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◇小が大に勝つ~中小企業の経営戦略~

この記事でわかること

ここまでご説明してきた経営戦略の立案方法はごく基本的なものであり、どんな企業にもご活用いただけるものです。ただし経営資源の限られた中小企業の場合、大手と全く同じ戦い方をして勝てるものではありません。

中小企業ではむしろ、極力「戦わない」選択をすることこそ優れた戦略と言えます。ここでは特に、中小企業が経営戦略を考える際の留意点をご紹介していきます。

古くはポーターの「競争戦略論」に遡りますが、競争戦略の本質とは、ライバルとの競争を避けるための戦略、いわば守りの戦略を指します。

一見矛盾する言い回しのようですが、ポーターの競争戦略とは「競争しない戦略」であり、「真正面から競争する」ための戦略ではないということです。

つまり、なるべく競争の少ない産業を選び、ライバルとは異なるポジションを取ることにより、真正面から戦わずに済み、結果としてオンリーワンとなり、持続的な競争優位性が得られる、という主張です。

この「競争しない戦略」こそ中小企業の経営戦略における基本的な考え方です。競合企業と真正面からぶつかるのでなく、視点を変えて競争しない分野で勝負する。自社にとって有利な分野を選び、そこに持てるリソースを集中して投下します。

そのためには、勝負すべき分野を慎重に選び、他は捨てる覚悟も時には必要です。

中小企業のための3つの競争原則

  • ●NO.1主義
  • ●競争目標と攻撃目標の分離
  • ●一点集中主義

ここに挙げる「中小企業のための3つの競争原則」がその、取捨選択を行うふるいとなります。

まず「NO.1主義」とは、2位を射程距離圏外にまで引き離す、圧倒的1位となれる分野を選択していくということです。

ただの1位でなく圧倒的な1位です。

よく言われるように、「日本で最も高い山」といえば誰でも富士山を挙げますが、2番目に高い山の名はそこまで知られていません。そのように顧客の意識に「○○といえば自社」と刻まれている状態を目指します。

なかなかそんな分野が見出せない場合はビジネス領域を細分化し、

  • ●地域(エリア)で1位となる
  • ●ある顧客層における1位となる
  • ●ある商品分野で1位となる

という順に考えていき、部分(ニッチマーケット)における圧倒的1位を目指します。

次に「競争目標と攻撃目標の分離」とは、「自社とシェア率で同ランク、もしくは上位の競合相手を意識した目標(競争目標)」と、「自社より下位の相手を意識した目標(攻撃目標)」を分けるということです。

既に自社が強者=NO.1企業となれる市場を選んでいるので、攻撃目標は「足下の敵=自社の1ランク下になる企業」におき、「ミート戦略(模倣戦略)」を採ります。

相手の動きが自社にとって脅威になり得ると判断すれば後追いでも模倣戦略を採り、自社のシェア率の強みを活かして一気に展開するのです(自社が弱者の立場なら逆に、強者が到底真似のできない差別化を図るか、強者にとって旨味のないニッチ市場に参入することで、「競争しない環境」を自ら構築していきます)。

最後の「一点集中主義」とはそのままの意ですが、経営者にとって、実はこれほど難しいことはありません。「一点に集中する」とは「他を捨てる」ということです。

それにより、社内外で軋轢が生じたり、従来の商習慣を見直さねばならない場面も出てくるでしょう。戦略とは諦めることでもあります。最後は決断力。決断力をつけるために戦略を学ばなければなりません。

いかに腹をくくってやりぬくか、その経営者の勇気と決断力が鍵となるのです。

このように「勝ち易きに勝つ」精神で集中していくべき部分を選び、どこ(地域)の、誰(顧客)に、何(商品)を、という視点で絞り込んでいきます。

なお、これまで何度か事例に用いている家電店A社の戦略をこの「3つの競争原則」に基づいて整理すると前の図8のようになります。

このように、自社の強みを把握し、小さくとも「自社の主戦場(市場)」を選ぶこと、その中で他の追随を許さない、徹底した「差別化」を図り圧倒的な「NO.1」となる方策を考えることが中小企業の戦略のポイントです。

実はここまで述べてきた小が大に勝つ戦略とは、「ランチェスター戦略」に基づいたものです。本書でも別途コラムで簡単に解説していますが、機会があればぜひ、関連の書籍をお読みになることをお勧めします。

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