後継者の方には財務の知識を早急に身につけていただきたい、と申しましたが、「関連書籍を見てもよくわからないな」ということは当然、あるだろうと思います。
財務諸表の大まかな構造は同じでも、書籍に紹介されているものは中堅企業、大企業を対象としているものが多く、参考にしにくいからです。
それぞれの指標の意味や考え方を学んだ後はすぐ実践、即ち自社の決算書を3期分揃えて推移を見たり、同業他社と各種指標を見比べて自社は平均より高いか低いか、どういう理由でこうなっているのか、と考察していくほうが、力となって身につきやすいのではないでしょうか。
身近な数字というのは関心が持ちやすく、また答えを得やすいものです。
財務に関し、本書では基本的なことしか扱っていませんが、ここから関心を持っていただき、徐々に学習範囲を広げていただきたいと思います。
何事も「わかる→楽しくなる→もっと知りたくなる」の順で始めるのが理解が早いと考えるからです。
また、1人もくもくと勉強するより、財務に詳しい人や自社の経営を知っている人、例えば顧問税理士に「聞く」という学習法が効果的です。
直接数字の意味を解説してもらったり、自社の課題について自分の考えを聞いてもらったりする中で理解を深めていただきたいと思います。
そういう意味では取引金融機関の担当者は取引企業の後継者にとっては財務諸表の伝道師となっていることが好ましいでしょう。
なお、直接自社の数字を教材にするということは、それだけ長く、自社の経営に向き合うということです。
この時間を定期的に、長く設けるようにする中で、経営者としての姿勢や見識が培われていきます。自社の決算書と向き合う時間を長くすることが財務知識を身につける早道です。
決算書は企業の過去の努力の成果を示すもの。
この過去を見つめ、自社の現状を正しく知ることで、初めて「未来の数値を創るために、何を今すべきか」が見えてくるのです。
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