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事業ドメインの再定義

この記事でわかること

経営ビジョンとは、長期的視点に立って自社の目的や使命、顧客や社会に提供すべき価値などの「あるべき姿」を明らかにしたものであり、企業理念の実現のため、

具体的に

  • ●自社の中核能力(コア・コンピタンス)を活用して
  • ●いかなる戦略、戦術を
  • ●いかなる目標、いかなる行動規範を以て実践していくか

を社の内外に向け、明確に示すものです。

ここまで、自社の企業理念や強み、自社の本当の商品について検討していただきましたが、それらがすべて同じ方向を向いているなら、それが今後の進むべき道と考えて間違いありません。

改めて「自社は何業であるか、誰に対していかなる価値を、どのように提供することで顧客満足を追求していくのか」といった事業ドメインを再定義し、首尾一貫した経営ビジョンを策定していくのです。

事例:はせがわ酒店はせがわ酒店(東京都)は1960年創業の家族経営の酒店でした。当初は経営も安定していましたが、1980年には年商3000万円と低迷。

規制緩和の影響で、台頭するディスカウントショップとの価格競争に巻き込まれてしまったのです。

仕入においてスケールメリットが発揮できない個人商店が大手チェーンと競合しても勝ち目がなく、同店は事業承継を機に、「近隣で誰もが売っていないものを売る」ことに方針転換。

たまたま地方の酒蔵でつくられた旨い地酒に出会ったことから、「まだ東京で知られていない、美味しい日本酒を売ろう」と考えつきました。

日本酒やワイン等、特定の分野に特化して差別化を図る酒販店は増えていますが、同店はそのはしりであったと言えます。

が、地酒はそもそも生産量が少なくほとんどが地元で消費されるため、仕入は困難でした。

直接個別の酒蔵に足を運び、直談判する中で日本全国には3000もの酒蔵があると知った後は、自分の足と舌でこれぞという酒蔵を開拓し、その魅力を発信していく「日本酒伝道師」となることを自らの使命とし、毎年200蔵を訪問。

現在では東京スカイツリー店など都内7店舗を展開、2018年6月期には単体で35億円、グループで48億円の売上を上げています。

はせがわ酒店の事例は中小企業が事業ドメインを再定義し、確固とした経営ビジョンのもとに改革を実現したお手本のような事例ですので、ご存知の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

知る人ぞ知る、しかし一般にはあまり知られていない地方の銘酒を、もっと東京の消費者に味わってほしい、その情熱を以て造り手と会い、造り手の想いと共に発信していく。

その努力が「はせがわ酒店に行けば他にない、美味しい日本酒が手に入る」との評価につながっています。

事例:株式会社セルコ株式会社セルコ(長野県)は1970年創業のコイル製造業。

コイルとは銅線を筒状に巻くことで電流をエネルギーに変える電子部品です。

かつては1つひとつ手巻きでつくられており、手間の割に安価なため、無数の零細業者が生産の担い手となっていました。

そんな中、セルコは大手プリンターメーカーの下請けとして順調に成長を続け、ピーク時には3工場が稼働、120名で月間数百万個のコイルを製造していました。

しかし80年代より親会社が海外へ工場を移転したため同社の業務は激減。

社員は13名にまで落ち込みました。

それまで親会社の指導により生産管理や品質管理に力を入れていたことから、高いコイル製造技術を有する同社は、その競争力を活かすべく自社を「コイル&コイル周辺技術のソリューションパートナー業」として活動を開始します。

国内大手メーカーの開発担当へ特殊コイルの試作を請け負うと営業し、取引先の課題を技術で解決していくことを徹底。

結果、特殊コイルにおいては他の追随を許さないレベルまで技術力を高め、「高付加価値コイルならセルコ」と発注側から指名されるまでになりました。

さらには内科医との共同研究により、外部の静電気や電磁波を取り除き、生体電流の流れをスムーズにするコイル「セルパップ」を開発、完成品メーカーとなることが実現しました。

大手企業の下請けというポジションは、少数の顧客から売上の大半を上げられるという点で効率的なのですが、反面、営業基盤としては脆弱で、1度顧客の業績が悪化すると価格引き下げ要請に対抗できずこちらの財務内容まで悪化させたり、顧客の廃業や海外移転によって大きな打撃を受けることになります。

自社の属する業界、もしくは市場が成熟~衰退期にある場合、状況が好転することはありえませんので、早急に自社の事業ドメインを見直し、新たな市場を切り拓く、成長産業へシフトする、などの対策を打たねばなりません。

確固たる経営ビジョンのある会社は、苦境にあってもそれを確固たる経営の軸とすることができますので、ぶれることがありません。

また、「自社の本当の商品は何か」を社員に伝えることは、「自分たちはこの方向に進むんだ」、「自分たちはこのようにしてお客様に喜んでいただくんだ」という具体的なイメージを社員に持たせることですので、

●方向性が明らかであることから1つにまとまりやすくなり

●やりがいがモチベーションアップにつながり

●「そのために自分は何をすべきか」、「自分のやっていることはビジョンに合ったものか、顧客のためになっているだろうか」と各人が自分の業務について考え始める

という効果が得られます。

人は誰でも、顧客に喜ばれた、顧客に感謝されたという体験に最もやりがいを感じるものです。

そもそも、山登りに際しどんな山に登ろうとしているか、山の名前も高さも、ルートも何も知らされていない状況では、ただリーダーについて来いと言われてもなかなか登っていけません。

苦しい山道で先が見えない状況では、途中で脱落してしまうかもしれません。

一緒に登っていく仲間のためにも、経営ビジョン=希望を共有することが不可欠なのです。

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