企業理念とは経営理念と置き換えられますが、経営理念だと「経営」という言葉のせいで、どうも全社員が意識しづらい気がします。だから「企業理念」という言葉を使っています。
本当は、「私たちの企業理念」という言葉が一番いいです。企業理念などなくてもウチはやっていると考える経営者もいるでしょう。
でも、企業理念がなければ「社員が何のためにこの会社で働いているかわからなくなる(存在意義)」し「判断基準がわからない(価値観)」し「会社の将来像が見えない(共有する夢)」のです。
それでは、いつまでたっても上司の指示でしか動けない社員しか育ちません。そして肝心の上司も考えがコロコロ変わるのです。
企業理念に関して、ある二つの企業を比較してみましょう。
――人のやらないことをやり、ほかより一歩先んじて、世界を相手にする。自己の能力を最大限に発揮させ、最高の技術を持つこと(ソニー株式会社)。
――私たちの使命は、生産・販売活動を通じて社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与すること(パナソニック株式会社)。
この二社は、同じジャンルの製品を作っていても、目指しているものが違います。生活と技術、そう、追い求めているものが違うのです。
でも、このような理念を掲げ、社員が意識することで、ソニーらしい製品とかパナソニックらしい製品というものができますし、メーカーで働きたいエンジニアは、二社のうちどちらの会社が自分に合うかを判断できるのです。
あなたの会社は何のために存在するのか?これをぜひ、考えてみてください。採用の目的と同じ「利益」ではないと思います。
創業して間もないころは、「利益を追求する」という目標もあるでしょうが、ある程度の利益が出るようになり、会社のステージが上がると、「会社が利益のためだけに存在するのではない」と思うでしょう。利益のためだけであれば、社員はついてきません。
実は第一章で話さなかったことがあります。
それは最初からその話をしても理解しづらいからです。
もし第一章で気づかずに、ここで気づいたのであれば、本書を読む間にあなたのステージが上がったことを意味します。そう、それは採用のもう一つの目的です。
一章で採用の目的は「会社がさらに利益を出すため」だとご説明しました。なぜならば、その意識がなければ、採用活動を安易に考えてしまうためです。
一章、二章は採用の重要性をあなたに説明する章だったのです。
いきなり、いまからお話しする内容をお伝えしても「キレイゴトだ」と思ったかもしれませんから、あえてこの三章まで、もう一つの目的については、話すのを待つことにしました。
そうです。
採用にはもう一つ、重要な目的があります。人を採用するのは、「企業理念に沿った行動をするため」です。
ただ、これだけを目的に掲げると、どうしても採用で失敗しやすくなります。
採用の目的として「利益」というキーワードは絶対に忘れてはいけないのですが、「企業理念」も同じように重要なのです。
これも「動機づけ―衛生理論」と同じ考えです。
採用の失敗を回避するために、「利益」の考え方が必要ですし、動機づけのためには「企業理念」の考え方が必要です。
私はこの二つをハーズバーグ氏を参考に「採用の二要因理論」と名付けました。どれだけ優秀な人材を採用しても、自社の考えに合わなければ、企業理念に沿った行動ができないために、お客さまからも信頼を失い、結果として利益を減らすので採用で成功したとは言えなくなります。
企業理念に関しては、ザ・リッツ・カールトン・ホテルやジョンソン・エンド・ジョンソンが導入しているクレドも参考にしてください。
また、このように企業だけではなく、個人単位でも同じように理念を持つことをおオススメします。ご興味があればインターネットを使ってマイクレドと検索してみましょう。
【■POINT■採用の二要因理論を意識すれば、あとは合うか合わないかだけである。】
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