目次
◆第3章 第38節による心得
●原文引用
「火が煙に覆われ、鏡が汚れに覆われ、胎児が羊膜に覆われるように、この世はそれ(欲望、怒り)に覆われている。」(第3章 第38節)
●逐語訳
- 火が煙に覆われ:燃える火でさえ、煙に隠されるように、
- 鏡が汚れに覆われ:反射する鏡も、汚れによって曇るように、
- 胎児が羊膜に覆われるように:命でさえ膜に覆われ、外界と隔てられているように、
- この世はそれに覆われている:同じように、この世の人々の心は、欲望と怒りによって真理が覆い隠されている。
●用語解説
- 覆い(アーヴリタ):真理や知識を隠すもの。
- 火・鏡・胎児:本来は明るく、反応し、生きている存在の象徴。
- 煙・汚れ・羊膜:感覚的煩悩の象徴。気づきや行動を阻むもの。
- それ(欲望・怒り):第37節で明らかにされた内なる敵。
●全体現代語訳
火が煙に、鏡が汚れに、胎児が羊膜に覆われているように、この世の人々の知性や本質も、欲望と怒りによって覆い隠されているのだ。
●解釈と現代的意義
この節は、「本来明るく輝くものが、煩悩によって曇る」という比喩で、欲望と怒りが真理や智慧を覆い隠してしまうことを表現しています。
現代においても、人は本来理性的で創造的な存在ですが、感情や欲望によってその力が発揮できない場面が多々あります。
このことを「気づきの曇り」として捉え直すことで、自分自身や他者に対して柔らかい理解が生まれます。
●ビジネスへの応用
ビジネス状況 | 応用ポイント |
---|---|
トラブル時の冷静さ | 感情が真実や解決策を覆い隠していないか、自省する習慣を持つ。 |
チームメンバーの行動理解 | 表面的な言動の裏にある「内なる覆い(欲・恐れ)」に目を向ける。 |
自己改善 | 問題の根は、外部ではなく「内側の曇り」にあるかもしれないという観点を持つ。 |
●ビジネス心得タイトル
「曇りを払えば、本質は自然と光る」
◆第3章 第39節による心得
●原文引用
「知識ある者の知識は、この永遠の敵に覆われている。アルジュナよ、欲望という満たし難い火によって。」(第3章 第39節)
●逐語訳
- 知識ある者の知識は:智慧を持った人でさえ、
- この永遠の敵に覆われている:欲望という常に存在する内的敵により、その知識が曇らされてしまう。
- アルジュナよ:呼びかけ。
- 欲望という満たし難い火によって:決して満たされることのない、炎のような欲望がそれを覆い尽くす。
●用語解説
- 知識ある者(ジニャーニン):学問・経験・内面の理解を有する者。
- 永遠の敵(シャトル・ヴィパクシャ):常に内面に存在する誘惑や煩悩。
- 満たし難い火(アナラ・パヴァカ):どれだけ注いでも収まらない炎=貪欲の象徴。
●全体現代語訳
どれほど知識のある者であっても、その知性は、決して満たされることのない欲望という永遠の敵によって覆われてしまうのだ、アルジュナよ。
●解釈と現代的意義
この節は、「知識や経験があっても、内面的な欲望に打ち勝てなければ真の智慧にはならない」という警告です。
これは、現代社会における「ハイパフォーマーの失敗」「インテリの誤謬」にも通じます。
知識だけでは道を誤らないとは限らず、内面の自己統御が伴ってこそ、真に意味ある知性となるのです。
●ビジネスへの応用
ビジネス状況 | 応用ポイント |
---|---|
高度人材のリスク | 経験・知識に慢心せず、常に欲望や感情のチェックを欠かさない文化づくり。 |
リーダーの誘惑 | 成功後の油断や、さらなる欲望によって判断を曇らせない仕組みを作る。 |
成長戦略 | 「もっと」「さらに」という欲望が、現状の強みや本質を見失わせていないか確認する。 |
●ビジネス心得タイトル
「知識を曇らせるのは、満たされぬ心の炎」
この38・39節では、「本来の智慧や判断力が、内なる欲望によって曇らされている」という人間心理の洞察が深く描かれています。
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