品ではなく単なる「製品」に過ぎない。コストや品質にどれほどこだわろうと、売れなければ全く意味を持たない。こんな当たり前のことが、驚くほど理解されていない場合が多いのだ。
商品が売れるかどうかは、まず第一に、その商品が顧客の要求やニーズに合致しているかどうかにかかっている。第二には、その商品を顧客の手元にどのように届けるか、つまり販売チャンネルの強さや効果的な流通経路が確立されているかどうかによって、大きく左右される。この二つの要因が基本的に売れるか売れないかを決定づけるのだ。
顧客の要求に合った商品を提供することの重要性は広く認識されているように見えるが、実際にはその本質を理解している企業は案外少ない。顧客の真のニーズを的確に捉えることは簡単ではなく、多くの企業が表面的な要求にとどまってしまうことが多い。
ある会社では、開発研究部長が営業部長を兼任している。その理由を尋ねると、以前は技術部長が兼任していたが、開発された商品が全く売れなかったという。そこで、苦肉の策として営業部長が兼任する形に変えたところ、売れる商品が開発できるようになったという話だ。
技術部長は自身の技術力に基づいて製品を開発していたため、性能は優れていたが、使い勝手が悪く、顧客に喜ばれるものではなかった。つまり、それは「製品」ではあっても、顧客にとっての「商品」にはなり得なかったのだ。
営業部長はさすがに顧客の要求を熟知しており、その結果、彼が開発した商品は売れるようになった。多くの企業では、新製品の開発責任者を技術者が務めるのが一般的だ。これは、製品の設計を行う以上、その責任者は技術者であるべきだという固定観念に基づいている。しかし、この考え方には見直すべき点がある。
このような状況では「商品」ではなく「製品」が生まれてしまう。商品とは顧客に売るためのものであり、顧客の要求を中心に考えるのが当然だが、それを忘れてしまうことが多い。だからこそ、開発研究部門の責任者は、その会社で最も顧客の要求を知り、理解できる人物が務めるべきだ。そして、その役割を果たすのは多くの場合、社長自身でなければならない。もし社長でない場合は、社長の意図を十分に伝え、共有する必要がある。
さらに、販売チャンネルについては、その重要性が驚くほど理解されていないことが問題だ。効果的な販売チャンネルを構築しなければ、どれほど優れた商品でも顧客に届かず、成果を上げることはできない。
ある規模の小さい化粧品メーカーがテレビコマーシャルに熱心に取り組んでいるものの、販売チャンネルの強化にはほとんど注意を払っていない。これでは、いくらテレビで宣伝しても、全く効果がない。テレビを見てその商品を欲しいと思った顧客が、実際にどこでその商品を購入できるのかが不明確では、販促の意味がないのだ。これは非常に浅はかで、しかも多くの企業が陥りがちな典型的なミスである。
「販売チャンネルなくして販売なし」という当たり前の原理を理解していない企業があまりにも多い。それだけでなく、販売チャンネルに対する基本的な知識や認識が驚くほど不足している企業も多い。この認識不足が、結果として企業の成長を妨げ、大きな損失を生んでいるのだ。
中小企業では、問屋や商社と取引や代理店契約を結べば、それ以降はその会社に販売を任せてしまえばいい、と考える企業が非常に多い。この認識が大きな間違いのもととなっている。問屋や商社はメーカーの要請で商品を売るわけではなく、小売店からの注文を受けて初めてメーカーから仕入れる。その小売店は当然ながら、売れないと判断した商品を仕入れようとはしないのだ。この流れを理解しないまま販売を任せるのは危険であり、業績に悪影響を及ぼす原因となる。
そのため、メーカーは商品の販売を問屋を通そうが、商社を総代理店にしようが、自社で責任を持って商品の適性を確認する必要がある。具体的には、その商品が顧客の要求に合致しているかを徹底的に調査することだ。さらに、商品の販売を成功させるには、小売店だけでなく、場合によっては消費者に直接アプローチする努力も必要となる。こうした積極的な取り組みがなければ、商品は売れるものにはならないのだ。
I社の商品は国内占有率90%という圧倒的なシェアを誇っている。代理店はU洋行に任せており、自社では一切直販を行っていない。それにもかかわらず、営業部員が40名も在籍し、全国の小売店と連携して展示会やダイレクトメール(D.M.)などの宣伝活動に常時力を注いでいる。この取り組みこそが、国内占有率90%を実現する最大の秘密だと、I社長は私に語ってくれた。
T社の商品は国内占有率50%を誇るトップメーカーだ。その商品の品質は特に優れているわけでもなく、目立った特徴もない、ごく平凡なものだ。それどころか、価格は他社製品よりもはるかに高い。それにもかかわらず、T社の商品が売れる理由は、問屋に任せきりにせず、常に小売店に直接働きかけを行っている点にある。この地道な取り組みが、競争力を支える鍵となっているのだ。
展示会ではファッションモデルを起用し、ポスター広告で視覚的な訴求力を高める。さらに、新商品ニュースを全国の小売店に直接届ける仕組みを整えている。宣伝カーも用意されており、北は北海道から南は九州の隅々まで小売店を巡回している。こうした訪問に対し、小売店から「よくこんなところまで来てくれた」と感謝されることもしばしばである。この直接的なアプローチがもたらす効果は大きい。
また、この巡回活動は市場調査も兼ねており、巡回報告書には現場からの貴重な情報が記録されることが少なくない。これらの情報は、次の戦略を立てる上で重要な資源となっている。
お客様とのパイプをいかに太く、強固にするかは、経営者が最も注力すべき課題の一つである。それを実現するためには、あらゆる手段を講じて関係を深め、信頼を築く努力が欠かせない。こうした取り組みこそが、業績向上の基本条件であり、企業の成長を支える土台となるのだ。
この基本条件を満たすためには、社長自らが率先して外部活動を行うことが不可欠だ。外部との関係構築に力を注げば、その大半の時間を費やすことになり、社内の細部に目を向ける余裕はなくなるだろう。しかし、まさにそれこそが社長としてあるべき姿であり、企業を成長に導くための正しい役割なのである。
この最重要課題をそっちのけにし、内部管理にばかり目を向けているのがワンマン・コントロール社長だ。本来は顧客に向けるべき視線を、部下の行動に向けてしまっている。このような姿勢は、根本的に間違っている。ワンマン・コントロールの会社が軒並み業績不振に陥る根本原因は、まさにここにあるのだ。
新事業や新商品の開発においては、まず市場の大きさを十分に検討する必要がある。市場が自社の規模に対して小さすぎれば、たとえ成功したとしても、得られる収益はごくわずかであり、事業全体に大きな貢献をすることは難しい。一方、市場が大きすぎる場合、必要な占有率を確保できず、競争に埋没し限界生産者としての地位に甘んじる可能性が高い。限界生産者の運命は、市場から淘汰されるのみだ。
したがって、新商品の開発に着手する際は、何よりもまず市場の大きさを詳細に調査し、自社の規模や能力に適したマーケットかどうかを見極めることが重要である。
次に重要なのは、どのような販売チャンネルを構築するかを決めることだ。そしてその後、販売促進の方針を明確にする必要がある。しかし、多くの企業はこれらの重要なステップを飛ばしてしまい、製品(商品ではない)の試作からスタートしてしまう。このような順序の誤りが、新商品の失敗や市場での苦戦を招く大きな要因となっている。
「良い製品さえ作れば、それだけで売れる」と思い込んでいるのは、経営の本質を全く理解していない証拠だ。市場や顧客のニーズを無視して成功できるわけがない。製品がどれほど優れていても、それを必要とする顧客が存在し、それが適切な形で届けられなければ、売上には繋がらない。経営とは、製品を作るだけでなく、それを市場で機能させる仕組みを構築することなのだ。
ここでも最も重要で、最初に取り組むべきは市場調査だ。この市場調査こそ、社長自らが主体的に行うべき活動であり、経営における最優先事項である。この段階で、事業や商品の成否の見通しを確実につける必要がある。
最も重要なことに集中するためには、内部管理のような次元の低い業務は、部下に完全に任せるべきだ。社長が優先すべきは、外部との関係を築き、経営の方向性を見極めることなのである。それを怠れば、企業の成功は到底望めない。
下請企業の場合、「お得意先や製品が決まっているのだから、社長の外部活動など不要で、やっても無意味だ」という意見を耳にすることがある。しかし、これこそ認識不足の典型例だ。こうした企業——正確には「工場」と呼ぶべきだろう——は、物を作ることに特化し、それ以外の経営活動をほとんど考慮していない。
その結果、多くの場合、業績は振るわず、赤字が出ないだけで「良い方」とされる状況に甘んじている。社長が外部活動を軽視し、新たな可能性や市場を探らない限り、下請け依存のまま安定的な成長は見込めない。これは下請企業にとって深刻な問題である。
その低業績の根本原因は、営業努力を完全に放棄していることにある。一度コネができた親企業に依存し、そこにしがみついて何とか生計を立てようとする怠慢な経営が問題だ。その結果、親企業から値下げ要求があった際には、反論したり交渉したりするものの、最終的には受け入れるしかなくなる。引き合わないと分かっていても、拒否すれば仕事が途絶えてしまうという恐怖が、それを許してしまうのだ。このような構造が、下請企業の低迷をさらに深刻化させている。
さらに、自らの努力不足を棚に上げ、値下げ圧力をかけてくる親企業に対して恨みがましい感情を抱いてしまうことがある。しかし、これは大きな間違いだ。たとえ単価が安く、採算が厳しい状況であっても、仕事を与えてくれる親企業は「お客様」である。お客様を恨むことは、経営者としての姿勢を欠いた行為であり、本質を見失っている証拠だ。親企業に依存するのではなく、自らの努力で新たな道を切り開くことが重要である。
自らの努力不足とは、採算の良い仕事を自らの力で探し出そうとしないことを指している。そもそも、努力なしで採算の良い仕事が舞い込むなどという都合の良い話はあり得ない。それを期待するのは、あまりにも甘い考えだ。
採算の良い仕事が欲しいのであれば、社長自らが日夜を問わず積極的に仕事を探し回るべきだ。この努力を怠る社長には、その座にいる資格はないと言っても過言ではない。経営とは、自らの行動で未来を切り拓くものであり、他人任せや運頼みでは成立しないのだ。
良い仕事を見つけたら、採算の取れない悪い仕事を切り捨てる。この繰り返しによって、企業は利益を確保し、成長していく。そのために必要なのが、営業力と販売力だ。これこそが企業経営の原動力であり、成長を支える「けん引車」となる存在だ。そして、そのけん引車を担うのは、他ならぬ社長自身であるべきだ。
私は、社長が社内にいる時間について、「一週間で延べ一日程度が適切だ」と考えている。それ以外の時間は、社長自らが外部で活動し、営業力を発揮して企業の未来を切り拓くことに費やされるべきだからだ。社長が外に出なければ、企業に新しい仕事や成長の機会は訪れない。
私は、社長の大部分の時間は情報収集、販売活動、受注活動といった外部活動に注ぐべきだと考えている。しかし、多くの人は「社長は優れた内部管理を行うべきだ」と説く。この考えを広めるのは、経営の本質を全く理解していない観念論者たちだ。彼らが現実とかけ離れた理論を振りかざし、社長の業務を誤って教えた結果、多くの経営者が本来の役割を見失っている。社長の役割とは、社内に閉じこもることではなく、企業の未来を切り開く外部活動にこそある。
私のもとに寄せられる社長セミナーの依頼の多くは、「組織管理」や「幹部社員の指導」について話してほしいという内容だ。つまり、経営とは社員をうまく働かせることだと考えているわけだが、これは見当違いも甚だしい。経営の本質をまるで理解していない証拠であり、非常に困った問題だ。
経営とは、外部での活動を通じて市場を切り開き、企業の未来を築くことにある。内部管理や社員の指導が重要でないとは言わないが、それは社長の主たる役割ではない。本質を見誤ることで、企業の成長機会を逃してしまう経営者が少なくないことに危機感を覚える。
この誤った理論に、いかに多くの社長が囚われ、経営を誤った方向に導いていることか。私は日々、この現実を目の当たりにしている。社員の管理や指導に時間を費やし、外部活動を怠る社長たちは、自らの本来の役割を見失い、企業の可能性を自ら狭めている。この状況が繰り返されていることに、強い危機感を覚えざるを得ない。
内部管理にばかり没頭し、それが思い通りに進まないとイライラしている間に、外部の状況はどんどん変化し、会社は市場の流れから取り残されていく。それにもかかわらず、その変化に気づかない。やがて気がついた時には、すでに手遅れで、会社の業績はどうしようもないほど悪化しているという事態に陥る。
このような状態に陥るのは, 経営の本質を見誤り、外部活動を軽視してきた結果である。経営者が内部に埋没する時間が長ければ長いほど、会社の未来は危険にさらされるのだ。
こうした内部管理に没頭して衰退する会社を数多く目の当たりにする中で、私は「経営学」と称される実態とかけ離れた理論がもたらす罪深さに、嫌というほど直面している。同時に、それが経営者たちを惑わせ、誤った道へ導いている現実に対し、限りない憤りと無力感を覚える。
経営の本質を理解し、現場で実践されるべき知識や理論が、観念的な「学問」によって歪められている。この状況を打破しない限り、経営者と企業が本来の可能性を発揮することは難しいと痛感せざるを得ない。
私は、すべての社長が「企業の運命は客観情勢の変化にどう対応するかで決まる」という事実を明確に認識し、それに基づいて行動してほしいと強く願っている。経営とは、変化をいち早く察知し、その波に適応しながら成長を図ることであり、内部に閉じこもっている時間はない。市場や顧客、競争環境の動向に目を向け、柔軟に対応する姿勢こそが、企業を未来へと導く唯一の道だ。
昭和45年に家電業界を襲った不況の嵐は、いくつかの要因が複雑に絡み合って起きた。直接的なきっかけは、アメリカでの日本製テレビのダンピング問題に端を発し、国内ではテレビの二重価格問題が顕在化し、それが消費者の不買運動を引き起こした。しかし、その背景には、国内市場の内需が限界に達しつつあったという構造的な要因が横たわっていた。この内需の頭打ちが、業界全体の長期的な課題を浮き彫りにしたのだ。
これらはすべて外部要因による問題であり、家電業界を激しく揺るがした。さらに、その後の石油ショックは、全世界を震撼させ、企業環境を根本から変えてしまった。こうした外部からの嵐は、いくら内部管理を巧みに行ったとしても、防ぎようがない。内部管理がいかに優れていようと、外部環境の激変には対応できないのだ。経営者が目を向けるべきは、内部の細部ではなく、外部の情勢をいかに読み、適応するかという点に尽きる。
企業の運命は、客観情勢の変化をいかに受け止め、それに対して自社をどの方向に導くかによって決まる。その判断と行動を担うのは、他ならぬ社長自身だ。社長の役割は、変化を見極め、迅速かつ適切な対応策を打ち出し、自社を成長と安定の道へ導くことである。社長がこの責任を果たさなければ、企業の未来は暗いものとなる。
もし社長が進むべき方向を誤れば、会社の業績は上がらないどころか、最悪の場合、倒産の危機に直面する。会社を正しい方向に導くためには、社長自らが全力を尽くし、客観情勢の変化の実態を把握し、将来の見通しを明確にしなければならない。
これを怠れば、自社の進むべき方向を正しく決定することは不可能であり、企業は混乱や停滞に陥る。外部の変化に敏感であり、それに基づいて柔軟に戦略を調整することが、経営者としての最も重要な責務である。
あらゆる業界は、常に世界の政治、外交、経済など多岐にわたる要因の影響を受け、刻々と変化している。それらの変化を的確に把握し、自社の進むべき正しい方向を見極めるのは、簡単なことではない。それこそ社長の覚悟と努力が求められる重要な仕事だ。
にもかかわらず、社長が自社内部に目を向け、社員の仕事の粗探しばかりしているようでは、企業の未来は危うい。外部の変化に背を向け、内向きの姿勢を続ければ、会社は時代の流れから取り残され、いずれ破綻の道を歩むことになる。経営者としての本分を見失ってはならない。
企業の方向を誤るリスクは、社員の行動が非効率的であることから生じるリスクと比較にならないほど重大である。社員の非能率による問題は、会社の存続そのものを脅かすほどのものではない。
一方で、社長が正しい考え方を持ち、適切な行動を取るようになれば、これまでやる気を欠いていた社員たちが、自ら積極的に動き出す。彼らは責任感を持ち、主体的に業務を遂行するようになるばかりか、将来に対する洞察力も深まっていく。私は、こうした変化が実際に起こった数多くの事例を目の当たりにしている。
社長のリーダーシップは、単に方向性を示すだけでなく、組織全体の士気を高め、社員が自らの力を最大限に発揮する環境をつくり出す原動力となるのだ。
「正しい経営」を実践することこそ、社員の考え方や行動を正し、やる気を引き出す最大の要因である。この事実を、社長はしっかりと理解しなければならない。
経営が正しい方向に進めば、社員たちはその姿勢や成果を肌で感じ、自分たちが貢献している実感を持つようになる。その結果、自らの役割を理解し、責任を果たそうとする意欲が自然と湧き上がるのだ。
逆に、経営が誤った方向に進めば、どれほど社員を叱咤激励しても、その効果は限定的で、むしろ組織全体の士気を低下させる結果となる。社長の経営姿勢が社員のモチベーションを左右する鍵であることを、常に忘れてはならない。
企業の成果が外部から得られるという考えは、経営者にとって極めて重要な認識です。企業の成功を左右するのは、主に市場や顧客、競争相手、さらには政治や経済環境といった「外部要因」です。しかし、ワンマン・コントロール社長の多くは、これを理解せず、内部管理にばかり注意を向け、部下を厳しく管理することにこだわりすぎています。このような内向きの姿勢が、しばしば企業の衰退を招くのです。
企業の発展には、顧客のニーズに応え、販売チャンネルを効果的に構築するなど、外部との強いパイプを築くことが欠かせません。また、新たな市場の成長性や変化に対応できる製品を開発し、顧客が求める価値を提供することで初めて、企業の成果は実現します。市場や外部環境の変化に対応し、自らの製品やサービスを柔軟に調整していくことが、経営者に求められる最も重要な能力です。
社長が外部に目を向けると、社員もその重要性を理解し、会社の将来に対する責任感が生まれ、積極的に行動するようになります。
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