人材採用においての人材像の設定は、仕事経験や知識などの「専門スキル」と、コミュニケーション力や雰囲気、心などの「人間力」の二つの面に分かれます。
中途採用における即戦力採用は、この専門スキルに目を向けた採用手法ですが、これがよいかといえば、決してそうとはいえないと、本書を通じて何度も注意を促してきました。
経験は、年月を重ねることで、ある程度誰でも手に入れることができます。
例えば、パートやアルバイトでも五年も働いていれば、正社員より仕事ができるということはよくあります。
このように後から手に入れることができるスキルを、採用時から求めるというのは、「成長するまでの時間を買いたい」という気持ちがあるからですが、逆にいえば、他社の仕事のやり方に慣れているということは、同業同職種から採用した場合、それだけ自社の仕事のやり方を素直に吸収できない可能性があるのです。
あるクライアントでは、仕事を覚えるのに十年はかかる職種で中途採用をおこないました。その際に、経営者がある印象深い一言を言いました。
「同業種や同職種の経験はないほうがいい。変なクセがついているとかえって邪魔になる。一から育てるから経験は関係ない。ただ、人としてどうかという点は重視する」と。
世の中には一人前になるのに十年かかる仕事でも、このような考えを持つ経営者もいれば、半年や一年程度で仕事を覚えられるのに、即戦力にこだわりすぎて採用で失敗する経営者もいることが残念でなりません。
今在籍している職場のスタッフに、求める人材像や求めない人材像をヒアリングしてみましょう。
必ず、後から学ぶことができる技術よりも、コミュニケーション力や仕事への姿勢など人間力に関しての項目ばかりをあげるはずです。
専門的な技術が入社時に必要ないとは言いませんが、人間力とどちらを重視しなければいけないかといえば、間違いなく、人間力です。
後から学べるものだけに目を向けていると、他社と同じように中途採用で失敗します。
本書の読者には他社のような失敗をしてほしくないのです。
【■POINT■将来上に立つ人を採用するなら、人間力重視で採らなければいけない。】
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