N製作所は社員数が約20名ほどの小さな会社だ。しかし、業績は安定しており、決して悪くない。主な仕事は小型の自動旋盤を使った部品加工だ。一見すると風に吹き飛ばされそうな小規模企業だが、侮れない。まさに「山椒は小粒でもピリリと辛い」を地で行く存在である。この人手不足の時代にもかかわらず、人材に困ることがなく、多くの外注工場を抱えており、業界内で一目置かれる存在となっている。
N社長の方針は明確で、会社をこれ以上拡大するつもりはない。増え続ける注文については、全て外注で対応するというスタンスだ。その外注工場はというと、いずれもかつてN社で働いていた元社員たちが運営している。
これは、N社長が社員たちに常々語っている信念によるものだ。「いつまでも人に使われているな。独立しろ。一人前の腕を身につけたら自分の力で立ち上がるんだ。そのときは機械を貸してやるし、仕事も責任を持って回す」と、社員たちに独立を促しているのだ。
こうして独立していった人々が築き上げたのが、N製作所の外注工場群である。彼らは元同僚であり、技術と信頼を共有する仲間でもある。そのため、人間的な絆も仕事上の連携も非常に深い。規模は小さいながらも、強固な結びつきを持つ企業集団を形成しており、これがN製作所の強みとなっている。
人間は誰しも本心では人に使われることを望んでいない。しかし、独立するというのは決して簡単なことではない。そのため、やむを得ず人に使われる立場に甘んじている人が実際には非常に多いのが現実だ。
特に学歴がない人にとっては、何か特別な才能や能力がない限り、下積みのまま終わる可能性が高い。しかし、腕を磨けばたとえ規模が小さくても自分の城を持つことができるとなれば、それは彼らにとって非常に魅力的な選択肢となる。
N製作所は、人々の願いを形にする場だ。だからこそ、独立して去った社員の後任が不足することはない。常に次の人材が控えている。
さらに、社員たちに不平不満はなく、面倒な労働問題も一切発生しない。このようにして、この企業集団は、それぞれが自分の生きがいと小さな満足感を得ながら成り立っている。
だが、世の中は常に順風満帆とはいかない。景気が悪化して仕事が減ることもある。そんな時こそ、団結し、互いに譲り合いながら苦境を乗り越えていくことが求められる。
N製作所の経営スタイルは、社員が独立して自分の工場を持つ夢を叶えさせる点で大きな魅力を持っています。社長の方針は、会社を大きくするのではなく、腕を磨いた社員を独立させ、外注工場として連携を保つ形で事業を拡大することです。このため、N製作所から独立した人々が外注工場を営み、強固な企業集団としての関係を築いています。
このモデルは、学歴や経歴にかかわらず、腕を磨けば一国一城の主となれる機会を提供するものです。そのため、社員たちには不平不満が少なく、労働問題も起こりにくいのです。独立した社員の後任も自然と希望者が絶えないため、安定した人材確保が可能です。
ただし、経済状況が悪化して仕事が減少する場合もあるでしょう。そんな時こそ、互いに協力し、譲り合いながら困難を乗り越える団結が求められます。
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