専門技術の教育の課題と一緒に取り組むべき社内改革がこちらです。もし、すでに自社に導入済であれば、この項は飛ばしてください。
取り組むべき社内改革、それは「成功法則共有意識」です。これは教育と関係し、定着率の改善や入社した人の立ち上がりスピード、従業員満足度、業績向上とも関係します。
成功法則共有意識の構築を具体的に言いますと、「成功した事例を関係者全員で共有する『意識』と『仕組み』を作ること」です。分かりやすいように、例をあげてご説明をします。
例えば、車販売やマンションなど不動産販売の営業を想像してください。営業が何人かいたら、必ず成績のよい営業、成績の悪い営業がいます。成績の悪い営業は社内での立場も低くなりますし、成績のよい営業はどんどん評価されます。
そのようなエースと呼ばれる営業のおかげで、会社が何とか持っているという企業も少なくないでしょう。
ここで、会社としておこなうことは何でしょうか?よくある間違いが、「売れる営業を雇うために、とにかく採用に力を入れよう」という発想です。
採用に力を入れることは確かに大事です。でも、優秀な人が入っても、結果を出す可能性が低いかもしれません。
この場合は、まずエースになりやすい職場環境を作ることに目を向けましょう。営業成績が最もよい人のノウハウを皆が共有する仕組み。
ほかの担当者の小さな成功でもその理由を皆が共有し、組織として再現可能にする仕組み。これを自社内に導入することです。
そうすることで、営業成績が悪かった人も売り上げが上がり、黒字社員になりますし、評価される事でストレスなども減ります。
また、次に入社した人も成功しやすくなる仕組みが社内にあれば、優秀な人が入社すると、比較的短期間でそれを学び、結果を出すことになるでしょう。
しかし、現実問題として、成績の悪い営業が成績のよい営業に「どうすれば売れるようになりますか?」と聞いたとしても、会社が成功共有を推進している風土でなければ、心理上、しっかりと教えてもらえる可能性は低いでしょう。
会社の評価制度として、チームではなく個人のみが評価される場合、自分がせっかく苦労して確立した手法を簡単にほかの人に教えることは、成績の良い営業にとってメリットがありません。
もし、皆が結果を出せるようになれば、「すごい」と思われなくなります。つまり普通の評価制度だと、ノウハウを教えた場合、組織の中で自分の相対的な評価が下がるのです。
もしかすると、その成績のよい人はお金を払ってセミナーに行ったり、書籍を買ったり、休みの日も自己啓発をしてノウハウを学んだかもしれません。
このような自己投資をしてきた人から見ると、「人に簡単に聞いて、無料で教えてもらおう」としている同僚を見ると、イラッとくる人もいます。だから、聞かれても「ハートだよ」「情熱だよ」などと返す場合もあります。
このように意図的にはぐらかす回答をする人もいれば、自分でも自分自身の成功要因がよく分かってない人もいます。こうやって社内でも二極化が進むわけです。
ここで、経営者として考えていただきたいことがあります。
もし、その成績の良い人が退職したら会社はどうなりますか?退職後、その人が確立していた成功法則はどうなりますか?そうですよね。
その人に頼っていた売り上げはガタ落ちしますし、会社には、その人の代わりは育っていません。ある一人の人だけが持っているノウハウが社内にある。そしてその人が辞める可能性はゼロではない。
事故などで休む可能性がゼロではない。これは経営者として危機管理上、危ない状況といえます。また、教育という面からも、非常に非効率です。
通常、ある成功法則に行き着くまでには、数多くの失敗が必要です。つまり、ほかの人が成功するためには、先人が通った同じ失敗を繰り返し、成長しなければいけません。
人の成長という面からは失敗させることも大事ですが、会社という組織単位で見れば、「同じ職種の人数×同じ失敗」を会社がすることになります。
当然ながら、手に入るはずだった売り上げを逃すことになりますし、人件費の無駄にもなります。
メールや共有サーバーなどで情報を簡単に共有できる方法がそろっている現代においては、「今後入社する同じ職種の人数×同じ失敗」を会社としてすることは果たして必要だと思いますか?仕事はうまくいったときが一番楽しく、やりがいも出ます。
皆が成果を出せれば経営者や上司も失敗をしかる数も減るので、上司・部下・同僚の社内ストレスも減ります。結果、職場での精神疾患なども減ります。
ほかにもメリットばかりです。だからこそ、成功法則の共有意識を社内に浸透させることが必要です。
同僚や部下に「こうやったら、うまくいったよ」とお互いが教える文化を社内に根付かせたいと思いませんか?しかし、残念ながら、「共有してください。教えあってください」と言っても人はそう簡単に動きませんし、社内にその文化は根付きません。
教えるということは、要点をまとめて言葉や文章で伝える必要があります。時間がかかります。
教えても自分にメリットがなければ、ただ仕事を増やされるだけなのを嫌う人は、改善意識や自己啓発意識の強いあなたが思っている以上に多いのです。
そういった人間心理もありますし、営業など個人が数字で表れる客観的評価がしやすい職種ほど、教える文化が根付きづらいのです。
このようなお互いが教えあう文化を社内で育てるためには、経営者の意識と評価制度を少しだけ変える必要があります。
それは、「教えたことの評価を最高評価にする」ことです。つまり、人を育てた人が最も評価される会社になればよいのです。
中途入社の人にも教育担当をつけてくださいと書きましたが、その中途の人が成果を出したのであれば、その教育担当も評価されるべきということです。
会社という視点で考えた場合、この評価が正しいということが分かると思います。教えた人が損をしては絶対にいけませんし、自分の時間的にも評価的にも損をすると、教える文化が消えていきます。
一人がすべてにおいて優れているわけではありません。それぞれ得意不得意があります。
スタッフ間で、その得意な分野をお互いに教えあい、共有する文化を浸透させていくことが、「成功法則共有意識」と私が呼んでいる考え方です。
やり方はいろいろありますが、今すぐに導入できるものとして、業務日誌(日報、週報)で、「今回は誰のサポートを受けたか」「何を教えてもらったか」「この仕事で成果が出たポイント」を追加で書いてもらい、情報を吸い上げ共有し、成功法則を共有した人にプラス評価をします。
これは一例です。ほかにも様々な手法を考えてみましょう。
【■POINT■成功法則共有意識でエースを増やし、成長しやすい会社にしよう。】
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