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▼過去の成功要因、失敗要因を把握する~過去の売上・営業利益の推移~

この記事でわかること

「敵を知り己を知れば百戦殆うからず」と言いますが、特に己=自分のことになると、なかなか客観視できない、という方は少なからずいらっしゃるようです。

例えば、会合の場での自己紹介1つ取っても、「どこで、何を製造しています」、「○○屋です」と言うだけで済ませてしまわれる方がよくいらっしゃいます。

私はよく、経営者の方々にはエレベーターピッチのスキルを身につけることをお勧めしているのですが、これはエレベーターに乗るようなほんの僅かな時間を利用して忙しい相手に事業のプレゼンを行いビジネスチャンスにつなげるというものです。

商談会などの場で短い時間に「我が社はこういう強みのある会社です」、「こういう点でお役に立てます」と端的にアピールできるようになれば、これは経営者にとって大きな力となります。

ただ、15秒~30秒という短時間で必要なことを伝えるためには、言わんとすることを簡潔に整理して話さなければなりません。

自分自身や自社の製品・サービスというテーマで「簡にして要を得た」説明ができないのは自身が十分に理解していないからで、日頃から自社の特徴を意識していないと端的に説明するのはなかなか難しい。

案外、取引先や金融機関のほうが、「この会社はこの技術がすごい」、「社長に先見の明があり、このような営業構造を築いてきた」といった特徴を捉えています。

自己を客観視して現状を把握することは、戦略の立案においては不可欠です。

そのために、まず、前項でもご説明した通り、

  • ●過去の成功要因、失敗要因を把握し、
  • ●それが当時の経営環境と、どう結びついているか分析する

という作業を行っていきます。

考察の前提として会社の歴史を振り返り、「あの時はうまくいった」、「あの時期はまいったなあ」という浮き沈みを「ライフウェイク」という図にまとめることがよく行われますが、記憶頼りでは見落としも多いため、私は「過去の売上・営業利益の推移」のグラフ化をお勧めしています。

売上は棒グラフに、営業利益は折れ線グラフにして、まとめてみましょう。

業績の浮き沈みという「傾向」を確認するためのものですので、単位は適宜設定していただいて構いません。

グラフで業績の動きを確認できたら、次に、特に大きく落ち込んだ時期、あるいは特に大きく成長した時期に何が起こったか、業績に影響を及ぼしたであろう環境要因と、その時自社で行った政策をグラフに重ねていきます。

次のグラフは、複数の飲食事業を営んでいるA社の売上と営業利益をまとめたものです。

売上のグラフだけ見ればそう悪くない経営状況に見えますが、ご覧の通り営業利益のアップダウンが激しく、私がコンサルタントとして入った時には大きな負債を抱えていました(図3)。

A社では、高速道路の開通などが追い風となり、バブル景気にさしかかる前まで、ほぼ順調に出店を続けてきました。

当初は店舗を増やせば増やすだけ売上が上がり、利益も後からついてくる形で成長を続けていたのです。

その間、オイルショックや配送センターへの投資などの一時的なマイナス要因もありましたが、すぐに回復できていました。

しかし、バブル景気にさしかかる頃には、いくら店舗を増やし、売上を上げても、営業利益は下がる一方となってしまいました。

実は商品と同じく会社にもライフサイクルがあり、成長期を過ぎればやがて成熟期、衰退期へと向かっていきます。

一般的に企業の寿命は25~30年と言われますが、そのくらいの期間で一回りして、以後は業態そのものが陳腐化します。

自分の会社が今、どの時期にあるかによって、何に、どのくらい投資すべきかの判断も変わるのです。

成長期は投資先行となるのが当然であり、A社の場合はこの時期、できるだけ早期に認知を得てより多くの顧客を獲得することが最大の成功要因でした。

積極的な出店政策がはまり、店を出せば出すほど集客力も高まって、売上も利益も後からついてきたわけです。

しかし成熟期にはもう、どれだけ投資しても見合った効果は得られません。

あとはただ、利益が回収できるよう適切な店舗運営を行うこと、そして企業として体力があるうちに、より魅力的な新商品・新業態の開発や、あるいは、顧客に飽きられ始めている店舗のリニューアルを図ることが必要だったのです。

ところがA社は、創業から20年30年経ち、業態が陳腐化してしまった時期にあっても、まだ成長期と同様の出店政策を継続していました。

過去の成功体験にこだわり、外部環境や会社のライフサイクルという内的要因の変化を考慮せずに同じ政策を打っていては失敗するのも当たり前です。

過剰出店しては利益悪化を理由に撤退し、また出店に転じる。これを何度も繰り返したことが、A社の財務内容を悪化させた理由でした。

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