先ほどあげた、会社を辞める三つの理由について、どう思いましたか?「うちの会社はそんなことはない。違う」と感じなかったのなら、会社を辞める三つの理由について多少なりとも納得したということだと思います。
実際は病気や家族の転勤など退職せざるをえない、どうしようもない場合もあるでしょう。ほかにも、「解雇はどうなのか?」という疑問もあるかもしれません。
ただ、解雇は、「辞める理由」でお伝えしたかったことと趣旨がずれています。
解雇するような人を採用してしまった選考の失敗か、教育の仕方を間違ったというだけでしょう。
先ほどの三つの理由は、全企業に共通するものですから、あなたの会社独自の考えを加えてもよいのですが、大事なことは、「お金」「やりがい」「人間関係」と言うように、辞める理由(原因)が分かれば、会社としては社員が満足するように、社内改善すればよいのです。
例えば一部の業界に多いのですが、サービス残業がある場合は、すぐになくしましょう。そもそも残業時は一・二五倍の賃金が発生します。つまり、残業時間中の仕事は普段の一・二五倍の成果を出さなければ、利益率が落ちるのです。
当然ながら、それは不可能です。
業務見直しと分担をおこない、チェックリスト化と共有化・フォーマット化により、残業時間を減らす施策をしつつ、残業代支給に関して法律を守ることです。
退職したスタッフから弁護士を通じて残業代未払い請求の連絡が入り、連鎖請求が起こる前に先に手を打っておきましょう。
弊社はコンサルティングをする際、会社が、残業代に関して未払いの事実が分かれば、今後は払うように言います。それが長期的に見て会社のためだからです。
スタッフも管理職も経営者に直接言えないでしょうから、外部の私が言うしかありません。
それでも支払わない場合は、違法経営をする企業の採用を手伝い、不幸な人を増やすことは弊社の経営理念から外れますので、コンサルティング依頼をお断りしています。
ここで残業代に特化した話をしたのは、中小企業においては、特に残業への考え方が採用の失敗につながりやすいからです。残業がないように効率化しつつ、残業が発生したらきちんと支払うことが大切です。
「やりがい」を与えることに関しては、人の上に立つスキルが求められます。
やりがいに関して前項でお話した「仕事の本当の目的」以外に、「感謝」や「周囲に認められたとき」など社内のつながりでも「やりがい」は発生します。
あなたの会社はスタッフをほめていますか?管理職は部下をほめていますか?信頼していますか?これらは、お金以外の部分での報酬や評価でもあります。
ほめるためには、当然ながら普段から部下の仕事を見ていないといけませんし、結果ではなく、プロセスをほめることが大事です。
ほめることは、会社としてお金を一円も使わない報酬でありながら、職場環境がよくなるという、画期的で今すぐにできる改善策なのに、これを上手に活用している管理職や経営者は少ないのが現実です。
日本人は相手に気を遣ってお世辞は言うのに、仕事では完ぺきを求めるあまり、職場で人をほめるのが苦手なのです。
・あなたは普段から周囲の人をほめていますか?
・あなたの職場で、目の前にいる人のほめてほしいポイントは分かりますか?
また顧客満足度もやりがいと関係しますので、ここに力を入れ、感謝の声を担当したスタッフに届くような仕組みを作るなど、「ほめる」効果を応用する方法はいろいろとあります。
ぜひ、さまざまな方法で「やりがい」も与えて、定着率を上げましょう。責任のある仕事だけがやりがいを生むわけではないのです。次に「人間関係」に関してですが、後から変えるのは非常に難しい事柄です。
例えば、あなたの職場に悪い雰囲気を生み出す元凶となっている問題社員がいるとしても、その人を簡単にクビにはできません。経営者が「エイヤッ」で決められないところです。
既にあなたの会社に問題社員がいる場合は、本書に解決策を求めるのではなく、顧問の社会保険労務士に相談しましょう。
今後このような問題社員の採用をしないためにも、新たに採用する人材は人間的によい人を採用するのは当然のことですし、また、管理職への昇格人事を慎重にしてください。
社内で昇格の話がでてくるスキルと、管理職に必要なスキルは違います。管理職に向く人材と、人の下で活躍する人材は違うのです。この昇格基準でも本書のノウハウが役立つでしょう。
【■POINT■会社を辞めない三つの理由の土台を作った後に人を採用すれば、離職率は一気に下がる。】
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