ここまで、「戦略的中期経営計画」の策定について説明してきました。
とはいえ、「ビジョンや経営計画を策定しても計画通りに進んだことがない……そんなのやる意味あるの?」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、社内で「経営計画を作成しよう」と呼びかけると、必ずと言っていいほどそのような意見が出てきます。
そこで全社を挙げてこの体質改善が確実に推進していくように、計画を立てたら必ず、仕組みとして計画が実施されていくような「推進体制」を築いていかねばなりません。
具体的には、例えば、1ヶ月に1度とか3ヶ月に1度の単位で戦略的中期経営計画のレビュー(進捗管理と軌道修正)を現場管理者に対し、施す必要があります。
また、事業レベルにおいては、現場管理者が個々の事業に属する社員に対して同じようなレビューを一定期間ごとに行う必要があります。
このようなレビューが繰り返されていれば、世の中の環境がどのように変化しようともその環境に適合した経営計画の微調整(微修正)が常に行われていくことになります。
これは極めて重要なポイントです。計画と現実とのギャップは、まま起こり得るものです。ギャップがあった=失敗だということではありません。
重要なのは、それぞれの事業においてなぜギャップが発生しているのか、その要因を突き詰め、随時軌道修正していくことです。
この考察を繰り返すことによって、計画の精度はより高められていくのです。
経営者の能力は、日々の経営においてどれだけの「仮説」を立て、実際の行動によってどれだけ「検証」してきたか、その「量」と、試行錯誤を繰り返す、即ちPDCAサイクルを回す「スピード」によって高められていきます(図26)。
同様に戦略的中期経営計画も、的確な検証を随時、そして繰り返し行っていくのがポイントです。
そもそも、戦略的中期経営計画とは向こう3~5年を見通して策定するものですが、それをアクションレベルまで落とし込んだ具体的な実行計画は今後1年分が中心となります。
1年経ったらまた再評価し、そこから再び向こう3~5年間の経営計画を策定します。
つまり、毎年毎年、繰り返し繰り返し、「ローリング・プラン」でつくっていくわけです(図27)。
逆にアクションプランも作成せず、ただ3年後、5年後の数値計画だけ独り歩きさせ、その達成だけに固執してしまうようなら、そんなものは立てないほうがましです。
繰り返しますが「数値」とは、自らの仕事を通じて創意工夫した結果、お客様から得られた「評価」に過ぎません。決して、それを「目的」にしてしまわないように留意すべきでしょう。
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