最後に、やや気の早い話かもしれませんが、これから20年30年と読者の皆さんが経営を続けた後のお話、「次」の事業承継について触れさせていただきたいと思います。経営者としての出口は、次の図に示したように
- 株式上場(IPO)
- 事業承継(親族内後継者・親族外後継者)
- 第三者への譲渡(M&A)
- 転・廃業
の4つしかありません(図28)。
そして、ファミリービジネスにおいてはそのほとんどが、読者の皆さんの場合と同じく、親族内後継者への事業承継という道を辿ろうとします。
幼い頃から自分たちの生活を支える家業に感謝し、関心を持ち、その社会的価値ややりがいを、懸命に仕事に打ち込む「現経営者」の生き様を通じ学んでいる親族内後継者ほど、後継者の資質に富む存在はまず見当たらないからです。
そのように、我が子へ、あるいは兄弟その他の親族へ自社の経営をバトンタッチするその時を、今からお考えいただきたいのです。
「後継者の育成は経営者にとって最後の大仕事である」と言われます。
しかし、皆さんが喜びとやりがいを以て事業に打ち込み、結果として魅力的な会社をつくり上げることに成功したならば、特段のことをしなくてもその後継者は経営者の背中を見て育つ中で、経営者とはいかにあるべきかを学び、「自分も父親と同じ仕事に就いてみたい」、「ぜひ自分に後を継がせてほしい」と望むようになるでしょう。
一方、もし後継者が経営者の背中を見てただ「大変そうだな」、「つまらなそう」、「苦しそう」としか思えない状況であれば、そんな会社は誰も継ぎたいとは思えないでしょう。
経営者自身も、「こんな苦労、我が子にはさせたくない」と考え、事業承継を希望しないかもしれません。
前項では経営者が夢に向かって必ず実現するとの覚悟を決め、率先して取り組んでいく行動こそ経営者自身の、そしてその会社の魅力、求心力につながるのだと書きました。
後継者に対しても同じことが言えます。
夢に向かって、そしてあるべき理想の姿に向かって突き進み、会社の魅力をいかに高めていくか、自分なりのゴールを考えていただきたいのです。
これから事業承継を迎える方も、社長に就任されたばかりの方も、それぞれに後継者として、いろいろなお悩みをお持ちのことと思います。
しかし問題が山積しているのは、ビジョンのある経営者にとって、悪いこととは言い切れません。理想があるからこそ、現状とのギャップが問題として見えているのです。
今自社に対して、経営という仕事に関して、感じていること、不満に思っていることをいかに次に活かすか。
今から「次」の事業承継を念頭に、ゴーイングコンサーンたる道を、目指していただきたいと思います。
本書でご紹介した戦略的中期経営計画が、皆様方にとってその理念実現へのロードマップとなるなら、これにまさる喜びはありません。
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