弊社にコンサルティング依頼をする会社は、新卒採用、中途採用のどちらかを依頼されますが、規模の小さな中小企業の多くは、中途採用で人員を補強します。
規模が小さいほど中途採用のみをおこなっていることが多く、順調に会社が成長していき、規模が十~二十人を超えてくるころには、新卒採用の実施を検討し始めるのが普通です。
新卒採用に目が行きはじめる理由としては、
- ・新卒採用のほうが、優秀な人材となる可能性がある人を採用する確率が高い。
- ・そろそろ、自社も新卒採用ができる会社になっただろう。
- ・一から自社で育てたほうが、価値観を共有しやすい。
など理由は会社ごとに異なります。
ここで、ある会社の事例をご紹介します。
『採用の教科書1』でも登場した、「歯科医院向けの治療具」を作っている世界一の技術を持つ東京の下町の小さな会社、。
こちらの会社も、中途採用の次の段階として初めての新卒採用をおこなうことになりました。しかし、一般的な企業と違う点がありました。
それは、『採用の教科書1』でもご紹介した初めての正社員中途採用をおこなった後、二人目の正社員採用で新卒採用をすることにしたのです。
あなたの会社は何人規模になってから、新卒採用を始めた(もしくは始める予定)でしょうか?錦部製作所は職人気質の社長が率いており、歯科器具製造としての技術は世界一ですが、会社規模も七人中四人が家族(残り三名の内訳は正社員一名、パート二名)です。
規模を見ると、家族経営の小さな会社に分類される会社です。今回の採用に関して、私は〝錦部製作所が求める人材像〟をヒアリングしました。
もともと、同業者の少ない特殊な業界ですから、経験者の職人が求職をしていることはありません。また一人前の職人になるには最低十年はかかります。ですから、できる限り若いうちから技術を教える必要があります。
今回は前回の中途採用と違い、会社として人手が足りず、すぐに人が欲しいわけでもありませんでした。結果として、錦部製作所は「新卒採用をすること」を選択したのです。
採用活動を決定したのは二〇一一年七月でした。学生の就職活動も終わりつつある時期でしたし、それから採用ホームページを作るので新卒採用を開始するには遅すぎます。
当然ながら、学生への知名度はゼロ。普通に考えれば、新卒採用は難しいと思うでしょう。
それでも私は自信があったので、『採用の教科書1』にて公開した手法どおりのやり方を再度おこないました。中途採用のときに明確にした理念や価値観、また仕事の詳細を説明した動画は新卒採用でも活用できます。
そして、読めば会社のことがすべて分かる新卒採用ページをホームページ内に追加し、翌八月から新卒採用を開始しました。
求人に関して、職場見学はおこなっていましたが、よくある大手就職ナビも使っていませんし、合同会社説明会への参加もしていません。
ただ、「全国の大学の就職課への求人票配送代行」はおこないました。求人票の中では、錦部製作所の採用ページを案内し、共感した方だけエントリーしてください。と記載しました。
応募者の数を集めるのではなく、理念や価値観を共有できる方だけに働いてもらいたいという想いから、必ず自社の採用ページでフィルタリングしています。
その結果、関東の大学を中心に、有名な国立大学の学生などからもエントリーがありました。
選考試験は書類選考や適性試験、面接などを七次選考まで準備し、依頼いただいたので最終面接では私も面接官として同席、最終的には、優秀な学生を一名採用することができました。
本書を執筆している時点では既に入社し、会社も非常に満足されています。
この事例を通じて、私が伝えたいのは、「中小企業であれば、学生に知名度が低いのは当たり前、中小企業であれば、会社規模が小さいのも当たり前、それでも、会社の価値観や理念に共感する優秀な学生は必ずいる。
知名度や会社規模ではなく、あなたの会社の理念や価値観で勝負をしてみませんか?」ということです。
大手就職ナビを利用しなくても、すべての情報を伝えるために一生懸命に作った自社の採用ページと求人票を合わせることで、新卒採用は可能なのです。
ただし、入社した人が幸せになるようなよい会社にする改善活動をし続ける意志だけは持ちましょう。残業代を支払わないなど、法律違反をする会社は、新卒採用をされないようお願いします。
最後に、一点。
新卒採用を初めてしようと考えた企業は、スタート時期が遅いことが多く、就職活動が終わりかけのことがあります。
新卒採用をする場合は、なるべく早く決断をしましょう!※いなだ事務所では「求人票配送代行サービス」をおこなっています。
詳細は弊社ホームページをご覧下さい。
第三章のまとめ(あなたはこの章で以下のことを学びました)
- ・新卒採用では「育てなければいけない」という義務感が何もしなくても起こる。しかし、中途採用にはそれが起こりづらい。育てる意識をもつことが重要。
- ・教育費用はコストではなく、投資である。投資であればお金を使えば使うほど、リターンがある。教育費用にお金をかけてつぶれた会社は無い。
- ・返報性の原理を学び、現場で働くスタッフから良い会社だと思われよう。
- ・専門技術は当たり前のようにOJTで教育をするが、その教えている知識は本当に正しいのか常に検証しよう。
- ・スタッフ同士の仲が良い組織は離職率が低く、経営上有利になる。
- ・人事評価は、人に教える事を最高評価にするとよい組織が作られる。
- ・技術だけではなく、人間力を上げるための教育にも力を入れよう。
- ・優秀なスタッフを採用したら、信じ、任せる事でさらに伸ばすことができる。
- ・ほめる技術を学び、社内に浸透させると良い。
- ・マイクレドを活用して、スタッフが自動成長できる仕組みを作ろう。
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