お客様別販売計画は、「どのお客様に、いくらの売上高を達成すべきか」を具体化するための計画です。この計画は、特に見込型事業において重要であり、商品別販売計画を先に策定したうえで取り組むことが一般的です。
売上目標だけでなく粗利益も設定することが理想的ですが、多くの企業では顧客別の粗利益データを保有していない場合が多いのが現状です。そのため、まずは売上高目標の計画を優先的に立案することから始めましょう。
お客様別販売計画の作成手順
お客様別販売計画は、以下の4つのステップで作成します。
- 過去2~3期の販売実績を分析
販売実績をまとめた表を作成し、顧客ごとの売上推移や傾向を把握します。 - 当期計画の作成
経営者の判断で、顧客別に売上高目標を大まかに設定します。 - 当期予測の策定
各部門の責任者(販売部長、支店長など)に予測を依頼し、計画を現実に基づいた内容に補完します。 - 目標と予測の差を埋めるための対策を立案
計画と予測に差がある場合、その不足を補う具体的な施策を検討し、全社一丸で取り組みます。
過去の実績を分析し計画に活かす
お客様別販売計画では、過去2~3期の実績を分析し、その傾向を基に計画を策定します。このプロセスでは、以下のポイントに注目します。
- 売上が安定している顧客
安定した取引を維持しつつ、さらなる拡販の可能性を探ります。 - 売上が減少傾向にある顧客
顧客離れの原因を分析し、対策を講じる必要があります。 - 新規取引を開始した顧客
成長性の高い顧客には特に注力し、関係を強化します。
この分析に基づき、「お客様別年計表」や「お客様別売上高ABC分析表」を活用して、顧客の優先順位を明確にしましょう。
計画と予測の差を埋めるための具体策
計画目標に対して予測が不足する場合、その差を埋めるための方策を検討します。主な方法は以下の通りです。
1. 既存顧客の拡販
既存顧客の中で未購入の商品を提案したり、利用頻度を高める施策を実施します。リストを活用し、ターゲット顧客を明確に絞り込むことが重要です。
2. 新規顧客の開拓
未開拓の市場や顧客層に対する営業活動を強化します。これにはターゲットリストの作成が有効です。
3. 顧客ニーズに基づく商品提案
顧客ごとのニーズや課題を分析し、それに適した商品やサービスを提案します。顧客との信頼関係を強化し、購買意欲を高めることができます。
実際の運用と注意点
お客様別販売計画を立案した後は、それを月別に分解し、季節変動なども考慮に入れて具体的な行動計画へと落とし込む必要があります。また、目標と実績の差を定期的に見直し、柔軟に対応することが大切です。
まとめ
お客様別販売計画は、企業の収益力を高めるうえで欠かせないツールです。以下のポイントを意識して計画を進めましょう。
- 過去の実績データを分析し、傾向を把握する。
- 顧客ごとに売上目標を設定し、現実的な予測を行う。
- 不足分を補うための施策を具体的に立案する。
- 定期的に進捗を確認し、計画を見直す。
このようにして、計画を戦略的に運用することで、持続的な事業成長を実現することができます。
■どのお客様で、いくらの売上高を稼がねばならないか?
お客様別販売計画とは、「どのお客様で、いくらの売上高を稼がねばならないか?」を計画するものです。見込形態の事業は、商品別販売計画を先に計画してください。
お客様別に、いくらの売上高と粗利益を確保するかを計画するのが最も望ましいのですが、売上高はさておき、粗利益までは設定できないというのが実情です。
お客様別粗利益実績など、資料として残していないことが多いのです。ですからここでは、売上高目標だけを計画する作成することにします。
粗利益を計画できる会社は、粗利益計画も作成してください。お客様名は、すべてをあげる必要はありません。ABC分析のA・Bランクのお客様以外は、ひとまとめにしてもいいでしょう。
お客様別販売計画の立て方の手順としては、以下の4つのステップです。
- STEP1:過去2~3期の販売実績表を作成し、実績推移と傾向を読み取る
- STEP2:当期計画をおおざっぱに記入する
- STEP3:当期年度の予測を立てる
- STEP4:計画と予測の差をどう成し遂げるかを決定し、重点主義にて全社で取り組む
■過去2〜3期の販売実績を分析する
利益計画作成と同様に、過去2〜3期の販売実績表を作成し、その傾向から計画をつくります(お客様別販売計画検討表)。
利益計画同様に、「お客様別販売計画検討表」は、稼がなければならない売上高と粗利益を決めます。お客様別販売計画は、「どのお客様に」「どの商品を」「いくらで」「誰が」売るかを具体化するものです。
利益計画作成との違いは、先に述べましたように販売計画は、現実的に立てるということです。
そこで過去の実績を数字でつかみ、その傾向から予測を立ててから計画します。
「お客様別年計表」「お客様別売上高ABC分析表」も資料としてお使いください。
お客様別販売計画検討表(224ページ)を分析してみると、「A社のお客様のうち、ア社・イ社・ウ社が、毎期上位ランクの売上高を確保しており、A社にとって、生命を握っているお客様。エ社・オ社・ケ社に関しては、ライバル会社にお客様をとられてしまった。カ・キ・ク・コの4社については安定した売上を確保できている。ワ社は、2期前に新規にお取引が始まり、直前期は上昇傾向で今以上に拡販できる可能性がある」ことがわかります。
A社の経営者は、以下の手順でお客様別販売計画作成します。
STEP1:できるかどうかは別にして、計画を立ててみる。(次ページ参照)
STEP2:過去3期の実績表から、当期予測をしてみる。販売部長/支店長・営業所長に予測を出させる。
STEP3:当期目標売上高を達成するために、どのお客様に予測以上に売らなければならないかを知るSTEP4:不足分は、新規のお客様を開拓することとしました。
計画の合計欄は、利益計画の数字をそのまま記入します。
そして、お客様別に割り付けます。
直前3期の実績から経営者の想いで、このお客様はいくらなどと概算を計画欄に記入ください。この際、販売部長らの資料や意見を参考にしましょう。次ページの予測ができました。
ご覧の通り、計画には15不足します。この不足する売上高をどうやって補うか考えることが極めて重要なのです。あなたの会社では、こういう検討はしていますか。
古田土会計では約2150社のお客様がありますが、その中に社会保険契約のない、あるいは経営計画書を作成していないお客様をリストアップしたり、また、経営計画書を作成していても発表会をやっているか、利益計画や販売計画を作っているかをリストでチェックしています。
とくに、商品別とお客様別の販売計画を立てていないお客様を重点的にリストにあげてもらうようにお願いしています。販売なくして事業なし、売り方が下手では会社はつぶれます。
コメント