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▼(7)計数計画の作り方

計数計画を立案するのに、図表4-7にあるように、①システム・データ面、②管理責任面、③計数の作り方面のように大きく3つの論点があります。

①システム・データ面については、専用のパッケージソフトを活用する方法と年度単位の予算システムを応用する方法、損益計算書やバランスシートのような財務諸表から出発する方法と3通りがあり得ます。

パッケージソフトについては、一度あるクライアントで使おうとしたのですが、使い勝手が悪くうまくいきませんでした。

このため、お勧めとしては予算システムの応用か、財務諸表の引き伸ばし法がよいでしょう。

②管理責任面については、事業部の数値については、事業部が責任を負い、経費については、本社の経費主担当が責任を負う方法がよいでしょう。

③計数の作り方面については、⒜予測方式、⒝積み上げ方式、⒞逆引き方式と⒟⒜~⒞の組み合わせがありえますが、各社の実情に応じて応用してもらえればと思います。

活動計画が先に作られていれば、計数計画でいじる部分は相対的に少なくなり、比較的短時間で作成することができます。

これは私が指導した実績からもいえることなので、心配しないで取り組んでもらえればと思います。

①計数計画策定ステップの事例図表4-8の事例は、小売業での計数計画作成ステップの例です。

手順としては、⒜標準となるベースの計数作りを行った上で⒝バリエーション設定を行い、⒞見直し&シミュレーションを行います。

⒜ベース計数作りまず企画部署サイドで進め方と前提条件(為替レートや対前年伸び率等)を決めます。

小売業では店舗展開が基本となりますので、店舗ごとのフォーマットや規模に応じて類別を行い、店舗の出店や閉店計画を立て、「食品部門を強化する」「衣料品部門を縮小する」などのように商品の部門構成や展開方針を決めます。

フロア面積や商品点数(アイテム数)等各小売業で使われている基準を使用するとよいでしょう。

その後人件費などの経費展開を行い、それらを総合して基準となる損益計算書を作ります。

計数は、予算システム等を使って初年度1年分を作成し、Excel等の表計算ソフトに計数データを吐き出し、そのうえで前提とした伸張率等を基に2年目、3年目分を追加して3カ年の基準計数計画とする方法と、予算システムなどを使用しないで最初からExcelデータを作成して取り組む方法とがあります。

各データは、売上高に応じて変動する変動費や変動が少ない店舗の賃借料等固定費、営業時間などに応じて変動する水道光熱費などの準変動費等費用の性格によって変えられるように条件設定しておくと便利です。

また、Excel等で作成・シミュレーションする際には、目的とする財務諸表だけでなく目標とする経営目標や財務指標(例:売上高、営業利益率、ROAやROE、D/Eレシオ等)も同時に算出できるように計算式を組み込んでおくとよいでしょう。

⒝バリエーション設定売上が伸張するMAXケースやダウンするMINケース、原価低減を進めるケースや効率化を進めるケースなど、何通りかのあり得るバリエーション設定を行い、試算します。

Excelベースであれば、試算結果をシートないしファイルに分けて保存することでケース結果とその内訳を取っておくことができます。

新たなケース設定に連動して他の変数も変えられるようなアルゴリズム(手順を形式化したもの)を作り、マクロのプログラムとして使う方法もあります。

ただし、あまり手の込んだものを作ると、他の人がいじれなくなり、特定の人しか操作のできないものになりかねないので、注意が必要です。

⒞見直し&シミュレーションベースとバリエーションの試算結果を受けて、前提条件設定や店舗展開、商品展開の見直し等を行い、当初の経営目標に到達可能か、あるいは前提条件と展開方針と活動計画との整合性や妥当性があるかを確認して、いったん、第一次の試算結果として報告します。

この後は、経営会議等のしかるべき会議にかけるなどの会社で求められた手順に従って検討と見直しを行っていき、確認が取れたら最終化します。

その際に注意したいのが、「何を変えるとどこに影響を与えるか」ということをきちんと理解し、データと論理の整合性がきちんととれるようにしてあるかということです。

PowerPointの表形式では計算式が入れられませんので、一度ある数字を直すと他の数字も手直しの必要がでてきてしまい大変です。

数字と表計算ソフトの扱いが得意な人の助力を得るようにした方がよいでしょう。

②計数計画の成果物計数計画の成果物については、売上利益計画、投資計画、人員計画、資金計画等があります。

ベースは売上利益計画なので、それらから順に作っていくといいと思います。

投資計画についても、活動計画が具体化されていれば、それに基づいた投資計画が年度別に立てられます。

中期経営計画の計数計画用のExcelのワークシートは、拙著『中期経営計画の立て方・使い方』付属のCDROMに収録されていますので、そちらを参考にしていただければ幸いです(以下一例)。

図表4-9全社利益計画(売上・原価・販管費・利益)の書式例図表4-10キャッシュフロー計算書方式による全社資金計画表の例

③投資回収計算設備投資には、⒜拡張投資や⒝取り替え投資、⒞製品・サービス投資、⒟その他投資などがありますが、「投資が回収できるか」という、いわゆる「経済性計算」の対象となるのは、⒜~⒞の3種類です。

設備投資や新規事業の投資回収計算は、教科書的には、正味現在価値法(NPV:NetPresentValue)や内部収益率法(IRR:InternalRateofReturn)等がありますが、実際にはいまだにキャッシュフローベースではなく、会計上の利益計算ベースで試算しているところが多いようです。

国内だけや社内だけの範囲で議論している間はそれでも通るのですが、海外や海外企業とやりとりをする際には、今紹介したような手法を使う必要があります。

◆設備投資のキャッシュフローを用いた評価方法~正味現在価値法の例示(図表4-11)

正味現在価値法では、まず前提としてキャッシュフローで計算します。

そして、初期投資と将来のキャッシュフローを0年度(初期投資を行う年度)時点の現在価値に直して差し引き計算します。

「現在価値」とは、お金の時間価値を考慮することになりますので、今年の百万円と来年の百万円とでは価値が違うという前提に立ちます。

どの程度違うかについては、企業では、単純に金利ではなく、「資本コスト分違う」という考え方を取ります。

つまり、「今年手元にある百万円を事業につぎ込んだら、来年には、百万円+資本コスト分以上になっていなければならない」ということです。

なお、「資本コスト」とは、バランスシートを維持するために必要なコストのことで、金利などの負債にかかるコストと、株主が所有する株主資本コストとの合計となります。

この資本コスト率(例:5%)を使って、将来のキャッシュフローを複利計算で割り引くのです。

そうして出された将来のキャッシュフローの割引現在価値と初期投資との差を算出し、プラスが出ていれば、「投資価値あり」と判断することになります。

昨今では、Excelの関数になっているものもありますので、考え方と見方がわかっていれば計算できるようになっています。

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