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バランスシートの輪=自社の安全性を把握する

◇バランスシートの輪=自社の安全性を把握する

前項の損益計算書に比べ、貸借対照表を苦手とする人は意外に多いようです。損益計算書は対象期間1年間の企業活動の成績表ですが、貸借対照表は会社設立から一定時点の決算期まで営々と続けてきた企業活動の積み重ねの結果としての財務状況、即ち「会社を経営するために資産をどのように保有し、その資産を調達するために必要な資金をどうやって調達しているか」を表しています。つまり、決算時点に自社にはどれだけの現金・商品・土地といった財産があり、一方、それらの財産を購入するためにどれほどの資金を投下しているかといった、資金の調達と運用の状態を示しています。資金の調達は貸借対照表(図23)の右側に「負債・資本の部」として記され、資金の運用については左側に「資産の部」として記されます。右側の負債には基本的には返済を必要とする借入金などが記載され、左側の資産からそれらの負債を差し引いたのが「純資産」となり、自分たちが調達した資本金や設立以来積み上げてきた利益などがここに該当します。図に示したように、左右の金額の合計は必ず一致します。なお、貸借対照表は、しばしばB/Sと称されます。B/Sとは、「BalanceSheet(バランスシート)」の略称です。

以下、資産・負債・資本の構成についての概要をそれぞれご説明します。①資産何を以て事業を行っているのか?資産とは、企業経営に貢献し、収益獲得活動に役立ち得る有形・無形の財貨または権利であり、貨幣的評価ができるものを言います。資産は次のように細分化することができます。●流動資産………1年以内に換金できる資産例…現金預金、売掛金、有価証券、商品●固定資産………1年を超える長い期間で換金化(償却)される資産例…建物、土地、設備、ソフトウェア●繰延資産………単一年度で発生する費用であるが、長期間かけて償却される資産例…のれん代、商標権②負債返さなければならない資金負債とは、将来他人に一定の資金・財貨及び用役を提供しなければならない義務であり、貨幣的評価ができるものを言います。負債は次のように細分化することができます。●流動負債………1年以内に返済しなければならない負債例…買掛金、短期借入金●固定負債………1年を超える期間をかけて返済する負債例…社債、長期借入金、退職給与引当金③資本返す必要のない資金資本とは、株式として事業主が出資した資金や一般から集めた資金、あるいは利益処分後社内に留保された利益のことを言います。資本は返済する義務がなく、利息を支払う必要もないため、自己資本とも呼ばれます。資本は次のように細分化することができます。●資本金……………株主が実際に出資した資本●法定準備金………会社法によって社内に留保することが義務づけられており、企業の自由裁量で処分することのできない資本例…資本準備金、利益準備金●剰余金……………企業が任意に積み立てあるいは処分できる資本、ならびに処分せずに次期に繰り越す利益例…資本剰余金、利益剰余金④貸借対照表で自社の安全性を判断する自社の安全性を判断する指標の1つとして「自己資本比率(自己資本/総資本×100)」がありますが、その理由を左図の「損益計算書と貸借対照表のつながり」から見ていきましょう(図24)。

大企業や新興企業と異なり、増資を繰り返して行わない中小企業にとっての資本とは、その多くは過去の利益の積み重ねです。損益計算書に記載される「当期純利益(税引き後純利益)」が、貸借対照表の「利益剰余金」とリンクしており、図24では斜線部で表しています。この「利益剰余金」が創業時からどんどん積み上がっていけば、「自己資本比率」もそれに比例してどんどん高くなっていきます。このように中小企業の場合、自己資本比率の高い会社ほど過去からの利益の積み上げがある=安全性の高い会社と判断することができますし、当然ながら自己資本比率の低い会社(儲けが少ないか赤字の状態が続いた可能性がある)=負債比率が高い会社は、今後返済しなければならない資金が大きくなるわけですから安全性は低いということになります。ちなみに過去からの赤字が積み上がっていけば、この資本そのものがマイナスとなってしまい、これを債務超過と言います。どの程度の自己資本比率が適正か、については、中小企業においては50%以上であることが望ましいとされていますが、一般に35%以上であれば安全圏内であると言ってよいでしょう。ただし、他の財務指標にも同じことが言えるのですが、その数字が適正か否かは、会社の規模や事業の性質によって、即ち大企業か中小企業か、あるいは、属する業界や業種によって異なってきますので、自社の数値を業界平均と比較する習慣を身につけるのがよいでしょう。

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