▼(3)優れたビジョンの条件
前出(プロローグ「組織変革の8ステップ」)のコッターによれば、変革を成し遂げた組織には優れたビジョンがあり、その共通の条件は図表2-5のように6点あるとのことです。
私は、この中でも特に最初の2つを重視しています。
1つ目の「将来のイメージが明確であること」については、私はこれを「イメージ可能性」と呼んでいます。
そして2つ目の「関係者とWinWinの関係になれること」については、私はこれを「共感性」と呼んでいます。
つまり、聞く人・受け取る人にイメージを想起させ、なおかつ「それはいいですね」と言ってもらえるような表現ということです。
この点で、多くの日本企業が提示する経営ビジョンに目線を移すと、「顧客からの信頼が高い企業」のような、抽象的で、どちらかといえば「かっこよさげ」に聞こえる表現にとどまっていて、優れたビジョンの最初の2つの条件に当てはまらないものが多いように感じます。
これには、多分に「経営ビジョン」という言葉が導入された背景に原因があるように思います。
もともと欧米の企業では、MVⅤ(Mission,Vision,Value)という3点セットで企業理念やビジョンを表現する習慣がありました。
一方、日本の企業では戦前から「社是」「社訓」というものがあり、「社是」はどちらかというとMission(使命)に相当し、「社訓」はValue(価値観)で表される行動規範に相当する内容でした。
そこで欠落している「ビジョン」を付け足すことになって、そのまま英語表現を取り入れてみたのですが、ビジョンがどのようなものであるべきかの議論はあまりなされず、外資系企業が使っている言葉をまねた表現が使われるようになったからではないかと思われます。
言葉の背景はさておき、再生を目指す会社やM&Aで訴求力のある新たな企業像を打ち出す必要がある企業、海外に出て異なる言語・文化の人たちを束ねていく必要がある会社にとっては、それが重要であることには変わりありません。
優れたビジョンとしての要件が備わるように工夫を凝らす必要があります。
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