◇経営悪化のパターンと経営の3つの輪
中小企業における経営悪化のパターン
- ●販売不振……売れない
- ●放漫経営……データ無視
- ●赤字累積……長年の経営不振のしわ寄せ
- ●過小資本……債務超過(過大投資)
- ●連鎖倒産……関連倒産
再建の可能性は「過小資本」〉「連鎖倒産」〉「赤字累積」〉「放漫経営」〉「販売不振」の順
前項では中小企業が業績悪化に陥る理由について考察していただきましたが、実は中小企業の場合、業績不振、経営悪化に陥る典型的な5つのパターンというものがあります。
これらはいつ起こるかわからず、また、私の実家の小売店のように、経営者がその状況を周囲にオープンにしていないことも多い。
突然、社長が倒れて初めて「こんなことになっていたのか!」とびっくりさせられる、というのは、決して珍しい話ではありません。
5つのパターンのうち、最も再建の可能性が低いと言わざるを得ないのが、「販売不振」(慢性的に売上が減少している状況)です。
一時的な損失や経営者に信用=資金調達力があり、「お金だけは何とか回っている」という状況であれば、存続はできます。
しかしながら、なんとか資金を調達し、コスト削減を図って会社として延命を図っても、本業の売上が慢性的に下がり続けているのであれば、また同じことが起こります。
抜本的な業績改善が図られない限り、資金を調達する→さらに赤字を出す→さらに資金を調達する……の繰り返しで、最後にはその資金も調達できなくなってしまいます。
そうなると時間との勝負になりますから、極めて短い期間で新商品やサービスを開発し、新たな販路を構築しなければなりません。
新規の売上を立てることは難しいことですし、しかも、金策に走りながらでは、なかなか地に足をつけて本業に集中することなどできません。
だからこそ、そうならないために手を打っておくべきなのです。再三申し上げているように会社にもライフサイクルがあります。
成長期があれば必ず衰退期があります。そして業績が好調の時があれば不調の時もあります。
こういった経営危機の時こそ経営者としての真価が問われ、ここで問題を先送りすることや、表面的に取り繕ったりすることは、後の選択肢を狭めることはもちろん、最悪、致命傷ともなり得ます。
そうなる前に、即ち「手が打てるうちに抜本的な対策を行う」ことこそが重要です。これが私自身、自らの会社を事業再生させた経験を通じ学んだ教訓です。
抜本的な対策を実行する際は、業績が悪化しているのが明らかであるにもかかわらず、それでも相当な反対勢力が現れるものです。痛みや軋轢の生じることが想定されます。
特に、経験の浅い後継者が先代から事業を引き継いだ際は尚更です。また、後継者自身も「このプランで果たしてステークホルダーを説得することができるのか?」という不安に苦しめられます。
事業再生に正解はありません。なぜならば、その会社の過去を真摯に受け止め、経営者が率先垂範して未来を創ることでもあるからです。
ですので、このように経営が悪化した場合は、経営者自らが強い信念と勇気を持って真正面から目の前の困難に挑む他ないでしょう。少し話がそれましたが、このように後継者にとって、財務の知識を身につけるということは、早急に実行しなければならないことの1つです。
とはいえ財務については様々な専門書も出ていますので、ここでは「最低限これだけは」という、ごく基本的なチェックポイントだけをご紹介しましょう。中小企業経営を財務面から見ると、図に挙げたような3つの「経営の基本サイクル」をうまく回すことができているか?が重要になってきます(図15)。
初めにお金の流れ、「キャッシュの輪」があり、そこから得られた利益の配分を表す「利益の輪」があります。さらには自社の財務基盤をより強固にしていくための「B/S(バランスシート)安全性の輪」があります。
これらを適切に制御していくことがポイントで、いつもいつもアクセルばかり踏みこんでいるのもだめですし、もちろん、ブレーキをかけてばかり、というのも好ましくありません。
上手くバランスを取って無理なく成長していくことが、企業にとって重要なのです。このうち、経営者にとって特に重要なのは
- ●現金収支の構造(お金の流れ)
- ●損益構造(儲かっているか?)
の2点となります。
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