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◇3年後の自社のイメージを描く

この記事でわかること

前項では「経営ビジョン」の策定についてご説明しました。

経営ビジョンとは「将来こうありたい」という理想像ですが、これを確実に実現するためには、遠い目標だけでなく、「ではその第一ステップとして、3年後にはどのような状態になっていたいか?」とより噛み砕いた目標、マイルストーンを設定し、最終的にビジョンが実現するまでのプロセスを明らかにすることが有効です。

その際重要なのは、「数値目標(定量目標)」の前に、必ず、「絵として描ける具体的な目標(定性目標)」から先に考えていくことです。

定性目標:「どんなふうになっていたいか?」と社内で共有できるイメージ定量目標:「それが実現できているかどうか」を客観的に判断できる数値目標ここからはある町の家電店(仮にA社とします)を例に、具体的に見ていきましょう。

A社は本書でご紹介したような「経営理念の策定」、「SWOT分析」、「事業ドメインの再定義」……というステップを通じ、〈お客様にとってどんな会社になっているか〉大手量販店では真似ができない「手厚いサポート」をしている。

家電に関わるお困りごとは何でもサポートし、地域のお客様から何でも相談され、頼りにされる会社になる。

〈社員にとって3年後にどんな会社になっているか〉まず最初に社員が働く幸せ、働くことそのものから得られる幸せが実感できる環境とする。

そういうことを実感できる環境を創る。それがあってその次に経済的な喜び。それらを両立できる会社とする。

〈自身にとって3年後にどんな会社になっているか〉今回の経営方針が、お客様にとって、社員にとって、そして地域社会にとって「正しかった」と言ってもらえるように、その評価=数値を以て結果を出す。

つまりは、しっかりと結果を出すことを自らの使命とする。という経営ビジョンを掲げました。

このビジョン実現のため、まず3年後の定性目標を設定し、さらに、年次ごとに落とし込んでいきます。

A社では、3年後の定性目標お客様から「価格」でなく「価値」で選ばれる会社となり地域の勝ち組へ!2年後の定性目標お客様へ最適な電化生活を提案し、至れり尽くせりな支援でA社のファンを増やしていこう!1年後の定性目標お客様のことを徹底して知り尽くす!(お客様の保有している電化製品を把握)といった具合に、3ヶ年のプロセスで定性目標のブレイクダウンを行いました。

続いて定量目標(数値指標)として、前述の定性目標を達成した時には「何の数字がどう変化しているだろうか」、「何を指標とすれば、定性目標が実現できているかどうかを測ることができるだろうか」と考えていきます。

例えば3年後の定性目標が実現できているとすれば、「『価格』でなくサービスの『価値』で選ばれている」状態にあるわけですから、この場合それが如実に現れるのは売上でなく粗利であるはずです。

従って定量目標としては、例えば、「3年後に粗利1億2800万円(現在8800万円)、粗利率32%(現在22%)を達成する」というものを設定し、2年後、1年後についても同様に、その年次の定性目標に応じた数値目標を定めていきます(図6)。

ちなみに、なぜ目標を粗利額にしたかというと、顧客からすれば「家電製品そのものはどの店で買っても同じ」であるからです。

提供できる価値が同じであるならば当然、より安価に提供する店が選ばれることとなり、このような状況では、売上が上がっても自社の粗利額は下がる一方です。

逆に、「当店でしかこの価値は得られない」という独自の価値をサービス面などから提供できており、顧客から評価されている状態なら、多少他店より高い値付けでも受け入れられるため、結果として粗利額が上昇すると考えられるのです。

3年後の定性・定量目標が具現化できたら、次は現状と見比べて、「何を改善していくべきか?」を明確にする必要があります。

これを「課題の抽出」と言います。

ここで注意しなければならないのは「問題」と「課題」の違いです。

「問題」と「課題」の定義には諸説ありますが、ここでは「問題」とは「あるべき姿と現状のギャップ」、もしくは「現在起こっている経営上のマイナス要素」とし、課題は「数ある問題の中で、改善インパクトがより強いものに対し、ギャップを埋める方策として自分で選択して設定するもの」と定義します。

家電店A社では当初、品揃えの少なさ、価格競争力の低さを憂慮していましたが、自社の3ヶ年の定性目標を上記のように設定したことで、「品揃えや価格差の解決」は問題ではあっても課題ではなくなり、「顧客に豊かな電化生活を提案できるようになること」こそ自社の課題と認識されるようになりました。

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