専門技術の教育とは、一言でいうと仕事に直結する技術や仕事工程、やり方などの教育のことを指します。
新しく入社した人に専門技術の教育をするのは当たり前のことですよね?新しく入社した新卒採用者や中途採用者が職場で働けるように、先輩や上司が専門技術をOJTで教えます。
大企業でも、中小零細企業でも、個人事業主でも、どこでもやっていることです。先輩や上司が仕事に直結する専門技術(作業)を教えるという「行為」自体に差はありません。しかし、ここで終わっていたら、とても人材育成とはいえないのです。
周囲を取り巻く環境の変化が激しい現代において、過去のやり方のみを踏襲して、成果を出すことは難しくなっています。
つまり、同じ教育をし続けていては、時代の変化に対応できず、以前のやり方が通用しなくなり、成果は下がっていきます。
この専門技術の教育(OJT)で、気をつけるべき点は二点あります。
「教える側の能力」と、その「教えている内容が正しいのか常に疑問を持ち、改善した内容を教えること」です。
多くの会社では、仕事をしっかりと回していればその人は仕事ができると考えます。
通常、三年ほど業務を経験すれば、ある程度はできると考えやすいです。
果たして本当にそうでしょうか?
今、おこなっている仕事のやり方は正しいのでしょうか?
検証せずに、そのやり方をそのまま教えることにリスクはないのでしょうか?
スタッフも在籍期間が長くなり、会社に染まれば染まるほど、見えなくなるものも増えてきます。客観的視点による「仕事のやり方の正しさ」などは特にその傾向にあるものです。
「以前からそうしているから、上からこう教えてもらったから」となりがちなのです。
しかし、いつかどこかで「今の仕事のやり方が正しいかどうか」という疑問を持ち検証しなければ、時代や周囲を取り巻く環境に合わない間違った教えが脈々と社内に語り継がれていく可能性があります。
専門技術のOJTにおいて、危険をはらんでいるのは、検証をせず、社内の誰に聞いても「以前からそうしているから、上からこう教えてもらったから」という明確な理由が分からない行動を、スタッフが仕事でおこない続けることです。
これは、『採用の教科書1』でご説明した「不教の連鎖」の一つです。
こうした不教の連鎖を改善する方法としては、今のやり方が最善であるかどうかを常に考え、PDCAサイクルを回すようにすることが大事です。無意識に「今のやり方が正しい」と思い込むことが、スタッフの成長を阻害します。
クライアント先に行った時など、外部の私が客観的に見たほうが問題点や改善点に気づくことも多いのです。
スタッフは在籍期間が長くなるほど、本人の意志にかかわらず、これまでの仕事のやり方を正しいと思ってしまいます。中途入社の方は、他社の仕事のやり方を知っています。
場合によってはそこから学ぶことがあるのですが、コミュニケーション力が高い人ほど謙虚ですし立場上、入社してすぐに「その仕事のやり方はおかしい」とは言いません。
しかし、在籍期間が長くなれば、疑問をもたなくなります。
せっかくの業務改善のチャンスですから、中途入社の方からは改善案をどんどんもらいましょう。
教育の際に、中途入社の方に対して「このやり方でお願い」と教えるのと、「このやり方が必ずしも最善かどうかは分からないけど、こういう理由から、現状はこの仕事のスタイルでやっている。
改善点や気づいたことがあればどんどん言ってほしい」と言うのとは、どちらがよいでしょうか?結果として、過去のやり方を否定されるかもしれませんが、その視点は既存スタッフだけでは気づかなかった箇所かもしれません。
教育へのPDCAサイクルをぜひ導入してください。
この項で書いていることは、現在、勉強されているこの「採用」に置き換えて考えてみると分かりやすいでしょう。
例えば、あなたはこれまでの採用のやり方に疑問を感じ、改善をしたいと思ったから、この本をここまで読まれていると思います。大事なことは改善という意識と行動です。
そして、会社が発展し続けるためにも、会社としてもそのような改善案を喜んで受け入れる風土を作るべきではないでしょうか。
【■POINT■プロ意識とは、現状を未完成だと思い改善を続けること。】
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