サービスとはお客様の要求を満たすことである
「これ、サービスです」「サービスさせていただきます」という言葉の意味は、「タダ」か「オマケ」を意味しているのが一般的である。
いささか変であるが、多くの人びとはそれに気がついていない
「タダ」か「オマケ」以外には、サービス精神「ゼロ」としかいいようのないようなことに、明けても暮れてもぶつかる。
たしかに「タダ」か「オマケ」はサービスであることには間違いないが、これは最も次元の低いサービスである。
なぜかというと、これには、サービスの基本である心くばりと手間がかかっていないからである。 むしろ、恩きせがましい「損得」の問題のような印象を受けるのである。
もう一つ、優待券とか割引券というものがある。クタダとオマケ″である。
そして恩きせがましいのは必ず有効期限がついているし、「五千円以上一割引」「土 曜、日曜は使用不可」というような制限条件がある
こういうものは、私にとってはムシロ不愉快に感ずるし、相手の情ない心が見え見えのように思えてならないのである。
何故、無期限、無条件にしないのだろうか、これでこそ本当のサービスである。
サービスというのは、「己れを無にして相手のために尽す」ことではないのか。
制限つき、期限つきは、あくまでも自分の側の都合と損得勘定ではないか。それ が逆効果をもっていることに気がつかないのは、サービスとは何かが分かっていな い か ら で あ る
「第2表」(JR東海のアンケート)の一部をご覧願いたい。これが、「サービス向上のためにお客様にお伺いする事柄」だというのだから、「開いた日が塞がらない」のである。 ここにあるのは、お客様の利用状況と戸籍調査ではないか。
これに全く気がつ かないのは、何L情ないことだろうか。よくぞここまでトンチンカンになれたものである。 いうまでもなく、アンケートというのはクお客様の声クを聞くことなのに、そ れには全くふれていないのだから恐れ入る。

お客様の要求を満たす手段は、大きく分けて物的施設と人的労力の二つになる。
物的施設は「金をかける」ものであるのに対して、人的労力はク手間をかけるク ものである。そして、本当に優れたサービスというのは、手間をかけることである。
「金をかけるより手間をかけよ」というのが私の信条である。本当にお客様を満足させるもの、感激させるもの、感謝されるものは明らかに手間をかけることであり、気を配ることなのである。
気配りは言葉や動作にあらわれる。
本当に立派なサービスをすると、「心の交流」ということが生れ、お客様は心から感謝の言葉をのべられる。
これが、サービスをする人の心に大きな喜びを与えることになる。それは、サービスする人の「生き甲斐、やり甲斐」をよび起すのである。
反対に、人的サービスの悪さは人びとの心に不快感を起させ、甚だしい場合には怒りをさそう。これは人間関係を損ね、事業経営の場合には売上げ不振どころ か、出入禁止にまで及ぶ。店舗販売ではお客様に逃げられる。
こうなったら、もう事業の経営どころではなく、倒産の危険さえもひき起すものである。
右のようなことは、誰でも知っていることでありながら、なかなか実施できな いものである。 それは、 一にも二にも社長の姿勢の誤りにある。
本章では、右のことにつき、いろいろな実例をあげて、社長各位に考えていた だきたいという意図のもとに書かれたものである。
易しいようで難しく、気がつくようで気のつかないことへの反省の資としてい ただきたいのである。
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