メーカーが店舗フォローを
D社は菓子のメーカーである。 D社長の悩みは、売上げの伸び悩みであった。売上げ増大のための決め手は新商品の開発であるとして、新商品を次々発売したが、期待した程の売上げ増大はできなかった。
D社長の悩みに対する私の勧告は、「社長自らが小売店を回ってみる」ということだった。
小売店を回った社長の見たものは、社長がいままで頭の中で考えていたものとは全く別のものだった。
それは、我社の商品は、間屋が十分のフォローをして、 小売店の店頭には我社の商品がちゃんと陳列してあるものと思っていたのに、実際には、売切れの補充が極めて悪く、D社の商品の影は薄かったのである。
何の ことはない。小売店の店頭に我社の商品の陳列が少ない、ということである。こ れでは売れるはずがないのだ。
それと同時に、D社の主要得意先の一つで、売上げが急増しているT社(問屋) の小売店フォローの立派さである。特に大手スーパII社に対するフォローは完璧に近かった。
在来店はもちろん、急増するI社の店舗に対しても、フェーシングから商品補充まで、すべてT社でやるのである。
この事実を見せつけられたD社長は、「自らの商品は自ら売らなければダメだ」 ということを痛感し、間屋と相談のうえ、D社で小売店巡回による商品補充を行っ たのである。
効果は直ちに現われた。
それだけではない、不思議な― ‐実は当り前なことで はあるが― ‐現象が現われた。
D社の主力商品である甘納豆は、夏場には売上げ が急減するのであった。
ところが、この甘納豆が夏場に売れ出したのである。むろん、冬場と同じではないが、いままでは全く考えられない程の売上げ急増なのである。
その理由は極めて簡単である。いままでは、「甘納豆は夏場には売れない」と いう先入観によって、夏場には小売店もD社も甘納豆には関心がなく、売切れれ ばそのままで補充をしなかったのである。
それを、小売店フォローをするようになってからは、甘納豆の補充も行うようになって、店頭に甘納豆が陳列されるよ うになった、という極めて単純な理由なのである。
D社はこうして、フォローの費用をはるかに上回る売上げと収益を確保するこ とができるようになった。そして、そのうえ小売店との間が親密になり、新商品 を持ち込むと、すぐに買ってくれるようにさえなったのである。
食品、日用品雑貨等、その他、小売店の店頭で売れるものは、店頭に陳列して ないものは売れない、という単純明快な法則を忘れて、カッコイイ特売や、宣伝広告のみに憂き身をやつしている会社が大部分である。
店頭に常時陳列してなければ、何をどうやっても売れないのである。そのことをご存知ない社長が多すぎる。
というよりは、それは知っているけれども、「我社の商品は、常に十分な店頭陳列を、問屋と小売店でやっている」というひとりよがり、つまリ「天動説」のとりこになっているために、それが本当にそうなのかどうかを、社長自らの目で 確かめようとしないところに、根本的な誤りがあるのだ。
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