コストという言葉も人材戦略の上で、気をつけなければいけない語句です。コスト=費用(支出)ですよね。
人件費をコストと思っている経営者の会社は、多くの場合、人の出入りが激しいのが特徴です。
人件費=コストという言葉を使うと、数字ばかりを見てしまいやすく、低いほうがよいと思ってしまいがちです。
もしスタッフの生活や感情を考慮せず、その考えが加速すると、スタッフが会社に不信感を持ち、大事にされていないと感じます。
結果、退職も増え、人材の自転車操業のきっかけとなってしまうのです。教育費用についても同様の考えです。
教育費用=コストという考えを持つ企業も、人の出入りが激しくなります。
なぜなら教育コストを低く抑えるために、教育をしなくても活躍してくれる中途のインスタント人材を求めるからです。
しかし、第二章でお話したように、そういう人材は市場になかなか存在しません。
教育を軽視するほど、採用で失敗します。
そもそも、自社の採用情報に教育のことを書いていますか?誰がどうやって、何をどのくらいの期間教えるのかという内容です。
また、教育はコストではなく「投資」です。これを理解し、実践できれば採用活動は一気に進めやすくなります。
例えば、スタッフに「正しい仕事の進め方」という教育をするとします。外部の研修施設に通うための金額が一人十万円かかるとしましょう。
教育費用をコストとだけ考えれば、これを削ることで、十万円利益が増えるように見えます。経理上は正しいですが、しかし、投資と考えると見方がまったく変わります。
「正しい仕事の進め方」を投資として教育すれば、そのスタッフが働いている間は、ずっとその効果が続きます。
毎月三十万円分の成果しか出せなかった人が、この教育により、毎月三十一万円の成果を出せるようになったとすればどうでしょうか?十万円使って、一万円(三十万円の三パーセント)向上しただけですから効果がないように見えますが、実際は違いますよね?十か月で研修の元をとれ、社員が勤続している限り、その効果が続きます。
十年働いたら、費用対効果は十二倍です。しかし、実際はもっと高くなるでしょう。
「正しい仕事の進め方」という基本を最初に学んだことで、そこに経験がプラスされると、三パーセントという伸びではなくなるのです。
例えば、Aさん、Bさんの二人がいるとして、社内でしか通用しないOJT(先輩や上司が仕事を教えるOntheJobTraining・教える人以上のスキルにならない)だけで育ったAさんが一年後に三十一万円になっても、プロによる外部研修(OFFJTといいます)+OJTで育ったBさんは三十五万円の成果を出せるようになっていることがあります。
このようなその後の伸びを計算に入れると、お金をかけた教育は「投資」です。これが外部教育の効果です。
OJTのみという教育体制は極論すると、社員教育を何も考えていない放置と一緒なのです。
例えば今、あなたはこの本を読んでいます。
これはOJTでしょうか?OFFJTでしょうか?ここまで読んだ本書の内容すべてを、あなたは諸先輩方からの教育や社内経験だけで学べますか?もし、本書を通じて何かしら得るものがあるのであれば、それは社内のOJTだけでは一生手に入らないものだったかもしれません。
「本書」や『採用の教科書1』、ネットで販売している私の『初めての面接でも欲しい人材を見抜くことができる採用面接マニュアル』や、私が講師を務める『採用や面接のセミナー』などから、採用のことを学ぶと、すべてお金がかかります。
でも、それは支出ではなく、将来的な投資になると思いませんか?本書で書いている「採用でよくある失敗」を読まずに、OJTだけで以前の採用のやり方を踏襲し、採用に失敗している会社は全国に無数にあります。
その会社とあなたの会社は、違う道を歩み始めています。これは何も私の本やセミナーだけではないのです。
営業でも集客でも専門技術でも誰から学ぶかというのは、その人の今後の成長を左右します。
OJTだけとOFFJT+OJTでは伸びが違うのです。
そもそも、社内で教える側の人が、人に教えるための研修を受けたり、教育(OFFJT)で学んでいるかといえば、首を縦に振ることは少ないかもしれません。
もし、現状はそうでも、今後は変えていけばよいだけです。改善点や問題点を知ることが最初のステップです。目をつむっていては、一年後の未来も同じですから。
このように教育をコストではなく、投資ととらえることで、人材育成の大切さと研修効果などの本質を見ることができます。
実際の現場では、小さな会社になればなるほど、人手に余裕がなく、これまでの慣習で社員を外部の研修などに出して、お金をかけて教育することは少ないと思います。
しかし、スタッフの教育に使ったお金は設備投資と同じで返ってくる金額ですから、経営判断として教育投資に力を入れましょう。
広告などにお金を使いすぎてつぶれる会社はありますが、「投資としてスタッフへの教育にお金を使いすぎてつぶれた会社がある」ということを聞いたことはありません。
教育=投資という考えかたの効果を感じるためにも、本書で採用に関してOFFJTを体感してみましょう。
【■POINT■教育を投資と考えることで、採用活動でも定着率でも効果が出る。】
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