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▼社員の心に灯をともす

この記事でわかること

経営者の魅力、企業の経営理念やビジョン、その重要性については本書でも再三触れていますし、皆様も既にこれぞというビジョンを定め、社内で共有していらっしゃるかもしれません。

しかしここで、そのビジョンに対し、心から「面白いな!」、「社長についていけば実現できる!」と感じてくれている社員が何人いるのか、今一度問い直していただきたいと思います。

経営とは、他ならぬ自分自身との戦いです。その中で経営者の拠り所となるのは、自身の「夢」です。

ここにどれだけ情熱を注げるかが重要であり、我が社はどのような状態になりたいのか、何を実現したいのかという想いや、会社の成長によって社員の人生も幸せなものにすることができる、という確信を明確な言葉にして表すのが第一歩。

しかしそこには、「何があっても実現する」、「自分自身が、自分の手で実現する」という「意思」、「覚悟」も伴っている必要があります。

「覚悟」とは、「我が社はこれをやるんだ!」と定めたことの実現に、経営者自身が全責任を負うということです。

「うちはこんな会社になろう」と社員に語った夢を、必ず実現すると社員に約束することです。この社長についていけば、社長の語った夢は次々実現していく、という信頼があってこそ社員も本気になって動く。

つまり、経営者とは社員の心に灯をともす存在でなければなりません。そうでなく、ただ社員に頑張れ頑張れと言うだけで、誰がやる気になるでしょうか。誰が引っ張っていくのか。

社員に掲げた「夢」は誰の夢なのか。そこが曖昧なままでは、社員に見透かされてしまうのです。

私は本書の冒頭から、同じことを繰り返しています。

あなたは経営者として、自分の会社をどうしたいのか、どんな夢を持っているのか、それを考えていただきたいと。心の底から「自分はこうしたい!」という想いがあって初めて動くことができる。

まず経営者が動き、自分で結果を出し、それを見ていた社員たちが仲間となって加わり、自ら動いてくれるようになる。そういう組織を築いていただきたいのです。

前項のケーススタディのモデルとさせていただいたのは、15年前に私がコンサルティングをさせていただいた会社です。

ちょうど事業承継が行われたばかりで、お父様から事業を引き継いだ新社長に、私はやはり、「この会社でどんなことを実現したいとお考えですか」と夢を訊ねたのです。

しかし社長は、「後継者になるつもりはなかった」としか言われません。

経営者の子どもに生まれたから嫌々継いだだけで、会社にも事業にもあまり関心がなく、地域の同世代の経営者との集まりに精を出してばかりで社員たちに向き合うことはありませんでした。

コンサルタントとしてそんなことではいけないと口出ししても、うるさいと言われるばかりでした。そんな頃、ちょうど社員の大量退職が起こったのです。

「あんな人のもとでこれ以上やっていられない」、「あの人が社長じゃこの会社はだめだよ」、そんな声が私にも聞こえてくるほど、社内には不満が充満していました。

新卒で入社して現場の稼ぎ頭となった20代後半から30代半ばの中堅社員が、続々と辞めていきました。このままではもっと辞められる……この危機感が、新社長を変えました。

ちょうど業績が落ち込んでいたことも、「待ったなしで変わらなければならない」という危機感を醸成する上で、言い方は変ですが幸いしました。

どうすればいい、と問われた私は、何よりも新社長自身の意思を明確にしたもの、つまり経営理念を定めてくださいと提案しました。

今までの態度をパート・アルバイトも含めた従業員全体に謝罪し、同時に「我が社は何を目的として、どのような事業を行っていくのか」を宣言し、社長のビジョンを経営計画に落とし込んで発表してくださいと。

さらに翌日からは誰よりも早く出社し、全社員に「おはようございます」と挨拶していただくことも提案しました。何だ、挨拶なんかと思われるかもしれません。

が、できることは小さなことでいいから、何か行動を変え、継続するということに意味があるのです。

目に見えて1つでも行動が変わらなければ、誰も「社長は変わった」と思ってくれません。

朝一番の出社と挨拶を、ずっと続けていただくうちに、社員たちにも社長の本気が伝わり、「この頃社長、変わったね」、「雰囲気変わったね」と言われるようになりました。来社してくるお客様にもそれが伝わります。

さらに、新社長自身も、「変わりましたね」と外部の方から言っていただけることに、心からの喜びを感じるようになりました。

それが新社長にとって、その会社での最初の成功体験だったからです。後継者にとって、小さくともこのような成功体験が何より大事であると私は思います。

率先垂範して動いた結果、成果を得る。

それが自信となり、また周囲の社員たちも「この人についていけばいい会社になりそうだ」と感じるようになります。

経営者自身も、「社員を信じてやったらこれだけの成果が出た。だったらもっと頑張っていこう、もっともっと理想を目指して頑張ろう」という気持ちになるのです。

小難しいことや大きなことでなくても構いません。まずできるところから、夢に向かって、行動していきましょう。

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