経営目標の設定方法には、
- ①ビジョンリード型
- ②目標達成型
- ③積み上げ型
- ④成り行き型
の4種類があります(図表2-9)。
おすすめなのは、経営ビジョンと経営目標を整合性をとって打ち出す
- ①ビジョンリード型ですが、実際にはビジョンを持ち出さないで経営目標だけを打ち出す
- ②目標達成型や、事業部の見込み値を足し算する
- ③積み上げ型
の企業が多いように見受けられます。
④成り行き型は論外としても、③積み上げ型では経営者の志が感じられませんし、②目標達成型では目標の意味・意義が伝わりにくく、訴求力のない経営目標となってしまいます。
ここで、目標の立て方について少しお話をします。
成り行き目標がなぜいけないかというと、「成り行き」とは「このまま行けば」ということなので、新たな努力をしないことになってしまいます。
一方、競合他社は虎視眈々と市場や顧客を狙っていますから、「成り行き」でやっているとジリ貧となってしまいます。
世の中は競争社会ですから、高い目標を持って日々努力する者が報われます。ですから、会社も個人も、今のままではできそうにない高い目標を設定して努力を続ける必要があるのです。
ではどのレベルの目標がいいのでしょうか。ここでは、3段階で考えてみるといいと思います。
図表2-10に示すように、上から
- ①最高の目標
- ②標準の目標
- ③絶対に達成できる目標
の3段階があります。
目標は混乱や誤解を避けるため最終的には1つに絞る必要がありますが、それには検討する順番が重要です。
一見すると最高の目標から入るのがよいように見えますが、一概にはそうとは言えません。
個人の場合であれば気が大きい人は最高の目標から入っても差し支えないのですが、組織や集団の場合、目標を提示した際にメンバーに与える心理的な影響を考慮に入れる必要があります。
いきなりあまりに高い目標を提示されると、普通の人はおじけづきます。
そして、失敗を恐れて実力すら発揮できなくなります。
ですから、大勢の人を対象にするのであれば、まず③絶対にできる目標から入って心を落ち着かせ、その上で①最高の目標を提示してやる気を出させ、最終的には時の運もありますから、リスクも考慮に入れて②標準目標に落ち着かせます。
このように、心理的影響というものを考慮に入れて目標を設定するとよいでしょう。
私が目標設定を指導する場合は、経営ビジョンで述べたように、まず10年後の経営目標から検討します。
そしてそれを中期計画の3年後に引き戻します。
こうすることで、フォーキャスティング型発想の人にもバックキャスティング型発想をする機会を与えられます。
経営目標は、会社全体の目標とその内訳としての事業別の目標を併せて検討します。
その際に、アンゾフのマトリックスで検討したセグメント別の売上高目標を参考にして設定します。
なお、経営者の通知表は財務諸表ですから、売上や利益だけでなく、バランスシートやキャッシュフロー計算書のことも考えておく必要があります。
具体的には、ビジネス環境分析パートの自社経営資源分析で紹介した図表1-7にあるように、3年後の主要な経営指標を、損益計算書系のものと貸借対照表系のものと、キャッシュフロー計算書系のものにそれぞれ分けつつ、かつ整合性をとりながら目標設定するとよいでしょう。
最近では、コーポレートガバナンスコードによって資本効率目標が求められるようになっています。
具体的には、ROAやROE等の指標の目標値で示します。
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