チェックを行うことで状況が明確になり、新たな戦略を立てる道が開ける。定期的な実施が欠かせず、頻度としては月に一度が理想的だ。多くの企業ではチェックが営業会議の場で行われているが、これは適切とは言えない。
会議の場でチェックを行う場合でも、その形式は必然的にマンツーマンになる。つまり、チェックを受けている本人以外には関係のない内容となる。それぞれの担当顧客の状況は異なるため、他の参加者にとっては無関係な話となるのが理由だ。結果として、チェック中のやり取りは「自分には関係ない」という空気を生み出しがちである。
「マンツーマンのやりとりが他の社員の参考になる」と信じている社長がいるとすれば、それは非常に楽観的な考えだ。そのように考えているのは社長だけであり、実際には誰もそのやりとりに関心を持っていない。社員たちは、自分に直接関係のない話には耳を貸さないのが現実だ。
「マンツーマンのやりとりが他の社員の参考になる」と信じている社長がいるとすれば、それはかなりの勘違いだ。実際には、社長がそう思っているだけで、社員たちはその話に耳を傾けることなどほとんどない。彼らの頭にあるのは、自分の番が来たときに「どう言い訳しようか」ということだけだ。だからこそ、会議でチェックを行うのは根本的に間違っている。
会議の時間内では、十分なチェックを行うことなど不可能だ。しかも、チェックを受けていない人にとっては、その時間は完全に無駄でしかない。そもそも時間の節約を目的とするはずの会議が、かえって時間を浪費する場になっているのだ。
重要なのは時間ではなく、チェックを徹底して行うことだ。そのため、チェックは社長と営業部長や営業所長、あるいは担当者との間でマンツーマンで実施するのが当然の形となる。
チェックはテリトリーごと、得意先ごとなど、個別に行うのが基本だ。その具体的な方法については、社長学シリーズ第二巻「経営計画・資金運用」および第六巻「内部体勢の確立」で詳しく述べているので、そちらを参照してほしい。
検討の結果導き出される新たな施策は、次のように大まかに分類される。
- 目標を突破した地域または得意先: 方針をさらに積極的に推進する。
- 目標通りの成果を上げた場合: 質的な転換を図るか、現行方針を維持する。
- 目標未達の場合: 作戦を抜本的に再検討する。
このような枠組みが基本となる。
施策の優先順位もまた、この順序に従う。理由は単純で、施策は成果の大きいものから順に実行していくのが基本だからだ。効率的かつ効果的な成果を上げるためには、最もインパクトのある施策から着手するのが自然な流れとなる。
施策の優先順位を逆にするのは、人情として陥りがちな誤りだが、それでは大きな成果を期待することはできない。以上が大筋の検討である。ただし、個別の状況においては、例えば敵の新商品攻勢や価格攻勢に直面した場合など、さらなる対応が必要となる。
新商品が優れたものである場合、我が社の不利は容易に覆せるものではない。焦って敵に劣る自社商品の値下げを行えば、かえって損失を拡大するだけだ。真に取るべき対応策は、敵の商品を上回る優れた商品の投入である。価格攻勢への具体的な対策については、後述する。
もう一つの我が社の弱点は、セールスマンが計画通りの得意先訪問を怠る場合だ。この問題は特にベテランに多く見られる。ベテランは往々にして、一匹狼的な独自のスタイルに誇り(?)を感じ、あらかじめ決められたコースを回ることを嫌う傾向がある。
市場戦略を遂行する上で、これは大きな障害となる。その対策は明確で、戦略から外す以外にない。「そんな勿体ないことを」といった感情に流されていては話にならない。断固として外すべきだ。指令違反はどんな場合でも絶対に見逃してはならない。それが組織としての統率力と戦略の成功を支える基本である。
実際にチェックを進めていくと、さまざまな予期せぬ事態に直面することがある。思いがけない伏兵が潜んでいたり、予想外の抵抗や激しい反撃を受けたりすることも少なくない。計画通りに事が運ぶことは稀で、現場の現実は常に予想を上回る複雑さを持っているものだ。
運良くこちらの戦略が奏功し、我が社の市場占有率が上がると、上位の競合企業から強力な圧力がかかるのは避けられない。まさに「出る釘は打たれる」という状況だ。しかし、それだけでは済まない。陰謀、デマ、模倣品(イミテーション)など、あらゆる手段を用いて攻撃を仕掛けてくるのは、言うまでもなく既にご承知のことだろう。
これらの詳細については後章「市場戦争考」で触れるとして、以上のような策謀が渦巻く状況下で、冷静な状況分析が不可欠となる。敵の弱点を見抜き、自社の弱点を補いつつ、有効な作戦を新たに立案し、攻勢に出るか防戦に徹するかを判断しながら、戦いを有利に進める責任がある。それこそが、総大将たる社長の役割である。
チェックは市場戦略を進める上で極めて重要なプロセスです。以下のポイントを中心に、効果的なチェックの方法についてまとめます。
1. チェックの頻度と形式
- 定期的に月1回、社長と営業部長、あるいは営業所長と担当者がマンツーマンで行います。
- 営業会議で全体に向けたチェックは避けるべきです。個別の状況に応じた指導ができないため、チェックは必ず一対一で行います。
2. チェックの内容と具体的手順
- テリトリーごと・得意先ごとの個別チェックを行い、実際の訪問状況や業績進捗、競合の動向を確認します。
- 達成度による対策を以下の通りに区別します:
- 目標突破の地域・得意先:方針を強化し、積極的に推進します。
- 目標通りの地域・得意先:現状維持しつつ質的な転換の余地があるか確認します。
- 目標未達の地域・得意先:戦略の見直しが必要です。敵の状況に応じて柔軟な対応を検討します。
3. 新商品や価格攻勢への対応
- 敵の新商品が自社商品より優れている場合は、単に価格を下げるのではなく、より良い新商品の開発・投入を目指します。価格だけの競争は避けるべきです。
4. ベテラン営業担当への対応
- 計画通りの訪問を行わない場合は、断固として市場戦略から外します。市場戦略の徹底は、すべての営業担当者に求められる重要な要件であり、指令違反は決して許してはなりません。
5. チェックによって明らかになる問題点への対応
- チェックを通じて、事前には分からなかった敵の圧力や陰謀などが明らかになることがあります。こうした情報をもとに、新たな戦略を練り、状況に合わせた防衛や攻勢策を講じます。
6. チェック後の新たな作戦の立案
- 状況を冷静に分析し、敵の弱点と自社の弱点を把握します。これに基づいて、有利に戦いを進めるための作戦を検討・実施します。
社長は、以上のプロセスを実施し、会社全体の戦略を見直す役割を担います。チェックの結果をもとにした新たな施策が、会社の成長と市場戦略の成功を左右するのです。
コメント