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▼ベンチャー型事業承継の提案

この記事でわかること
  1. 必ず、その時代に応じた変革を成し遂げています。

「自分のしたいことを考えろと言われても、会社を引き継いだのは単純にそうするものと思っていたからで……成熟市場だから先々の見通しもそう明るくはないし」という方は多いものです。

この会社があったおかげで自分も大きくしてもらえた、これは私も含め、すべての後継者の根幹にある想いでしょう。

だからこそ自分もこの会社を引き継ぎ、次の世代へ残していくのだと──しかし、それと「今までと同じ事業を今までと同じやり方でやる」ということは、決してイコールではありません。

むしろ、

  • ●昔から持っていた、家業とは一見関係なさそうな夢を自分の会社で実現する
  • ●大企業での勤務経験を活かし、そこで得た知見を自社の経営に反映させる
  • ●かねてから自社について問題だと感じていた点を改善する
  • ●事業の中で顧客の声や社員の提案、あるいはたまたま出会った新技術、新商品などから新しい事業のヒントを得る

というように、様々なきっかけからそれまでにない新しい領域へ挑戦し、成功したという例も少なくないのです。

長く成功し続けている企業では、衰退期ごとに中興の祖というべき経営者が現れて、必ず、その時代に応じた変革を成し遂げています。

これらの企業は既存の経営資源を再評価し、その価値を市場のニーズと結びつけることで、ベンチャー企業のように積極的に新規事業や新市場へ打って出ながらも、比較的高い安定性を実現しているのです。

トランプ・花札のメーカーから、世界的大企業にまで急成長した任天堂はその代表と言ってよいでしょう。

若くして家業を引き継いだ山内溥氏は、当時全国で起こっていた労働争議に苦しめられつつも、ディズニーキャラクターを印刷したトランプを開発、家庭という市場を開拓します。

後にインベーダーゲームのブームが起こると一時は他社に追随しながらもいち早くアーケードから撤退し、やはり家庭向けゲーム機の開発に着手しました。

今や「ニンテンドー」の名は一企業の社名にとどまらず、「自宅で楽しむビデオゲーム」の代名詞ともなっています。

会社という枠組みと、その「指揮権」があれば、理論上はどんなことでも行うことができます。

経営者が変われば、会社も変わっていくのです。

これまでの人生経験や新たにアンテナを広げて得られた情報なども踏まえて、「この会社で自分はこれを成し遂げるのだ」という確固とした信念、あるいは、創業者と変わらぬ熱量を持って取り組んでいける夢を、ぜひ「自分の会社」に見出していただきたいと思います。

なお、このように特に変革と挑戦を伴う事業承継を、「ベンチャー型事業承継※⑴」とここ最近は表現されています。

この「ベンチャー型事業承継」という言葉は、中小企業庁の「事業承継五カ年計画」(平成29年)に盛り込まれたことから徐々に広がりつつありますが、それによれば、

  • ●今後5年間で30万社以上の中小企業において経営者が70歳を迎えると予測されるが、にもかかわらず、その6割が後継者未定である
  • ●一方、売上増を実現できているのは70代の経営者で14%、30代では51%となっており、明らかに若手経営者のほうがパフォーマンスは高い
  • ●70代の経営者でも承継準備を行っているのは半数に留まっている

とされ、経営者の高齢化、及び経営者不足による廃業数の増加が、特に問題視されています。

日本経済の特徴は、国内企業の9割以上を占める中小企業がそれぞれにその時々の社会の要請に応えてイノベーションを起こしているという点にあるのですが、このままではその強みが失われかねないと考えられているわけです。

これに対し、行政が解決手段として打ち出したのが、若い経営者、特に地元企業を引き継ぐ後継者が新規事業や新市場開拓など、新しい領域に積極的にチャレンジしていける「環境」を整えるというものです。

この方針に従い事業転換に対する事業承継補助金の支給や税制優遇、あるいは啓発イベントや勉強会など、後継者を対象とした様々なベンチャー型事業承継の奨励事業が行われていますので、必要ならばこうした制度の有効活用を検討するのもよいでしょう。

※⑴…「若手後継者が、家業が持つ、有形無形の経営資源を最大限に活用し、リスクや障壁に果敢に立ち向かいながら、新規事業、業態転換、新市場開拓など、新たな領域に挑戦し続けることで永続的経営をめざし、社会に新たな価値を生み出すこと。」一般社団法人ベンチャー型事業承継代表理事山野千枝氏が提唱。

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