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◇自社の現金収支の構造を把握する

前項に挙げた「経営の3つの輪」のうち、「キャッシュの輪」をうまく回していくために、ここでは「資金繰り表」を作成し、自社の現金収支の構造を把握していきます。私は経営者にとって、この資金繰り表こそ最も重要な管理指標だと考えています。……と申し上げると何だか面倒くさそうだな、と思われるかもしれませんが、要は「手元にすぐ使える現金がどれだけ残っているか」を示すもので、以下に一般的な資金繰り表のフォーマット例を挙げている通り、収入と支出を項目別に整理して、年次、月次、週次、日次でしっかりと管理していくだけのものです。家計簿、もしくはお小遣い帳の要領で簡単に作成することができるでしょう。少々堅苦しくなりますがとても大事なことですので以下に詳しく説明します。①一般的な資金繰り表資金繰り表の形式は1つではありません。主な形式としては、次のようなものがあります。□4区分法…前月繰入、収入、支出、翌月繰越□6区分法…前月繰越、収入、支出、差引過不足、財務、翌月繰越□7区分法…前月繰越、収入、支出、差引過不足、財務、翌月繰越、主要勘定残高4区分法の資金繰り表は、最も単純な形式であり、小規模な事業者でも利用しやすいような項目立てとなっています。6区分法の資金繰り表では、営業活動による収入・支出と財務活動による収入・支出を区分すると共に、営業収入と営業支出の差額である差引過不足が示されています。7区分法の資金繰り表では、6区分法の資金繰り表に、月別の売上高、仕入高、受取手形、売掛金、棚卸資産、支払手形、買掛金等の主要勘定月末残高を載せています。この表を矛盾なく作成することができれば、相当な情報を得ることができるようになります(図16~18)。

初めにお金の流れ、「キャッシュの輪」があり、そこから得られた利益の配分を表す「利益の輪」があります。さらには自社の財務基盤をより強固にしていくための「B/S(バランスシート)安全性の輪」があります。これらを適切に制御していくことがポイントで、いつもいつもアクセルばかり踏みこんでいるのもだめですし、もちろん、ブレーキをかけてばかり、というのも好ましくありません。上手くバランスを取って無理なく成長していくことが、企業にとって重要なのです。このうち、経営者にとって特に重要なのは●現金収支の構造(お金の流れ)●損益構造(儲かっているか?)の2点となります。◇自社の現金収支の構造を把握する前項に挙げた「経営の3つの輪」のうち、「キャッシュの輪」をうまく回していくために、ここでは「資金繰り表」を作成し、自社の現金収支の構造を把握していきます。私は経営者にとって、この資金繰り表こそ最も重要な管理指標だと考えています。……と申し上げると何だか面倒くさそうだな、と思われるかもしれませんが、要は「手元にすぐ使える現金がどれだけ残っているか」を示すもので、以下に一般的な資金繰り表のフォーマット例を挙げている通り、収入と支出を項目別に整理して、年次、月次、週次、日次でしっかりと管理していくだけのものです。家計簿、もしくはお小遣い帳の要領で簡単に作成することができるでしょう。少々堅苦しくなりますがとても大事なことですので以下に詳しく説明します。①一般的な資金繰り表資金繰り表の形式は1つではありません。主な形式としては、次のようなものがあります。□4区分法…前月繰入、収入、支出、翌月繰越□6区分法…前月繰越、収入、支出、差引過不足、財務、翌月繰越□7区分法…前月繰越、収入、支出、差引過不足、財務、翌月繰越、主要勘定残高4区分法の資金繰り表は、最も単純な形式であり、小規模な事業者でも利用しやすいような項目立てとなっています。6区分法の資金繰り表では、営業活動による収入・支出と財務活動による収入・支出を区分すると共に、営業収入と営業支出の差額である差引過不足が示されています。7区分法の資金繰り表では、6区分法の資金繰り表に、月別の売上高、仕入高、受取手形、売掛金、棚卸資産、支払手形、買掛金等の主要勘定月末残高を載せています。この表を矛盾なく作成することができれば、相当な情報を得ることができるようになります(図16~18)。

②資金繰り表の各項目を知る資金繰りを管理するためには、売上や仕入等の本業に係る収支と、本業以外の取引に係る収支を区別して把握することが必要です。資金繰り表には前述の通り様々な形式がありますが、本業と本業以外に係る資金収支をそれぞれ区分したほうが望ましいことから、ここでは6区分法の資金繰り表を例に、表の見方を説明します(図19)。

営業収支過不足は、前月繰越+営業収入合計─営業支出合計で計算されます。この額がプラスになっていれば問題はありませんが、マイナスになっている場合には資金不足となるため、何らかの手当てを行う必要があります。当面の資金不足に対応するためには、例えば、売掛金や受取手形の回収促進、支払いの延期や経費の節減、不足資金についての新規借入、有価証券や遊休資産の売却等をはじめ、いくつかの方法を検討することができます。資金繰り表作成の流れ資料収集資金繰り表作成に必要な現金出納帳、普通預金出納帳、当座預金出納帳を用意する↓項目分類用意した3つの帳簿から必要項目を抜き出し、それぞれ多桁式出納帳に記入する↓集計3つの多桁式出納帳に集計する↓記入多桁式出納帳の合計を資金繰り表の該当項目に記入し、集計する③資金繰り表から今後の資金繰りを予測する資金繰り表の実績から、見積資金繰り表をつくり、今後の資金繰り状況を予測することもできます。見積資金繰り表を作成する目的としては、次のようなものがあります。借入予測……………次月繰越を見て借入時期を予測する見積精度向上………見積と実績を比較し見積の精度を上げる経営者への報告……経営者が今後の資金繰りについて把握する銀行への報告………銀行から借入をする際に提出する見積資金繰り表に記入する数字の中には、手形期日落の金額や借入金返済額等のようにあらかじめ把握できるものと、そうでないものとがあります。把握できない項目については、資金繰りの実績や担当者の意見を参考にしながら記入していくことになります。以下は、その際の留意点です。今までの実績から予測●最近3ヶ月の実績と前年同月の実績を参考にする●収入については平均実績の7~8割程度に見積る●支出は額面通りに見積る担当者にヒアリングして予測●収入は少なめに見積る資金繰り実績、担当者へのヒアリング等を参考に、以下のような見積資金繰り表を作成し、今後の資金繰りの予測に役立てます(図20)。

④資金繰り表のチェックポイント以下に、資金繰り表の主なチェックポイントをご紹介します。資金繰り表作成ミスのチェック□収入として計上しているものは確実か借入の銀行了解、手形のジャンプ要請の危険、売上収入の確実性等□支出の計上額に漏れはないか税金、配当金、賞与等資金繰り状況のチェック□営業収支過不足(前月繰越+営業収入合計─営業支出合計)がマイナスになっていないか□月中に資金ショートは起きないか月末の資金残高がプラスであっても月中の入金日と支払日の前後関係に注意(日繰り表によるチェック)分析項目のチェック□本業に係る資金収支を分析しているか収支がマイナスに陥っている部分はないか□見積と実績の資金繰り差異を分析しているか□資金繰り悪化の要因を分析しているか□中長期的な資金繰り改善策を検討・実行しているか以下、資金繰り表のチェックについて改めて重要ポイントをご説明すると、経営者にとって最も重要な部分は、「翌日への繰越金額」という項目です。これにより、自社では今日収入がいくらあり、支出がいくらあり、残高としていくらが翌日に繰り越されるか、という現金の流れを随時把握することができます。現金の流れを把握することで何がわかるかというと、月次では当月の月末、必要な支払いを済ませた後でどれだけの残高が見込まれるか、正確に予測できるようになります。この「資金の未来管理」が重要であり、例えば年末であれば、賞与などをすべて支払った後にいくらの残高が見込まれるのか、あるいは年次でも、今後万が一、景気の低迷などで経営が悪化した場合、今年の残高で1年後のマイナスをカバーできるのか?と考え、未来に備えた資金計画を行うことが可能になります。このような過去会計ならぬ「未来会計」を実践するには正確な残高予想が不可欠であり、そのためには資金繰り表が必要になる、というわけです。適切な資金計画によって常に手元の現預金が確保されている状態であれば、いかに不測の事態にあっても会社がつぶれることはありません。例えば生花店を例にとれば、季節指数的に売上のピークとなるのは夏のお盆と冬の年末、この2つの時期になります。生花店の仕入は支払いサイトが短く、ほぼ現金払いに近い状態ですので、万が一この時期に天候不順が起こり、仕入値が上昇したり、客足が鈍ってしまえば一気に資金繰りが悪化します。悪化したところで、「今月の支払いで500万円ショートするから資金を借り入れよう」と考えるのがドンブリ勘定です。一方、「年末年始は苦しくなりそうだな、万一天候不順になったら金策に走らなければならないだろうが、それでは営業面で機会ロスになってしまう。念のため500万円の借入を予めお願いしておこうか」と、1ヶ月前、2ヶ月前からきちんとした資金計画に基づき準備するというのが正しい会計思考です。こうすることで、経営者は年末の忙しい時期、資金繰りに頭を悩ませることなく、営業に全力投球することができます。せっかくの書き入れ時に、経営者が金策に走り回って営業が疎かになるのでは本末転倒です。このような事態を防ぐために、現金の流れを把握することが必要なのです。

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