株式会社大都DIY用品のネット通販サイトで躍進している大都(大阪市)。もともとは工具問屋でしたが、そのビジネスモデルを大きく転換させたのは3代目社長の山田岳人氏でした。
同サイトの強みは取り扱い点数の多さ。
長年蓄積された数多いメーカーとの取引により多様な品揃えを実現し、納期面でも消費者から受けた発注情報が直接メーカーに流れる独自システムを開発、優位性を確保しています。
さらに工具専門ならではの提案力(関連商品の選択など)を有し、今では同社の売上の大半を占める事業に育て上げました。
古い業界にIT技術を持ち込み、BtoBからBtoCへと軸足をシフトした典型的な成功例と言えるでしょう。
ただし、ビジネスモデルを転換するというアイデアは浮かんでも、それを実行するのは並大抵のことではありません。業歴が長いからこそのしがらみや旧態依然とした組織風土が足かせとなることもあります。
1つひとつ地道に解決していく他ないのですが、何より大切なのは、こうした局面で、「決断」できるかどうか。
まさに経営者としての覚悟が問われることになったのです。3代目とはいえ山田氏は娘婿でした。
妻の父である先代から結婚する際に「後を継ぐ」よう要請され、もともと自分で起業したいとの思いもあった山田氏はすぐに承諾されたそうです。
勤務していた大手企業を退職し、業界知識が全くないまま、当時従業員数15名ほどの同社に入社しました。
まずこの業界のことを勉強しようと、以後5年間、山田氏はひたすら研究に没頭することになります。休日も厭わず、ありとあらゆる工具の展示会に足を運び、新商品の情報を仕入れたり、配送の都度メーカーで工具の使い方を訊ね、小売店には売れ筋や問題点について質問しました。
分厚いカタログ、職人や会社ごとに異なる符丁のような商品の呼び名もすべて憶え、いつしか社内の誰よりも詳しくなっていたのです。
一方、事業そのものには全く将来性が感じられませんでした。他社との差別化は価格しかなく、ただ仕入れて売るだけの日々に、山田氏のくすぶっていた挑戦心に火がつきました。
「消費者をターゲットにしよう」と独学でIT知識を習得。2002年、独力でネット通販サイトを立ち上げました。
「この事業はいける」という手応えはあったものの、それ以上に本業の収益悪化が厳しい状況にあり、1度は廃業も考えたそうです。
しかし、「会社だけは残してほしい」という先代の言葉に折れ、本格的にネット通販事業にシフト。生き残りをかけた勝負に挑む決意を固めました。
当時の社員からは協力を得られず、06年にはやむなくリストラを実施。
それでも、「社会に何らかの価値を提供する会社を新たに目指したい」と、以後、迷いなくネット通販事業に力を注いでいきました。
そんな山田氏の姿に経営者としての凄みや覚悟をみてとったのか、先代が山田氏の経営に口出しすることは一切なかったとのことです。
【ビジネスモデル変革につながった、事業ドメイン再定義のポイント】
◇自社の商品を工具を用いた「DIY」というライフスタイルであると捉え直す
◇強みである商品知識を活かしたコンサルティング力を発揮できる顧客を選定
CompanyProfile株式会社大都所在地……大阪府大阪市生野区生野東2‐5‐3資本金……4億9901万円売上高……38億2124万円(2017年12月期)従業員数…49名https://www.daitotools.com/
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