「経営ビジョン」とは、「企業理念に基づいて実現したい将来の姿」です。
「ありたい姿」「あるべき姿」ともいわれますが、この「ありたい」と「あるべき」の違いは何でしょうか。
「ありたい」の方が願望や意欲を表し、「あるべき」の方が、当然または必然という意味を持ちますが、「ありたい」の方が若干ニュアンスが弱く響き、「あるべき」の方が強く聞こえます。
私自身は、経営者の意欲を表すという意味で「ありたい」の方を使っています。
経営ビジョンの要素としては、①市場・社会でのポジション、②事業運営の将来像、③組織と人のあり方・関係の3つとなります(図表2-3)。
まず、①市場・社会でのポジションでは、「〇〇業界のリーダー」のように、世の中または業界の中で何と呼ばれたいかということを比較的短いキーワード・フレーズで表現します。
次に、②事業運営の将来像では、①で表現した会社になっているとしたら、社内・事業はどのように運営されていたらよいかということを、いくつかのキーワードやフレーズで表現します(例:「先進的な技術開発」「社外との積極的なコラボレーション」等)。
③組織と人のあり方・関係では、②のような会社になっているとしたら、従業員は、どのようなやりがいや働きがいを持って、生き生きと仕事をしているかを、こちらもいくつかのキーワードやフレーズで表現します。
プロローグで述べたように、世の中にはフォーキャスティング発想をする人が多いため、中計の3年後というと、1年目、2年目、3年目と順序立てて考えることで、「3年くらいじゃあまり変わらないですよね」と、現状と大差ないような将来を想像してしまう人がいますが、変える気になれば、3年あれば結構変えることができるのです。
ですから、あらかじめ「10年後」のような長期ビジョンを検討する方法があります。
「10年後なんて予想がつかないですよ」と言われますが、「予想がつかないから、どうなりたいかを想像するのだ」と返せばよいのです。
普段予測しかしていない人に「どうなりたいか」を想像させるのは少々手こずりますが、誰しも想像力は備わっているので、検討できないわけではありません。
逆に、10年後のありたい姿が想像できると、実現意欲が湧き、3年後の目標をより高く設定することができるようになります。
経営ビジョンは図表2-4の例のように短い文章で表現しますが、文章をみんなで推敲するのは難しいので、プロジェクトメンバーなどで議論する際にはキーワードとその意味するところを中心に議論し、最後の文章化は、文章が得意な人に作文してもらうとよいでしょう。
経営ビジョンを策定する上でのチェックポイントは、以下の5つとなります。
①志は表れているか②キーワードは適切か③過不足はないか④当社らしさが表れているか⑤社員の理解と共感が得られるか①の志は、経営者、あるいは会社として高い志が感じられるものである必要があります。
また、④の「当社らしさ」については、自社の経営ビジョンですから、どこの会社にも当てはまるような言葉・表現ではなく、「我が社ならでは」の部分があるといいと思います。
⑤の社員の理解と共感は、会社は大多数を占める社員の人たちのやる気・意欲で支えられていますから、彼らが理解でき、かつ共感して、実現への意欲が湧いてくるような表現が必要です。
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