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▼(4)中期経営計画と予算のフォロー(進捗管理)方法

先に触れましたが、中期経営計画は「フォローを行わないでいると、忘れられてしまうもの」です。

中期経営計画についてフォローを行うべき項目は、図表6-6のように①経営目標、②計数計画、③KPI、④活動計画の4種類となります。

経営目標と計数計画は、おおむね財務数値であることが多いため、そのまま運営していても財務実績が上がってくるためにフォローが可能ですが、KPIと活動計画は、あらかじめフォローができるように作っておく必要があります。

例えば、KPIは戦略的に重要な指標を設定するものですが、通常の情報システムではそのデータが取れないことがあります。

例えば、流通業での接客率などは、接客担当者がデータを入れない限り取得できません。

とはいえ、それが重要な指標であれば手作業ででも取る必要が出てきます(私が指導した企業でも、手作業でやってもらったケースがあります)。

ただし、継続的にかつ自動で取れる必要があるものであれば、中長期の施策としてシステム化することも検討対象となり得るでしょう。

一方、活動計画は、フォロー(進捗管理)を行うには「誰がいつまでに何をやり遂げる必要があり、それをどうやって把握するか」ということをあらかじめ決めておかないと、フォローができません。

ですから、前述のように、活動計画を半期ごとなどの区切りをつけて作成しておき、半年ごとに計画どおり取り組みが行われたか、その成果が出たかを確認する必要があります。

①PDCAの行い方経営目標、計数計画、KPI、活動計画の4要素をフォローしていくには、図表6-7に示すように「Plan」「Do」「Check」「Action」のサイクル(PDCAサイクル)の中で連動して捉えていけるようにする必要があります。

具体的には、計数予算作成に合わせて、活動計画立案とKPI設定を行い、月次の進捗会議で、その3つの進捗状況を確認できるようにする、ということです。

②KPIの設定と見直し中期経営計画の策定時点でKPIの設定を行い運用しますが、データが取りにくかったり、KPIそのものが適切な指標でなかったことなどにより、見直しが必要になることがあります。

KPIは戦略の遂行や業績の先行指標などになるものですが、最初に設定したKPIを金科玉条のごとく守り通そうとすると無理が生じることがありますので、目的に沿って適宜見直しを行うようにしましょう。

KPIの見直しとそれを達成するための施策の見直しの関係は、図表6-8に示すように、「KPIが適切か」「データが取れるか/運用できるか」、そして「活動計画としての施策が適切か/実行したか/成果が出たか」というように枝分かれして対応が分かれていきますので、参考にしてください。

③PDCAのレベルPDCAの取り組み方については、図表6-9に示すようなレベル感があると考えます。

・レベル1:予算としての計数計画を作っても、活動計画を作らず、計数の進捗管理のみを行うレベル。

このレベルでは、売上・利益などの数字が毎月達成しているかということだけ議論される・レベル2:計数の差異分析までを行う。

予算と実績で差異の出た部分を分析し、何処に差異が大きかったかが議論される・レベル3:差異分析の結果、当月ないし次月以降の修正行動が議論され、指示されるレベル・レベル4:計数計画だけでなく活動計画も作成され、計数の差異が活動計画と紐付けられて議論され、活動計画の見直しや修正行動が行われるレベル・レベル5:計数計画・活動計画に加えてKPIが設定され、三者の関係が分析され、適宜活動計画の見直しやKPIの見直しが行われるレベル・レベル6:レベル5のPDCAが継続的に行われることにより、だんだんとマネジメント(経営管理)が進化していく最上位のレベル最上位のレベル6に到達すると、改善や改革が進み、会社がどんどんよくなっていきます。

本書で推奨しているのはレベル5ですが、世の中の多くの会社は、レベル3程度(計数計画しか作らず、活動計画やKPIがない状態)にとどまっているようです。

新しい中期経営計画の策定とともに、PDCAの行い方も改めて見直してはどうでしょうか。

④予実差の分析の視点予算や計画と実績の分析を行う際には、図表6-10に示すように、予算達成度Bに対してその要因を因数分解して捉えることで、適切な対応策・修正行動につなげられます。

要因は環境要因(E)、活動計画要因(C)、KPI要因(K)に分けて捉えます。

例えば、特定顧客の工場の稼働率が高いことを前提に予算を立てていたものの、それが下がったことによって未達成となるような場合には、環境要因(E)がマイナスに働いたと捉えられます。

また、新規顧客開拓活動を予定していたにもかかわらず、既存顧客のトラブル対応で実行できなかった場合は、活動計画要因(C)がマイナスに働いたことになります。

さらに、新規顧客の口座をKPI設定どおり取ったものの、その分の予算が未達成であった場合、KPI設定(K)が不適切であった可能性がありますので、必要に応じてKPIの見直しを行います。

このように、3つの要因に分けて予実差異を分析すると、より適切な対応策(M)が導き出されます。

ある商社でこのように因数分解して取り組んだことがありますが、支店別のPDCAがより適切に回るようになり、予算達成度がアップしました。

世の中の多くの会社は、計数計画だけを立てて、個々人の思い付きの活動計画を場当たり的なマネジメントで実施していることが多いように見受けられます。

計数計画だけでなく、それを達成するための活動計画とそのパフォーマンスを表すKPIを設定し、三位一体のPDCAができるようになって、マネジメントを進化させていってもらいたいと思います。

⑤中期経営計画のフォロー分野中期経営計画でフォローを行うべき分野は、図表6-11に示したように「年度の予実のフォロー」「新規の取り組み(問題解決型課題への取り組み・ビジョン達成型課題への取り組み)のフォロー」「PDCA方法自体のブラッシュアップ」「その他テーマ(必要に応じて)」の4系統に分かれます。

特に、「新規の取り組み(問題解決型課題への取り組み)」については、通常の業務を行いながら兼務で取り組む人が多いため、そのままにしておくと通常業務にとらわれすぎて一向にはかどらないということが起こります。

新しい取り組みを成功させるには、図表6-12にあるような8つの要件を整える必要があります。

ここで最も重要なのは、「コミットメントとオーナーシップ」です。

トップ自身がやる気を出さなければ誰も実行しようとしません。

また、兼務で取り組ませる場合には「体制整備・リソース確保」も重要事項です。

リーダーを含めたしっかりした体制の整備とメンバーの時間確保は欠かせません。

「早期成果出し」も重要な要素の一つです。

新しい取り組みの成果がなかなか出ないでいると、その取り組みの要否に疑念が湧いてきます。

そうすると、足取りが鈍ったり、内部で意見対立が起こるなどして思うように進まなくなります。

上に立つ人、あるいはリーダーとなる人は、そうしたことをよく理解して、新しい取り組みに立ち向かう必要があります。

このように、4分野について適切かつ円滑なフォローに行うには、中期経営計画策定の時点で、どのようなフォロー体制をとるのかをあらかじめ決めておかなければなりません。

まとめ今回、中期経営計画の策定プロセスを、山本電機はビジネス環境分析パートから始め、大和貿易はビジョン設定パートから始めるというストーリーでご紹介しました。

それぞれのタイプで進める際に出くわす問題点やその対応策もある程度ご理解いただけたと思います。

一方、策定プロセスにおいて、社内の事業部門との関わり方でいうと、まず事業部からたたき台を出させる①集約・積上型と、上から方針や目標を出して事業部に振り分ける②目標提示割振り型とがあります。

①集約・積上型の場合、事業部からは達成が容易な低い目標が出てくることが多くなることと、事業部間関連の考え方が弱くなるという弊害があります。

②目標提示割振り型は、ある程度経営の意向は反映させやすいですが、事業部の実態と乖離したり、目標設定における事業部の自主性・自発性を削いだりするおそれがあります。

このため、上下左右で意見交換を行い、全社的視点でビジョンや戦略が共有されている③ビジョン・戦略共有型となることが望ましい姿です。

そのためには、大和貿易が行ったようなプロジェクト型で進めてみるのが一つの選択肢だと思います。

また、実行して成果が上がる中期経営計画とするためには、策定段階において、活動計画まで作り込み、進捗管理が行えるようにする必要があります。

何事も段取り、準備がいいほど本番(中計の実行段階)がうまくいくと信じて、取り組んでみてください。

皆さんの成功を祈ります。

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