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いくらの利益が必要か

利益が「もうけ」とされるのは、あくまで会計学の領域での話だ。経営学の視点では、企業にとって利益とは、成長や発展のために欠かせない「コスト」である。言い換えれば、利益とは会社を前進させるための必要な投資というべきものだ。

個人の生活でも、予期せぬ出費や病気に備えて貯金をしたり、万が一に備えて保険に加入したりする。これらは「貯金」や「保険」という名称ではあるが、その本質は「生活を破綻から守るためのコスト」といえる。同じように、企業にとっての利益は、個人生活における貯金や保険に相当するものだ。

企業経営にはさまざまなリスクがつきまとう。不渡りの発生や、売掛金の回収が思うように進まないこともあれば、材料費が急騰することもある。予期せぬ競合他社の新製品が突如市場に登場することもある。ある時、H社の営業部長がこう語った。「ポンドの切り下げは、うちにとっては売価を1割下げるのと同じくらいの打撃だ」。

そのようなリスクを乗り越え、危機に対応できるのは、利益があるからこそ可能になることだ。市場占有率を維持するためのさまざまな投資も、利益がなければ実現しない。さらに、増資や銀行からの融資も、利益がなければ成立しない話だ。利益こそが企業を支える基盤であり、成長の原動力となる。

以上のような利益の役割を理解したうえで、会社の存続と発展を支えるために不可欠な、最低限必要な利益を何としても確保しなければならない。それが企業経営の根幹であり、避けて通れない使命である。

これからの経営者に求められるのは、利益を最大化する経営ではない。厳しい現実において、達成可能な最大の利益よりも、必ず達成しなければならない最小限の利益のほうが、はるかに高い水準を求められるからだ。この難題を可能なものに変える努力こそが、現代の経営者に課された最大の挑戦である。

その必要な利益とは、具体的にどれくらいの額が求められるのだろうか。計算方法はいくつかあり、たとえば投下資本に対する利益率を基準にする方法や、実際に必要な経費や投資額を積み上げていく方法がある。しかし、ここでは詳細な計算ではなく、結論としての数字に焦点を当ててみよう。

従業員一人あたりの年間税込利益として、私が提示する最低基準は次の通りだ。

  • 自社製品メーカー:30万円
  • 加工業:20万円
  • 商社:50万円

さらに、この最低ラインは年々10%ずつ上昇することを前提に考えなければならない。(なお、この数字は昭和40年頃のものである)

利益の約半分は法人税や事業税として消え、そこから配当や役員賞与が支払われる。その後に残る金額が、企業の存続と成長のために充てられることを考えれば、先に挙げた必要利益の金額が決して過大ではないことが理解できるはずだ。利益の重要性は、その使途を見れば明白だろう。

企業が存続し成長していくために必要な利益の額は、一般に考えられているよりもはるかに大きい。これは、税金や配当、さらには将来のための投資を考慮すれば明らかだ。利益とは単なる「もうけ」ではなく、企業が生き抜くための不可欠な基盤なのである。

企業にとっての利益は単なる「もうけ」ではなく、存続と発展のための「必要経費」です。経営者は、利益を最大化することを目指すのではなく、企業の安定と成長を維持するために必要最低限の利益を確保することに力を注がなければなりません。この最低限の利益(必要利益)は、企業が遭遇し得るリスクや外部環境の変化に対応し、持続的に成長するために欠かせない「資金源」です。

たとえば、従業員一人当たり年間最低利益として、自社製品メーカーは30万円、加工業は40万円、商社は50万円が基準となります(昭和40年当時の数字に基づく)。この金額は企業が運営費用や将来の投資をまかない、成長を続けるために最低限必要な水準です。

利益の一部は税金や配当、役員賞与に充てられるため、企業の発展に直接使えるのは残りの利益です。ゆえに、利益額の重要性は一般的に考えられているよりも大きく、将来的には毎年10%ずつの増加を見込む必要があるのです。

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