経営ビジョン達成までの進捗プロセスを年次ごとの目標にまで落とし込んだ後は、その目標(定性目標・定量目標)を実現するために、具体的に「誰に(勝負する市場と対象を決める)」「何をどのように販売する(他社との商品・サービスの差別化を図る)」ことで売上や利益を上げていくかという「戦略目標」を考えていきます。
企業を取り巻く様々な外部環境の変化や取引先・消費者のニーズの変化、同業者との競争激化などを十分検討し、それらの変化にいかに適応するかとの視点で戦略目標を設定していきましょう。
ここでは、事業展開を考える上でしばしば活用される2つのフレームワーク、「STP」と「4P」について解説します。
「STP」とは、マーケティング論の権威、P・コトラーが「効果的に市場を開拓するためのマーケティング手法」として紹介しているもので、市場における自社の競争優位性を確保するために、
- ●市場を細分化して(Segmentation)
- ●ターゲット層を抽出し(Targeting)
- ●ターゲット層に対する競争優位性を設定する(Positioning)
手法です。
これら3項目の頭文字をとり、「STP」と称します。
まず「セグメンテーション」では、今後自社が特に力を入れてアプローチしていく対象を明確にするために、次の4つの視点をもとに市場を細分化していきます。
- ●人口(年齢、性別、家族構成、職業)
- ●地理(地域、住まい、行動範囲)
- ●社会心理(ライフスタイル、価値観、購買動機)
- ●行動(購買活動、購買心理)
次に「ターゲティング」では、上述のように細分化した市場の中で、自社にとって最も魅力的な市場を選定し、戦うべき場所として決定します。
選定においては各市場動向や規模、有効と考えられる自社の強み、製品のライフサイクル、競合他社の戦略などを踏まえていきます。
そして最後の「ポジショニング」では、競合他社との違いを顧客にアピールするため、自社の独自性や競争優位性を明確にします。
顧客に対し、何を提供すれば自社の商品やサービスを価値あるものと認識してもらえるか、という「提供価値」を定義づけるのです。
この「STP」を通じて、3年後の自社のメイン顧客は誰か、その顧客にいかなる価値を提供していくのかを決定します。
例えば、前項で用いた家電店A社の事例では、3年後に「お客様から『価格』ではなく『価値』で選ばれる会社となり地域の勝ち組へ!」との定性目標を設定していました。
その実現のために自社が競争優位性を確保できる、「勝てる」ターゲットを、今後一層の増加が見込まれるシルバー層、中でも日常生活の移動範囲が狭く、生活に悩みを抱えている方と定めました。
単に家電製品を販売するだけでなく、大手が真似できないきめ細かなサービスを通じ、その悩みを解決することを「価値」と考えたのです(図7)。
こうして「STP」マーケティングにより、今後集中してリソースを割いていくべき勝負の場・ターゲットセグメントを決定した後は、勝負すべき商品・サービスを開発していきます。
その開発方針を決めるのがマーケティング・ミックスのステップで、以下の「4P」を基に考えていきます。
「4P」とは
- ●製品(Product)
- ●価格(Price)
- ●流通(Place)
- ●プロモーション(Promotion)
の頭文字をとった名称で、対象顧客に合わせ製品開発からプロモーションまでの一連のマーケティングを考察していくためのフレームワークです。
初めの「製品」では製品やサービスの内容や品質、デザイン、ブランド等、自社のターゲット顧客からはどのようなものが支持されるかを検討し、次の「価格」では、競合企業の動向や消費者心理、原価と比較しながら価格決定を行います。
高すぎる価格では売れず、安すぎては売れども儲からないという状態になってしまうため、特に慎重に設定していきます。
また、「流通」とは製品の製造から最終消費者までの流通経路のことで、取引の流れを整理し、最も適した形を改めて考えていきます。
最後の「プロモーション」では、主に広告、販売促進方法など、顧客に商品・サービスの価値を「届ける」手法を考察します。
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