求める人材像の設定や採用選考の際に、守らなければならない法則があります。私が「人材採用におけるピラミッドの法則」と名付けた考えをご説明しておきましょう。
先ほど、選考フローを変えて、ハロー効果を防ぐ方法をお話しましたが、実は、この方法は、ピラミッドの法則とも深く関係してきます。
まずは、三角形のピラミッドをイメージしてください。
ピラミッドは下のほうが大きく、土台となっています。この土台と呼ばれる基礎部分が大事です。これは人材採用だけではなく、ビジネスにおいて、あらゆることに言えます。
「採用担当者としての土台」「経営者としての土台」「営業としての土台」「課長としての土台」「部長としての土台」「会社としての土台」などなど。
では、「優秀な人材の土台」とは何でしょうか?考えてみましょう。
それは専門スキルではありません。
これは本書で何度もお話をしましたが、答えは、「人間力」です。人間力を分かりやすく言い換えると、「性格」です。
その性格をさらに細分化し、優秀な人材の最も大事な土台となるのは何かと言えば、男女を問わず「お客さんやスタッフが、いい人と思うかどうか」ということです。
いい人にもいろいろあります。
「他人の気持ちを考えられるか」「空気を読めないKYタイプじゃないか」「同性や異性に嫌われるタイプじゃないか」「他人に好かれる人間か」「明るい人か」「前向きな人か」「素直か」などさまざまです。
はっきり言いましょう、人に好かれる「いい人」の多い会社は、強いのです。
「定着率が高くなる」「社内が明るくなる」「上司が人間的に嫌われない」「同僚の仲がよくなる」「お客さんに対する好感度がアップする」など、人が辞める三条件でご説明した「人間関係」をクリアしやすくなります。
結果として、いい人の多い会社は、社内に蓄積されるストレスが少なくなりますし、採用費や教育費の無駄も減り、売り上げも利益も上がります。
結果、会社が成長しやすいのです。
あなたはどう思いますか?「いい人というだけでは、ビジネスの世界で通用しない」と反論する人もいるでしょうが、「だけ」では確かにそうでしょうし、それだけでよいとは私も思っていません。
しかしそういう方は、逆にこう考えてみると理解しやすいと思います。「性格の悪い人ばかりいる会社は、経営的に強い会社でしょうか?」先に言ってしまいますが、答えはノーです。
「社内の人間関係が悪い」「同僚は嫌な人ばかり」「上司も嫌な人ばかり」「パワハラやイジメが日常茶飯事」「精神的疾患を患うスタッフも多い」「愚痴や不満が多く、ネガティブな話ばかり」「お客さんからも好かれない」このような状況は社内に蓄積されているストレスが多いので、人間関係の問題からも離職率が高く、常に欠員補充採用をしているでしょう。
勤続年数が長い人の割合も少ないため、人に帰属する技術も残りづらく残念ながら、その会社に未来があるとは言えません。
そもそも、嫌な人ばかりの職場で働きたい人などどこにいるでしょうか?嫌な人「ばかり」でなくても、重要なポジション(役職、立場)にいる人の人間性に問題があり、新人がどんどん辞めていく職場は日本のいたるところにあります。
これは例えば、お局様をイメージしていただくと分かりやすいでしょう。そうならないためにも、社内に「いい人」を増やすことです。
いい人とは人に好かれる人。つまり、プライベートでも友人が多そうな人を増やすことです。
しかし、先ほども言いましたが、どれだけいい人でも、仕事ができるか、成長できるかということとは別です。いい人だけでは充分ではありません。
ビジネスにおける優秀な人材として、いい人かどうかの次は、「行動力(向上心)」があるかを確認しましょう。
事例や実績を質問し、判断をするのです。
応募者の言っていることが本当かどうかを確認していくのです。
例えば、理念や価値観に共感をしたと言われても、それだけで信じてはいけません。
「その価値観に沿った行動ができる」という証拠や事例を確認することが大事です。これらの土台をクリアした後に、初めて専門スキルを確認しましょう。
人材採用においてのピラミッドの土台を意識し、選考を通じて見る順番を間違わなければ、採用で失敗する確率を大きく減らせます。
視覚的に説明すると、次ページのような図になります。
この順番を間違えて、先に専門スキルに目を向けてしまうと、意識する・しないにかかわらず、前述したハロー効果が起こりやすくなり、結果として面接などで人物を見誤るのです。
何度も言いますが、「嫌な人が多い職場や会社で誰も働きたくありません」。あなたが経営者なら同じく、嫌な人が多い会社を作りたいわけではないと思います。
「この人と一緒に働きたい」同僚がそう思えるようなスタッフを今後も採用しましょう。
お客さんからも、「おたくの会社は皆さんいい人ばかりですね」と言われるような会社になるためには、採用段階からスタッフの質や人間力を意識して、選考していく必要があります。
三年、五年先を見るのが採用活動です。
同僚が「一緒に働きたい」と思うかどうかを調べるために、面接官には、管理職だけではなく、現場のスタッフが参加してもよいのです。
面接では男女それぞれの目で見る必要がありますし、常に採用した人と一緒に働くのは現場のスタッフです。人を見ることが得意な人は管理職のほかにもいるかもしれません。
ただし、面接官をしてもらう前に、面接官の心得や聞いてはいけない質問、見るべき点、質問技法などの教育は必要です。
【■POINT■中途採用は特にピラミッドの法則の図を意識して選考するとよい。】
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