◇経営ビジョンを策定するそれでは実際に、経営ビジョンを策定してみましょう。
自社が持続的な競争優位を築くためには、
●自社はどうありたいのか(What)
●自社はどこで戦うべきか(Where)
●自社はどうやって戦うべきか(How)を決めなければなりません。
さらに、これらを設定していくベースとして、
●事業の目的(理念・使命)
を明確にしておく必要があります。
以上を踏まえ、前述したように企業経営の基本的な姿勢として、
●何のために(理念)
●何を目標に(経営ビジョンの策定)
●どんな基準で行動するか(バリュー・行動指針)
を明確にしていきます。
ビジョンの策定に決まった方法はありません。
例えば、ソフトバンクを例に取ると、同社のホームページでは
●経営理念:情報革命で人々を幸せに
●ビジョン:世界の人々から最も必要とされる企業グループ
●バリュー(価値観・行動指針):努力って、楽しい。
と謳われています。
ソフトバンクグループの孫正義氏が、1981年、日本ソフトバンク創業間もない頃、まだアルバイト1名と24歳の孫氏、ただ2人だけの会社だったにもかかわらず、「売上を豆腐のように、『1丁(兆)、2丁(兆)』と数える企業になる!」と宣言されたのは有名な話です。
家庭用ゲームソフトの卸からスタートし、すぐに「Oh!PC」というパソコンソフトの情報誌を立ち上げ、その後はご承知の通り様々な事業に進出しては拡大。
24年後の2005年には、創業の言葉にあった通り、グループ連結で売上1兆円を達成しています。
コンピュータといえば小さいものでも机ほどのサイズがあり、1台何百万円もする時代に、「これからは個人がそれぞれに情報端末を所有し、それを活用することで暮らしをよりよくしていく」と予見した孫氏は、当時からこの「情報革命で人々を幸せに」という理念を掲げ、以来、道をそれたことがありません。
現在のパソコンに近いものが誕生すると、「これからはパソコンとパソコンがつながることで価値が生まれてくる」と考え、通信に進出。
ルータを無料で配布する奇抜な販促方法は物議を醸しましたが、実際にそれ以降、インターネットの利用は急速に拡大し、我々の生活は目を見張る変革を遂げました。
同じ通信の中でも有線から無線へと技術改革が行われると、携帯電話やスマホに情報革命の主役が移り、さらに現在ではIoT(モノに通信機能を付与し、情報管理するシステム、あるいは通信機能を付与された製品)にも進出されています。
IoTも、まさに「情報革命で人々を幸せに」する分野です。
製造機械の稼働状況を自動管理したり、高所で行われる危険な点検作業を無人化したりということも、IoTによって実現しました。
直近ではグーグルから複数のロボット会社を買い取っています。
この動きを表面だけ見れば、「なぜ出版社が携帯電話に進出?」、「なぜ携帯会社がロボット会社を買収?」と思いますが、孫氏はあくまでも「情報革命で人々を幸せに」という一貫した理念の流れの中で動いているのです。
ぶれがない。
ソフトバンクグループの事業ドメインをここで再定義するならば、彼らは「情報革命業」というわけです。
その実現のため、「世界の人々から最も必要とされる企業グループ」であろうとしているのです。
このように、経営ビジョン策定には経営者の強い意思に裏づけされた「自社のありたい姿」が最も重要であり、そこに正解などありません。
ただ、漠然と考えるよりは、
●数年後、自社は、「経営者である自分にとって」どんな会社になっているか
●同じく、「社員にとって」どんな会社になっているか
●「顧客にとって」どんな会社になっているかという視点からイメージしたほうがより具体的なものになるのではと思われます。
なお、ビジョンは社員1人ひとりにまで浸透してこそ、その真価を発揮するものです。
1度策定したらそれで終わり、ではなく、3年後5年後、一定期間ごとに、
●どこまで浸透しているか
●どこまで達成できているか
を検証し、うまくいかない要因は何かと仮説を立てては対策を打ち、「仮説」と「検証」を繰り返す中で着実に環境の変化に適応していきましょう。
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