どのような戦略も最終的には業務として遂行されることになりますから、戦略から戦術へ、そして施策へと具体化していきます。
マンガのストーリーの山本電機の事例にあるように、戦略課題の具体化は事業部に任せるという会社もありますが、任せたままにすると、「実行時に考えよう」ということで具体化が後回しになり、結局は考えられることのないまま実行されないということがよく起こります。
このようなことを避けるためにも、中期経営計画策定プロジェクト活動の期間中に戦略課題のブレークダウンまでを行う必要があります。
山本電機の社長は、前回の中期経営計画の反省としてそのことを指摘していたのです。
もちろん、プロジェクトメンバーだけでブレークダウンまで行う必要はありません。
必要に応じて事業部を巻き込めばよいのです。
なかなか他人の作った計画を真に受けて実行する人はいませんから、この段階から事業部主体に作ってもらうとよいでしょう。
事業部側も、計画作りのこの段階から参加できれば参画意識が高まると思います。
◆課題の施策化戦略課題は、次のようなステップで具体化していきます。
図表4-3では、課題例として「新興国市場開拓」を挙げていますが、これに対して課題解決策を検討します。
事例では「タイで現地生産・東南アジア地域で販売」と単純に書いていますが、実際の検討にあたっては、自社の課題に対して最も有効と思われる課題解決策を抽出する必要があります。
次に、課題解決策を施策に落とし込みます。
事例では、「バンコク近郊の工業団地に現地法人設立」としましたが、その課題解決策を実行するのに最も有効な施策を複数検討した上でベストな施策を選びます。
次は「計画化」です。
「〇〇年に現地法人設立」としました。
戦略課題なので、実行が急がれるものであるはずですから、計画開始のタイミングは実行可能な最も早い時期を選びます。
その後は、この計画を活動計画に落とし込んでいけばよいのです。
このブレークダウンの考え方に基づいて作られたのが、図表4-4のワークシート集です。
左上の戦略課題として掲げられているのは機能別戦略シートの記入例です。
中期経営計画として必要になる活動計画部分は、それに続いて課題解決策検討シート、活動計画シートまでとなります。
さらに右の部門年度事業計画書は、事業部ないし部門別に作成する年度ごとの事業計画です。
予算作成に合わせて作ってもらえばいいのですが、初年度については、フォーマットに慣れる意味も含めて中期経営計画の1年目として計数計画とも整合性をとって作るとよいでしょう。
事業計画の要素としては、①部門方針、②計数計画、③部門KPI、④活動計画の4要素となります。
活動計画をさらにブレークダウンしたのが、その右のテーマ別実行計画書です。
活動計画のうち新たに取り組むものについては、どのように実行したらよいかがわかりにくいでしょうから、遂行責任者または実行リーダーが、あらかじめこのような実行計画書を作っておくとよいでしょう。
意外ですが計画を作らずに実行するケースも少なくなく、「結果としてこうなってしまった」というような報告が行われることが多く見受けられますので、注意が必要です。
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